今年の初め、不思議なことが起こりました。その週はクライアントとの面談が3件入っていました。そして、そのすべての面談でクライアントと車談義に花を咲かせることになったのです。それは決して珍しいことではないと思われる方もいるかもしれませんが、その3名のクライアントはこぞって最近購入されたテスラ車を褒めちぎっていたのです。そのテスラは、0-60m/h加速で市販車最速の2.5秒を記録しています(訳注:60マイルは約100キロ)。最初のクライアントには「ぜひ試乗するべきです」と勧められ、次のクライアントには「とにかく試乗したまえ」と命じられ、その次のクライアントには「頼むから試乗してください」と懇願されました(笑)。そんな訳で、私はとうとう試乗しに行きました。すると、試乗車の助手席にセールスマンを乗せてショールームから勢いよく出発した私の耳に、あの3人のクライアントの言葉が響きました。
「もちろん、あなたも試乗したら絶対に欲しくなりますよ」
その後、私はどうしたと思いますか。3人の言う通りでした。私は試乗してからわずか40分後に、美しい真っ赤なテスラP110Dを購入していました。
私はあまり車に興味がありませんでしたので、これはとても珍しい出来事でした。実は、それまで道を走っているテスラを目にした記憶はありませんでした。
そんな訳で、その日、家帰る為に運転していると、自分は特別な車に乗っていることにすっかり嬉しくなりました。しかし、その瞬間すれ違った車は何だと思いますか。皆さんのご想像通り、光り輝く真っ白なテスラでした。
最初は、まだショールームの近くなので、たまたまだろうと思いました。しかし翌日、私が息子を乗せて両親の家へと高速をのんびり走っていると、まるで時速千マイル出ているかのような猛スピードで追い越していった車は何だったでしょうか。そうです、それもテスラでした。
自分が手に入れるまでその車種が目に入らなかった、というような経験が皆さんにもありませんか。
そうした現象には実は理由があります。それは脳の一部である網様体賦活系の働きによるものです。この網様体賦活系は、私達が意図的あるいは無意識に探しているものを見つけようとする役割を担っています。私が突然次から次へとテスラを見つけたのはそういう訳です。
アニュアル・ミーティングを始め、あらゆる集まりや大会に出席するときもこの脳の一部の働きを活用すれば、そのミーティングで手に入れられる成果を大幅に増やすことができます。ビジネスを向上させるために必要な何かを、自分の網様体賦活系に探させるよう仕組むだけです。では、どうすれば良いのでしょうか。
私が毎年アニュアル・ミーティングで自身の網様体賦活系を猛スピードでフルに働かせる方法を、皆さんに紹介します。
まず、大会に出席する目的を書き出します。私は必ず書くようにしています。思い浮かべるだけでは上手くいきません。
次に、この目的がなぜ重要なのかを文章にします。何ページも書く必要はありません。1~2段落程度で十分です。
続いて、その大会で得られる理想的な成果を書きます。書き出したものを「成功判断リスト」としてまとめます。「成功判断リスト」は大会に出席する目的を記載したリストで、アニュアル・ミーティングへの出席が成功だったかどうかをその目的の達成度で判断するためのものです。私の今年のリストを一部紹介します。
- 断りに対応する技を磨くためのアイディアをひとつ見つける。
- 一年後に最低でも2万ポンドの総売り上げを見込めるアイディアをひとつ見つける。
- 弊社の投資委員会にアメリカの経済データを提供してもらえるコネクションをひとつ見つける。
この「成功判断リスト」の項目はひとつのときもあれば、5~6個のときもあります。
このように目的、重要性、理想的な成果を明確にすれば、「成功診断リスト」の項目を達成するために必要なものを、網様体賦活系を活用して探すことができます。
確かにこれは非常に有効な戦略です。しかし、我々は大会でどんなに多くのアイディアを手に入れても、なかなか実行に移せないものです。そこで私はアイディアの整理に非常に役に立つ第二の戦略も用意しています。
まず大会用のノートに「今日」「明日」「いずれ」という三つの項目を作ります。私はひとつの項目に1ページ使います。講演の最中に大量のメモを取っているとビジネスに使えそうなアイディアが浮かぶので、そのアイディアを「今日」「明日」「いずれ」のどれかのページに書き留めます。「今日」のページにはミーティングが終わってから一週間以内に実行できるもの、「明日」には三ヵ月以内に実行できるもの、そして「いずれ」には時間的な余裕ができたら実行するものを記入します。この方法を使えば、すべてのアイディアを逃さずに記録できるだけではなく、実行の優先順位をつけるというさらに重要な作業も同時に行えます。実行の優先順位がわかれば、その中で何を委任すればよいかも明確になります。
さらに、お金にまつわる第三の戦略も立てています。私がアニュアル・ミーティングに参加し始めた当時は、出席のために時間とお金を使って遠方の開催地まで行くのは大きな負担でした。そんな訳で、大会に出席するからには見返りがあると、自分自身を(本音を言うと妻を(笑))納得させなければなりませんでした。そのため、私は出席した大会ごとに「今回の大会で手に入れたアイディアによって得られた収入、削減できた経費」を細かく記録しました。私が自身に課しているルールは、大会の出席費用は同じ年度の利益でカバーしなければならない、というものです。ちなみに、これまで出席した大会がいかに高価値だったかを具体的に示すと、過去の大会でMDRTからもらったアイディアが生み出した収益は総額733万6969ドルになります。
それはすべてMDRTと会員の皆さんのお陰です。感謝してもしきれないほどです。

David Batchelor, Dip PFS, CFP, は2回のCOTと18回のTOTを含め20年間会員。イギリスでPersonal Finance Societyを設立し、現在はThe Strategic Coachプログラムのコーチとしても活躍。これまでに100人以上の起業家を支援してきた。