
もし明日の朝目覚めることがなかったら、皆さんの人生はどのように評価されるでしょうか?運悪く木が倒れてきて明日まで生きられなかったとしたら、ニュースにはどんな記事が書かれるのか考えてみてください。数々の業績はすでに過去のことで、何かをする時間は少しも残っていません。人々が語る皆さんの人物像は?人はこの世に生を受け、自分で生き方を決めてきたはずですが、与えられた時間の中で何を成し遂げ、何をしなかったか、残された人たちは何を語るのでしょう。
このような問いかけをするのは、本日の講演で困難を打開し一人ひとりが理想とする成功を手に入れる方法を考えたいからです。これからさまざまなアプローチを紹介しますが、この質問を念頭に置いていただければご自身が本当は何を望んでいるのかが見えてくると思います。望むものは成功なのか、またその成功は何を意味するのかということです。
お話しすることはたくさんありますが、次の5点に特に注目していただきたいと思います。
- 自分にとっての成功を手に入れるには、自分は何者で、何をなぜ望むのかを明確に定義する必要があります。
- 成功の障壁となっているのは主に人の頭の中にあるものです。自分がコントロールできることに集中しそれ以外のことを手放すなら、障壁だったものが好機に変化します。
- 自分が世界をどう見るかは周りが自分をどう見るかに影響を及ぼします。類は友を呼びます。見方をコントロールすれば望むものが近づいてきます。
- 固定したマインドは人の潜在能力や成長を制限します。成長段階にあるマインドは成功のチャンスを大きく開きます。役に立たなくなった考えは捨ててください。
- 最終的に成功するかどうかを決めるのは自分の本質の中にある価値観であり、価値観は自分や成功を測るものさしです。人は一番重要だと感じ、またそのためならどんな犠牲を払ってでも戦いたいと思うもののために行動します。
障壁を取り払い成功の次の段階へと進む
このセッションのテーマは、皆さんが得ようとしているものとそれを妨げているものが何であるかを探ることです。その答えは人によって異なるでしょう。
コンフォート・ゾーン(安心領域)
多くの人はコンフォート・ゾーンの中にいます。そこにいればとても快適だからです。すでに知っていること、すでに持っているものに囲まれ、そこに留まるのに大した努力は要りません。しかし、固定したマインドでいるとコンフォート・ゾーンから出られなくなります。成長段階にあるマインドへとシフトするには、自分のコンフォート・ゾーンから一歩踏み出て「自分が本当に望むものを手に入れるにはどのように前進したらいいだろうか?」と自問する必要があります。
ここにいらっしゃる皆さんは自身の潜在能力を引き出すのに必要なものをすでに100%持っているはずです。しかし、人は準備するための準備に多くの時間を費やします。「あの場所にたどり着ければとても嬉しい」「あそこに到達できれば完璧なのに」と思ったことはありませんか。人はいつも地平線の彼方にある目標を追いかけます。「もう少し教育を受けたら」「オフィスが新しくなれば」「あの資格が取れたら」はっきり申し上げますが、そうした状況を待ってはいけません。今必要なものはすでにあるからです。やらなければならないのは自分の内部にあるブロックや壁を突き破ることです。私はその手助けをしたいのです。
また私は自己認識を高めることで成功と幸福感は増大すると考えます。これこそ誰もが求めているものです。三者三様の成功を手に入れ、ただ幸せになることを望んでいます。しかしこのゴールを満喫している人はあまりいないようです。
自己認識の話に戻りましょう。皆さんはこの業界で活躍していますので自己啓発に対する意識はとても高いと思います。自己啓発に関する数々の素晴らしい本を読みます。欲しいものを手に入れる方法を教えてくれる有名な講師の話にわくわくするでしょう。そういった事柄には興味津々ですが、学んだことを日常の生活や仕事にあてはめ有益な結果を得るのは簡単なことではありません。
この業界のトップにいる人たちは自己認識がとても高いことは確かです。自分のことをよく知っています。自分の強み、弱みを知っています。自分の欠点や何らかの障害のために物事がうまくいかないことがあっても、何とか切り抜けて対処する方法を習得してきました。そこで障壁にはどのようなものがありどのように見分けることができるのか、自己認識を高めることによりどのように効果的に対処することができるのかについてお話しします。これをマスターすれば、皆さんはもっと有能な人になりクライアントとの関係も飛躍的に改善して売り上げを伸ばすことができるでしょう。
これから次の5つの項目についてお話しします。
- 自分にとっての成功とは?
- 自分をどう見るか?
- 世界をどう見るか?
- マインドを変える。
- 変化を起こす:どのように?
自分にとっての成功とは?
ところで成功するとはどういうことを指すのでしょうか?私は自分にとっての成功がはっきりと分かります。
私についてお話ししましょう。22年前、私は経営者のためのコーチング・プログラムに参加していました。5年間そのプログラムのメンバーでした。最初に行ったことのひとつは人生の目標を設定することでした。私は5つの大きな目標を掲げました。この話をする理由はいくつかあります。一つ目は皆さんが人生の目標を作るきっかけにするためです。二つ目は大きな目標とはどのようなものかイメージを持っていただくためです。
5つの目標の一つ目は生涯妻と仲良く暮らすことでした。この目標が一番簡単だったと言うつもりはありません。妻にとっても簡単ではなかったと思いますが、今年の9月で結婚40年になります。私の叔父は常々結婚は最初の50年が一番大変だと言っていたので、この調子で何とかやっていけそうです。でも結婚生活は本当に幸せで、3人の子どもと4人の可愛い孫に恵まれました。楽しいこともたくさん経験しました。
2つ目は高齢になっても健康を維持することでした。これは今頑張っている最中です。60歳代というのは体を鍛えて健康でいるのかそれとも鍛えないで不健康になるのかを決めるターニング・ポイントだと思うので、私は真剣に取り組んでいます。誰でも生きる理由が必要ですが、私たちには大きな目標があるので、なおさら自分のことをケアしながら進むべきです。人生には思いがけないことが起きます。だから私は「明日目覚めなかったらどうしますか?やっておけば良かったことは何ですか?」と聞きました。「大きな目標を作ったから毎朝起きるのが楽しい。行く先々にある障害物を取り払えば、欲しいものが何であっても追い求めることができるだろう」という気持ちを持っていただきたいのです。
3つ目の目標は子どもたちを大学まで行かせることでした。親戚の中には大学に行くことができなかった人もいたのでこれは重要でした。少なくとも学士課程は終えて欲しいと思っていましたが、全員無事終えました。
4つ目のゴールは58歳までに経済的に自由になって引退することでした。少し遅れて60歳でこの目標を達成しました。
5つ目の目標はこれまでの経験を生かせるセカンド・キャリアを持つことでした。当時はそれが何になるのかはっきりと分かりませんでした。私は写真が趣味です。音楽も好きです。しかし何より人間が大好きです。私は人が前進できるようにサポートすることに喜びを感じ、これこそがファイナンシャル事業やそこで築いた人間関係を支えていました。コーチングは私にぴったりの仕事で人が前進するのを助けることができるこの仕事に喜びを感じています。今日も私の話から良い刺激を受けてくださる方が少しでもいらっしゃれば幸いです。大きなものに向かって突き進むひらめきのようなものを皆さんに提供できれば、この講演は大成功です。
自分はどんな人か?
「成功」とは何なのか真剣に考えてみてください。成功したと感じるのはどんな時ですか。正しい答えを得るためにまず本当の自分について自問する必要があります。これには自身の価値観が関係しています。私たちは自分の役割だけを意識する傾向があります。例えばある人はファイナンシャル・アドバイザーであり、父親または母親です。しかし、皆さんの本質的な価値観は何なのか考えてください。何故なら価値観が目標と一致すると、多くの場合人生の決定を下すのはとても容易になるからです。やることやらないこと、受け入れること受け入れないこと、自分の境界線など自分を正確に理解すると一つのことに集中できます。するとどんなに多くの障害があっても歩み続けることができるのです。
ですから自分はどんな人かと自問してください。
繰り返しになりますが自身の役割についてはあまり考えないでください。自分の価値について考えてください。皆さんはクリエイティブでしょうか?気遣いのできる人でしょうか?野心的でしょうか?その価値の中で自分にとって重要なものは何か考えてください。他の人は皆さんについて何と語るでしょうか。私についてお話ししますと、私はクリエイティブです。ユーモアのセンスがあります。気遣いができます。直感で行動します。知り合いの中には考え深く理性的で分析力のある人もいますが、私は感情に動かされるタイプなのでその点は注意したいと思います。自分がどんな人間であるかを知り、どのように社会に貢献できるか知れば知るほどより本当の自分の姿をクライアントにもコミュニティにも家族にも見せることができます。そうすれば真の幸せと成功を手に入れる道筋が開かれたことになります。
欲しいものは?
自分についての理解が進んだら自分が本当に欲しいものは何なのかを考えてください。今日の話の目的は簡単に言えば皆さんが欲しいものをはっきりさせることです。先ほど私がかなえたいと思った5つの目標をご紹介しました。私はこれを高次元のゴールと呼んでいます。しかしもっと短期の目標でもかまいません。コート・オブ・ザ・テーブル資格を獲得したいならそれを目標にしてください。トップ・オブ・ザ・テーブルも素晴らしいです。5kg減量するでもいいでしょう。どんな目標でもいいので明確にしてください。皆さんが欲しいものは何でしょうか?
人生で重要だと思われる事柄を短期、中期、長期の目標としていくつか書き出してみてください。
なぜ欲しいのか?
次に、なぜその目標を達成したいのかを知る必要があります。何かを手に入れたいとき、その理由を理解することはとても重要です。お金のため、経済的安定を確保するためか。自己満足や達成感を得るため、それともステータスのためか。その答えを探して書いてください。
自身を深く理解できるようになると人は自信が持てるようになります。自分が何者で何をしたくてなぜしたいのかがはっきりと分かります。あらゆることが明白になり整合性が取れます。自分がどんな人間であるかを知ることはその人の基盤になります。何が欲しいのかが分かるとそれはその人の使命になります。そして「なぜ」の答えを知ることはその人の燃料、情熱の源になります。情熱はそこから生まれます。自分の目標とその理由が明確になると人はそれを囲むように自らのシステムを構築します。そのやり方に基づいて判断を下すようになり、それに反する事柄が自分の思考に入ってきたとしてもそれは邪魔なものにすぎません。なぜならそれは自分自身、自分の世界、自分の価値観にそぐわないからであり、また「なぜ」の答えにもマッチしないからです。その結果もっと容易に物事を決められるようになります。とくに忙しすぎてへとへとになってしまったときに有効です。
私たちはしょっちゅう「本当に忙しい」と言います。何故そんなに忙しいのでしょうか?何かにこだわっているのか、あるいは何かを避けているのかもしれません。またはいろいろな方法で自分を試そうとしているかもしれません。しかし自分が何者で、何を欲していて、なぜ欲しているのかがクリアになると大切な事柄に集中し目標に向かって歩み出す基盤ができて真の成長を遂げることができます。
何が邪魔をしているのか?
いろいろなことがクリアになっても、立ち向かわなければならない障害がまだ3つあります。
第一に自分のことをどのように見るかということです。いくつかの取り組みについて語ってきましたが、これから真に内面的な障害について探っていきます。自分をどのように見てどのように考えるかが障害物になることがあります。
二つ目は周りの世界をどのように見るかです。これは興味深い問題です。私もコーチングのトレーニングを受けるまで見えていませんでしたが、これは世界に対する見方と特にストレスにさらされているときにどのように反応するかに関する興味深いコンセプトです。ストレスや自分のエネルギーのレベルが上がったり下がったりするのに対処しながらどのように生きていくかは、私たちの生産性に大きな影響を及ぼします。エネルギーが何であるかは誰でも知っています。誰かが部屋へ入ってきて電気をつけたらすぐに気がつくでしょう。人が入ってきたことが分かってまた来たなと心の中でつぶやくでしょう。エネルギーとその影響力については何かしらの知識があります。良いエネルギーと悪いエネルギーがあることも、引きつける力と遠ざける力があることも知っています。
最後にどのように考え方を調整するかです。今までずっと真実だと思っていた事柄を捨て去る気持ちはありますか?皆さんがすでに持っているものはそうした事柄のおかげかもしれませんが、それだけでは欲しいものは得られないかもしれません。今自分が置かれている状態は良くも悪くも特定の考え方に縛られた結果です。私たちは多くのことを学んできました。簡単なことではありませんが、今からでも多くのことを学び新しい習慣ややり方を試してみることができます。
「自分を知ることは、すべての知恵の始まりである」―アリストテレス
自分はどのような人か?
エネルギーを遮るもの
自分をどのように見るかを考えるとき、2つの主要な事柄についてお話ししたいと思います。一つ目はエネルギーをブロックするものです。それは人のエネルギーを吸い取り、チャンスから遠ざけます。エネルギーを遮るものは4つあります。
コーチングでは4つのエネルギー・ブロックを「GAILs」と呼びます。一つ目のGAILはgremlin(いたずら好きの子鬼)です。グレムリンという可愛らしい響きの名前を聞いて多くの人は心の中の辛辣な言葉をつぶやくご意見番を連想します。自分には何かが不足している。可愛げがない。準備ができていない。教育が足りない。成功する器ではない。このような批判が思い浮かぶのは大抵チャンスが訪れてそのことにわくわくし、快適領域から飛び出して成長するマインドに切り替わろうとしているときです。すると突然グレムリンが現れて言います。「そうはいかない。契約はうまく行かないだろう。自分はだめな人間だからチャンスはつかめないだろう。誰もできると言ってないだろう?」これは心の中の独り言です。誰もが経験します。これは自然なことで私だけではないはずです。このような考えにとらわれたときは、それはただの考え方に過ぎないと認識することが重要です。真実でも本当でもありません。そこから踏み出して「グレムリン、あなたの言うことは聞こえているけれど、気にしません。あなたが言おうとしていることは支持できません。私はここから先に行きます」と言わなければなりません。グレムリンが出てくるのが何か大きなことをしようとしているときやコンフォート・ゾーンから出ていこうとしているときなら、それはゴーサインです。逆説的に聞こえるかもしれませんが心の中でやってはいけないというネガティブなメッセージを受け取ったなら、それはやって良い、そうすれば100%成長できると言われているようなものです。皆さんの内面の批評家はなんと言っていますか?聞こえたなら書きとめてください。
先ほど「成功」の定義を言ってくれる人は手を挙げてくださいと言いましたが、どなたも挙げてくださいませんでした。きっと皆さんのグレムリンが「変なことを言ってしまいそう」「皆に笑われそう」「絶対にくだらないと思われる」と言っているのでしょう。グレムリンがどのように人を引き留めるかお分かりになったと思います。もし10人の方が手を挙げて自分にとっての「成功」とは何かを話してくれたらどうでしょうか。この方たちが発するエネルギーのおかげで皆の士気があがり、皆が心を開いて話しやすくなったと思います。手を挙げなかったことを責めているわけではありません。ただグレムリンが表面化する典型的な例を取り上げました。こんな言葉をかけられていませんか?「私は取るに足らない」「これをする能がない」「成功に値しない」
2つ目のGAILsは思い込み(assumptions)です。これは過去に起きたことは未来にも起きるだろうと信じることです。何かをしようとして失敗し、その後またチャンスが巡ってきても「やってみたことがある。何とかやろうとした。でも失敗することが分かっているからもうやらない」と考えます。失敗や失敗を避ける方法については後ほどお話しします。しかし今お話ししているのはもっと小さな失敗です。それを心の中で前にやったことがある。その時うまく行かなかったのだから、どうせやっても同じだと諦めているだけです。そのように自分を縛ってしまうと、自ら目の前に障害物を置くことになり前に進むことも本当に欲しいものを手に入れることができません。例え小さな目標であったとしても思い込みは大きな負の影響になり得ます。
私がコーチングしているお客様は何とかしてオフィスから抜け出したいと思っていました。その方は外に出てもっと多くの人と接するべきだと本能的に感じていました。成約数も売り上げも素晴らしく誰が見ても成功者でしたが、オフィスにいなければならないことがとてもストレスになっていました。毎日必ず行かなければならず、行かないと罪悪感を持ちました。それが仕事というものだと自分に言い聞かせていたのです(固定概念)。オフィスに来ないなら仕事をしていないも同然だと言われたことがあるそうです。さらにこの問題についていろいろと話し合った結果、彼が最も気にしていたのはオフィスにいなかったら従業員は何と言うだろうということでした。彼は憶測を立てていました。従業員は私が働いていないと思うだろう。病気か何か問題があると言うだろう。そこで私は彼らが逆のことを考えていたら?もしかしたら「うちのボスは本当にすごい。オフィスにいつもいる必要がない。このような人のために働けて嬉しい」と思っているかもしれません。または「もう少し外にいてくれたら仕事もはかどるのに」と思われているかもしれまないと指摘しました。よくあることです。私は考え方を変えるよう働きかけると、その方はもっと外に出なければならないことに気付きました。外に出てより多くの人に会うと何が起きたと思いますか。その方は魅力的で人を引きつける何かがあるのでビジネスはますます繁盛しました。つまり彼の本能が正しかったわけですが自分の思い込みに縛られていました。思い込みは人と人との関係にも日々の業務にも影響します。仕事とプライベートも同様で、私にとってはどれも同じです。自分が何者であるかを知り本物であることを示すなら、ファイナンシャル・アドバイザーであることは役割ではなくその人自身になります。
他にどのような思い込みがありますか?
例えば「なかなかいい人が見つからない」「最近の若い人は何を考えているのか分からない」と思うことがあります。人は憶測するものです。しかしいい人が見つからないと決まったわけではありません。価値観の合う人を採用して訓練し、時間をかけて仕事を教えてください。「私が本当に成功することは決してない」と思い込んでしまうこともあります。そのようなときは自分にとっての成功が何であるかはっきりさせる必要があるのかもしれません。あるいは成功するためにコンフォート・ゾーンから出る必要があるのかもしれません。
GAILの3つ目は解釈(interpretations)です。解釈するということは個人的な意見が生まれることです。するとさまざまな意見を聞かないので、自動的にその他の選択肢は除外されます。思い込みとは少し違い、何かを見たり読んだりしたときに完全に誤った解釈をしてしまうことです。それはその人にとっての真実、その人の見方ですが実際に起きていることではないかもしれません。事実とは異なる解釈をしてしまう状況はいろいろあります。それは世界と自分自身に対する見方に影響を及ぼします。True(本当)とtruth(真実)という言葉があります。ある人にとって本当だと思われることが必ずしも真実とは限りません。ですから私たちは物事の真実を見極めて前進するよう努めなければなりません。解釈の誤りが問題を引き起こすことがあるからです。
私はあるアドバイザーに同行してクライアントを訪問したことがあります。クライアントは最初に「私が支払うフィーに対してどんな見返りがありますか?」と尋ねました。私は心の中で幸先が良いぞと思いました。この方は400万ドルの口座を持っているのできっと多額のフィーを払ってくださるだろう。同行したアドバイザーはすぐに「ではフィーの額を下げましょう」と答えました。彼がこのように反応したのは、このクライアントはフィーが高すぎると主張していると解釈したからです。アドバイザーは「本当」にそうだと思っていましたが、実はクライアントはフィーの額のことを言いたかったのではありません。サービスの価値が充分に説明されていないと言いたかったのです。それはサービスの価値の問題でフィーの額の問題ではありませんでした。クライアントはただ支払ったお金に対してどんなサービスを受けられるのかを知りたいと思っていました。もっとシンプルなことでした。しかしアドバイザーの誤解により話が全く違う方向に流れ、どのようにフィーを下げコストを抑えることができるのかという論点がずれた話し合いになってしまいました。結論から言いますとこのクライアントは成約に至りませんでした。フィーに見合った価値の説明が不充分でした。アドバイザーは最初の「出費に対してどんな見返りがありますか?」という質問にこだわってしまいました。クライアントが「私は一体何をしてもらえるのか?」と訴えていたのに。従ってどんなにフィーを下げても提供する価値に話が及びませんでした。アドバイザーの間違った解釈が悪い結果をもたらした例です。
4つ目の障害は固定概念です。何かを真実だと信じ込むか、またはある考えをそういうものだと独り合点することです。「世の中そういうもの」という考えが自分にあることを自覚し、それが欲しいものから自分を遠ざける可能性があることを理解するべきです。簡単な例を挙げると「成功している人はついている」「自分は頑張って働いているが、彼らは何て運が良いのだ。私ほど働いていないのに」「リーダーは人に指示することしかしない」皆さんには固定概念がありますか?
お話ししてきた4つの内面的な障害物を書き出し自分に当てはまるところがないか、該当するならそれを見直すことでどのようなメリットがあるのか考えてみてください。こうした事柄に影響されていないか真剣に吟味することをお勧めしたいと思います。
インポスター・シンドローム(詐欺師症候群)
さて主要な内面的ブロックの第二弾はインポスター・シンドローム(詐欺師症候群ー達成した成功が自分の実力によるものではないと考えること)です。この症状群はこの業界のトップ・プロデューサーもかかっています。程度の差こそあれおそらく誰にも経験があります。
兆候の一つは後回しにすることです。皆さんは何かを後回しにすることはありますか?何故そうするのか不思議に思ったことはありませんか?私たちは金融のプロです。それなりの専門教育を受けています。このビジネスで経験があります。しかし好機に恵まれてもなかなか動かないのです。私の場合、チャンスが大きければ大きいほどなかなか行動に移せません。私は常になぜだろう?なぜ自分はこのように反応するのだろう?なぜすぐにチャンスをつかんで結果を出さないのだろう?と悩んでいました。すぐに動ける人もいます。後回しにしません。私の後回しのせいでビジネスに支障が生じていることが分かったので、私は仕事の多くを人に任せることにしました。後回しにするのは私がインポスター・シンドロームにかかっていたからです。
インポスター・シンドロームの別の兆候は、後になってくよくよと思い悩むことです。ああしなければ良かった。なぜあのようなことをしたのだろう?このようにすれば良かった。いやこういう方法もある。考えがまとまるまでもう少し先延ばしにしよう。このように悩み続けるのは大きな問題です。何も起きないからです。そのような自分に合わせて知らず知らずのうちに低い目標を設定し、固定したマインドのままで快適領域に留まります。次に後回しにしたいことがあれば「なぜ先延ばしにするのだろう?何を失うだろう?」と自問してください。
別の症状は罪悪感です。おなじみの言葉です。身に覚えのある方がきっといらっしゃるでしょう。それはどこから来てなぜ感じるのか、何に対して罪の意識があるのか考えてみてください。言ったことが正確ではなかったのかもしれません。倫理に反すると誰かを非難するつもりはありませんが、もう少し情報開示ができる状況だったのかもしれません。成功していることに罪悪感がある場合もあります。こんなに稼いでもいいのだろうかと思っていませんか?
成功ゆえに罪悪感を持ち、自分にはその価値があるのだろうか?この契約をお預かりして$25,000の手数料を頂いてもいいのだろうか?と考えます。そして自分の成功を打ち消そうとし、罪の意識から逃れるため挑戦を諦めてしまいます。
インポスター・シンドロームの別の兆候は人に好かれようとすることです。これはセールス・ビジネスをしている人にとって重要なことです。人に好かれようとするのはインポスター・シンドロームのせいで自分に自信がないことが関係しています。とにかく人に認められ好意を持たれるために一生懸命働きます。このビジネスでは当たり前のことです。私たちはお客様を愛していてお客様にも愛され必要とされたいと願っています。そうすると仕事に満足感が得られます。多くのアドバイザーにとってこれこそが仕事の醍醐味です。クライアントに愛されることにいつも充実感を感じているのでこのビジネスから決して離れません。しかし、キャパ以上のクライアントを持ちほとんど利益が出ないクライアントにも好かれようとすると仕事が回らなくなります。
インポスター・シンドロームには不安という兆候もあります。不安は私たちの歩みを止めてしまいます。「このチャンスをつかめば大きなことができるかもしれないのに、怖くてできそうにない。絶対にできない。きっと失敗する」逆に成功するかもしれません!誰にも不安はあります。いつまでも怖がっている必要はありません。
皆さんにこうした気持ちや問題の経験があるなら、それはインポスター・シンドロームかもしれません。それは膨大な量のエネルギーを奪います。お客様への連絡を先延ばしにすると罪悪感を持ちます。連絡を怠るのはご契約いただけなくなるのが怖いからです。承認していただけるか分かりません。あるいはクライアントを満足させるため修正を加えなければならないと感じています。これは悪循環です。お客様に自分の本当の姿が分かり、期待していたほど良くなかったと思われてしまうのではないか。
とても恐ろしい状況です!
そこでインポスター・シンドロームにかかるとどんな偽りの言葉を自分に投げかけるのかを考察します。例えば:
- 「自信喪失になるのは自分が不適格だからだ」それは不適格だからでなく人間らしさの証拠にすぎません。自分さえ疑ってしまうのは人間だからです。自信が持てなくなるのはよくあることです。
- 「成功者はこのような経験をしない」それは違います。何故なら女優のティナ・フェイは経験しています。詩人・歌手のマヤ・アンジェロウも経験しました。ホラー作家のスティーブン・キングもそうです。この症候群を持つ成功した有名人のリストは延々と続きます。成功者である彼らはこの気持ちに折り合いをつける方法を学んできました。その兆候に気付き自分の内面に向かって「どうしてこのように感じるのだろう?背後に何があるのだろう?」と問いかけました。そして前進するのです。
- 「準備ができていない。やりたい気持ちはあるけれど、もっと時間が必要だ」私はとにかくやってみてくださいと助言します。準備ができていなくても。何故なら準備はできているからです。ほとんどの人は準備ができています。もちろんトレーニングは必要です。教育も必要です。皆さんは新しいことをたくさん学んで自分を伸ばしたいのです。今のままで充分準備ができています。
- 「二度目はうまくいかないだろう」あれは一度きりの快挙でした。つまり自分のことを一発屋だと考えています。この前はうまくできて本当に良かったけど同じことは二度とできないだろう、と感じる人はインポスター・シンドロームにかかっているのかもしれません。しかし、一度は成功したのですからまた成功できます。
- 「努力して手に入れた成功が、ガラガラと音を立てて崩れていくのも時間の問題だ」それは事実とかけ離れているかもしれません。どんなに不安な気持ちで待っていても何も起きないかもしれません。
- 「役に立ち独創的で重要な話など何もない」その気持ちは分かります。このプレゼンテーションの準備をしているとき私の頭にも何度かその考えがよぎりました。しかし話したいことは誰にでもあります。どのようなやり方をとるにしても、そのやり方は間違っていません。お客様の利益のために真摯な気持ちで自分を差し出すなら、それは正しいやり方です。また他にはない個性を打ち出すのは良いことです。この前ある人が「何かを改善するより個性を打ち出した方が良い」と言っていました。世界はコモディティ化(商品間の差がなくなる状態)が進んでいます。私たちファイナンシャル・アドバイザーも消費者からすると同じように見えるかもしれません。どのアドバイザーもお預かりした金額の1%をフィーとして請求し同じような生命保険と医療保険を販売するなど、あらゆることが同一化しています。差別化を図るために独自性を出し、そのことに自信を持ってください。
- 「褒め言葉が信じられない」これに関しては、誰かに素晴らしい人だと褒められたら無理をしてでも信じるのが得策です。人がそのように言うのは本当にそう思っているからです。素直に信じてください。
- 「助けてと言うのは負け犬だ」それは自分の弱さを認めることになります。私たちは助けを求めるのを躊躇し一人でもがき苦しみます。しかし親しい仲間は私たちの成功を本当に願っているので、甘えても良いのです。
世界をどう見るのか?
これから話すことは世の中に対する見方や心構えをレベル別に見ていくことです。これはiPECのBruce Schneiderが提唱したエネルギーの7つのレベルをアレンジしました。人は視点というレンズを通して世界を見ています。それはフィルターのような働きをします。ある状況にどう対処するのかを決めます。ストレスやストレスのかかる状況でどのように反応するのかを決めます。そして人のエネルギーのレベルはここから生じます。他の人はそれに引き寄せられるか離れていきます。人を引き寄せるものにも法則があるのです。
例えば、自分は犠牲者で自分に起きたすべてのことは誰かのせいだという見方はある種のエネルギーを失わせます。このような見方をする人はどこにでもいます。そして周囲にいる人たちを意気消沈させます。しかしまわりを元気にしてくれる人もいます。
これがその7つのレベルです。
レベル1は被害者意識です。自分は世の中で起きていることの犠牲者だという意識がいつも心の中を占めています。あらゆる不運が自分の身に振りかかっていると考えます。こうした人は無気力な態度を取り、物事に無関心です。彼らは自己嫌悪を持っていて自分を信じることができません。「それが何だ。自分にできることは何もない。興味がない」と言い、自分はどうせ失敗するのだからどうでも良いといつも思っています。レベル1の人が発するエネルギーはネガティブです。私たちはこれを異化作用(訳注;複雑な分子を単純な分子に分解する代謝プロセス)と呼びます。異化作用はネガティブなエネルギーです。それは周囲のエネルギーまで奪ってしまいます。被害者意識を止めないとこのような悪循環が生涯続くことになります。そのような人に近づきたいと思う人はいません。このような意識を持っている本人も自分のことが嫌で仕方がないと思います。
レベル2は争いもがいている状態です。人がレベル1の状態に陥って自分の身に起きていることを自分ではどうすることもできないと感じると、怒りが生じ、やり返そうとして戦いを挑みます。「もう我慢ならない。何か手を打たないと」そして怒りに身を任せ争いになります。けんか腰になり自分は勝って相手は負けるべきだという態度を取ります。よくあるのは車に乗っていてに割り込まれるときです。多くの人は「ああ、びっくりした。お先にどうぞ」とは考えません。むしろ「怒ったぞ。あの車が割って入ってきたのは許せないことだ。あの車の前に割り込むことにしよう」と考えます。ストレスがかかるとこのような反応を示すことはよくあります。
しかしレベルが高くなるにつれだんだんと反応と態度のキャッチボールができるようなエネルギー・レベルになります。
レベル3について考えます。私たちが同化作用(訳注;単純な分子から体に必要で複雑な分子を合成する代謝プロセス)と呼ぶポジティブなエネルギーの状態です。「起きたことの一部は自分にも責任があるようだ。自分の責任を受け入れ、自分のやり方を説明する義務がある。私は譲歩したいし協力もしたい」自分は勝つけれども相手にも勝ってほしいという思いが心の大部分を占めます。少なくとももう少しできることがあったはずだ。もっと違う考え方もあった。私たちで何とかしてみませんか。私は勝ちたいが、あなたにも勝ってほしい。と考えるようになります。
レベル4は他の人の役に立ちたいというサービス精神です。車の例えで言うと誰かに割り込まれたら最初は「信じられない、頭にきた」となりますがすぐに「きっとあの人は自分より急いでいるか、単に不愉快な人だ。いずれにしても先に行かせてあげよう。割り込みたいならいいですよ。保育園のお迎えに間に合わないのかもしれない。私が邪魔するわけにはいかない」
このように他の人に心を配り同情や感情移入を示し他の人に勝ってほしいと考えます。このビジネスでよく見られる精神態度です。私たちにはサービス精神があり他の人を助けたいと思っています。親なら自分より子どものことを第一に考えます。パートナーとの関係が良好ならまず相手の助けになりたいと思うでしょう。他の人が自分より有利になるようにし周囲の人が勝者になることだけを考えます。
念のために言いますが、これらエネルギー・レベルは一日を通して変動します。いつもリラックスしていて幸福そうな人はエネルギーや心構えのレベルが高いまま一日を過ごします。周囲に対して「何とかします。きっとうまく行くでしょう」「お先にどうぞ」「あなたのためにぜひやらせてください」と言います。しかしこのようにできない人もいます。一日の大半はポジティブな状態を保っていますが、例えば車に割り込まれるとすぐにレベル1や2へ落下してしまいます。ポイントはすぐに離れることです。レベル1や2に身を置いたまま被害者意識や怒りを感じて世の中を見るなら、自分自身を傷つけるだけでなく周囲の人も傷つけます。いるだけでまわりの人のエネルギーまで奪われてしまいます。
時には、特にストレスがかかる状況ではレベルが低くなってしまうこともありますが、重要なのはどのようにその状況を断ち切るかです。「ちょっと聞いてください。このような状況になってしまいましたが、あなたのために何とかがんばってみます」と言って気持ちを切り替えてください。
レベル5はさらに上級の和解の精神状態で、中立的な態度で自分の力で解決しようと努力します。このレベルにいる人はいつも幸福で心穏やかに過ごし、皆で勝たなければ意味がないと考えます。これは真のチームワークです。成果をあげている代理店にはこの精神があります。全従業員が同じ考えを持って働き、仕事が全従業員にとってプラスになり皆が勝たなければ意味がないと考えるのでお互いに助け合おうとします。
レベル6ではさまざまなスタイルが統合し直感による洞察力が磨かれます。そこには喜びがあり、自分でいることや自分の仕事が本当に素晴らしいと感謝します。それは知恵を意味します。「皆でずっと勝つ」を合い言葉に、人が前進するのを助けることができれば必ず皆が勝者になると考えます。
最後の最強レベルの心構えはレベル7です。中立的な視点、圧倒的な情熱と天才的思考を持ち合わせます。皆さんは、素晴らしい考えがひらめいたりクライアントとの面談でまさに必要とされているアドバイスが出てきたりすることはありますか。人と話しているときに自然と良い流れになって最高の人間関係を築いた経験はありますか。もしあるなら、それはその方の心構えのレベルが変化したからでしょう。こうしたレベルがあることを知った後は、自分を絶えず向上させようと尽力することができます。良い態度を示すだけでなく自分の反応をコントロールする術を学ぶのです。
一つ経験談をお話しします。私と妻は素敵なリゾートのゴルフ・コースでプレイしていました。気持ちの良い秋空が広がる金曜の午後でした。私たちはそのコースを独り占めしていました。素晴らしい環境で前にも後ろにも誰もいませんでした。早いペースでプレイし、スコアも上々でした。屋外で一緒に過ごせて最高でした。ところがカートに乗って次のティーに行くために角を曲がると、そこに6台から8台のカートが停まっていて若者の集団がビールを飲んだりたばこを吸ったりしていました。私はどのレベルに変化したでしょうか?私は一気にレベル1まで下がりました。「あまりにひどい。せっかくのゴルフが台無しだ。この人たちのせいで最高のラウンドが最低のラウンドになってしまった」次に怒りが沸々と湧いてきました。私は考えました。非常識な人たちだ!もう我慢できない。そのときの私はレベル2です。何とかけりをつけるつもりです。クラブハウスに電話をしてクレームをつけよう。せっかく楽しんでいたのに。カートをあのように停めてはいけないはずだ。
しかし、私はトレーニングを受けたコーチングの講師であることを思い出しました。自分がレベル2にいることが分かりました。一つ上のレベルは3です。レベル3は妥協です。今起きていることに別の解釈をつけることはできるでしょうか。例えば「今日は金曜の午後で、このリゾート・コースは結婚式場としても有名だ。あの青年たちは式に呼ばれた独身貴族で少し息抜きをしているのだろう。同伴の女性たちはきっと披露宴のためにホテルでおめかしをしているのかもしれない。残された男性陣はここで楽しそうにしている。彼らは若いから楽しくて仕方がないのだろう」ホールアウトまであと4ホールだけです。私は自問しました。自分はどのような人間なのか。気難しい老人か。クラブハウスに電話をして愉快な集いを台無しにしていいのか。それが正しいやり方とは思えませんでした。そこで私はレベル4へ移動し彼らのペースに合わせようと考えました。私は妻に言いました。「クーラーボックスにビールがあったね。我々も少し休憩しよう」私たちは缶を開けそばに座りました。10分くらい待つと若者たちは先へ進みました。すべてがうまく行きました。私は自分が幸せでいられるレベルへとエネルギーをシフトしました。若者たちを満足させることができました。青年たちにとっては週末の大きなイベントで彼らは純粋に楽しんでいるだけだということに気付きました。私も若い独身時代には同じようなことをたくさんしてきたことを思い出しました。
この例からもどのようにエネルギーをシフトさせどのように見方を変え、考え直し、どのように思い込みを捨てて良い方向に向かうことができるのかが分かると思います。
今までは生活の中で起きる事柄をメインに話してきましたが、これからはどうビジネスに当てはめられるのかを考えてみたいと思います。生活とビジネスに大きな違いはありません。自分をさらけ出しありのままの自分を見せるなら、お客様はその人のそばにいることを心地よく感じ多くの人が集まってくるでしょう。多くの人を引きつけることができます。レベル7のまま生きるのはダライ・ラマのような人で、誰もができるわけではありません。長いローブを身にまとい裸足で歩き回らないといけなくなります。私たちはそこまで無私にはなれません。しかし時々ではありますが普通の人でもレベル7を経験することがあり、それを自覚することができます。グループでいるとき、クリエイティブなことをしているときなどいろいろな状況がありますが、あらゆることがこの上なくうまく行くことがあります。このアニュアル・ミーティングはどうでしょうか。多くの会員が一堂に会して互いに優れた情報を交換するとき、まさに悟りを開いたといえるかもしれません。そこには勝者も敗者もありません。そこにあるのはレベル7の精神です。
物事が順調に運んでいるとき反対にストレスが生じているとき、自分はどのレベルにいるのか考えてみてください。
考え方を変える
「面白い逆説なのですが、私がありのままの自分を受け入れることができたとき、わたしは変わっていくのです」―カール・ロジャース
これから成功するための7つのマインドをシェアします。自分のマインドを変えることができれば、例えそれがほんの小さな変化であっても将来の道筋に大きなインパクトを与え成功を大きく左右する可能性があります。マインドは価値観に基づいた本当の自分から生じます。人はそれを受け入れ信じますが場合によっては自分を損なうこともあります。限られることもあります。マインドをコントロールすれば人生で望むものを手にすることができます。
これまで、どのように自分を見るかどのように世界を見るかについて話してきました。次に、人がどのように考え、その考え方がどのように自分を押さえつけているかもしれないかをお話します。
第一に他人を満足させようとしないことが重要です。これは社会全体の問題です。自分を満足させる風潮の方が強いと思うかもしれません。しかし人は争いを避けたり他の人から認めてもらったりするために行動することが多いのです。カスタマー・サービスのことを言っているのではありません。自分の価値観やニーズを捨て去り、何を受け入れ何を受け入れないかの境界線が犯されることについて話しています。これは特に見込客や顧客との接し方に表れます。皆さん仕事で夜の7時か8時あるいは週末に面談をしている人はどの位いますか。何故そのような約束をするのでしょうか。それはお客様に「弊社は9時から6時までです。6時のお約束で良いですか?」と言いたくないからです。顧客の不興を買うのが怖く、特に既存顧客には満足してほしいと思うからでしょう。
理由はいろいろあります。しかし問題点があります。見込客を探しているときに相手が喜んでくれるからと見込みのない大勢の人と話したり、優良でない顧客を維持しようとしたりすることです。そうすると余計な仕事に忙殺されてクタクタになるので、次なる手段として顧客をセグメントに区分しようとします。しかしこのような人にはすべてのクライアントが等しく重要なので顧客によってサービスの質を変えることができず、結局顧客をグループ分けすることができません。すべてのクライアントを同等に扱う方が簡単です。どのクライアントも不満を感じることがないよう差別をしません。つまりすべての顧客にニュースレターを送り、フィーを割引きします。全顧客と年4回または6回の面談を行い、気がつくと仕事に振り回されている自分がいます。また顧客を分類しないということは損をするということです。収益性が高くない顧客に対しても同じレベルのサービスを提供しているからです。儲かるお客様に対してはもっと質の良いサービスを提供することが重要で、多くの場合そうした差別化を期待して高いお金を払っています。しかし10年前に保険契約に加入してそのままの顧客に対しても同等のサービスを提供する必要はありません。八方美人型の考え方では仕事の効率が悪くなります。このような仕事の仕方ではプロセスを構築することが難しくなります。100人の一見さんに対して、喜んでもらえるようにサービスを少しずつ調整して提供するような羽目になるでしょう。「この客が好む集計表はこうで、あの客が好む集計表はこうだ。面談に関してはこの客は火曜の夜が良く、あの客は土曜の朝が良い」この人はあちこち駆け回ることになります。それは真のビジネスとは言えず私が望むものでもありません。
次のような方法はいかがですか。自分が指定した時間に指定したターゲットに対してビジネスを行い、必要なことをベースにしてプロセスを構築するやり方です。また業務の委託、プロセスの自動化、一部機能のアウトソーシングなど業務効率の向上を図ります。ふさわしい顧客にふさわしいレベルのサービスを提供し収益を上げることができます。この方が良いと思いませんか。これはプライベートを充実させることにも繋がります。何をするかは人によって違いますが、お子さんと夕食を共にしたり運動をしたりする時間ができます。この会場には10年間ジムに足を踏み入れていない人が何人もいるようです。そのような人は火曜日の夜8時に面談が入っているのでしょう。それは意味のあることでしょうか。
私は誰かを批判しているのではなくもっと良い方法があると言いたいだけです。またご自身のやり方の背後にどんな考えが潜んでいるのか吟味してください。クライアントからの拒絶やネガティブな反応が怖くて客離れを避けたいというだけなら、それは説得力のある理由にはなりません。自分の動機を念入りに調べてください。
次の考え方は私にとっては一番重要なものです。私たちが住む社会、特に保険・金融業界は均一化が進んでおり例えば米国の労働省が発表したフィデューシャリー・ルール(受託者責任規制)ではほとんどすべての会社が同じ額のフィーを請求し同じようにクロージングをかけなければならず、高度に均質化したマーケットになるのではないかと思います。その中で差別化を図るにはどうしたら良いでしょうか。客に「どこも同じ」と言われたらどのように返答しますか。自分のバリュー・プロポジション(価値命題)が何であるか考えてください。価値をどのように提供するのか明確にしなければなりません。自社の価値を顧客に分かりやすく説明することはとても重要です。価値はあなた自身でバリュー・プロポジションはXかYという簡単な説明で済ませてはいけません。クライアントが離れていくのはその価値を分かるように丁寧に説明する努力を怠ったからです。
自分は何者で得意とするものは何か、どのような問題を解決しそれは他とどう違うのか、何に熱意を持ちどの分野で専門的なのか、自分の個性は何か。これらの質問をよく考え真摯に答えることができれば、本当に有益だと思います。
私がアドバイザーをしていたときのバリュー・プロポジションについてシェアします。これはコーチング・プログラムのメンバーだったときに構築しました。私のバリュー・プロポジションはシンプルでした。それは「弊社はリーダーシップ、リレーションシップ、クリエイティビティを通して価値を提供する」というものです。リーダーシップはクライアントに方向性を指し示すことです。また今起きている現象とその原因についての全体像を提供します。これがリーダーシップの意味するところです。リレーションシップは誠実さと信頼が関係しています。クライアントは直感でまた私たちの宣伝活動を通して、私たちがどのようにお客様を第一にして共に歩むかについて理解します。私たちが自分たちのニーズよりお客様のニーズを優先すること、人間関係はサービスの重要な土台であることも知ります。私はリレーションシップをバリュー・プロポジションの重要な構成要素として組み込みました。三つ目はクリエイティビティでこれはクライアントが持っているさまざまなチャンスを最大限に生かすために必要な要素です。私たちはお客様が置かれている状況をあらゆる角度から観察しました。大量消費市場向けのテレビ界で活躍する経済の第一人者が述べる断定的なアドバイスや万人向けの決まり文句は言いません。型にはまらないで課題を包括的に検討しお客様に合ったより良い方法を提案します。住宅ローンを完済することが得策でない場合だってあります。住宅に大金をつぎ込まない方が良いときもあります。リタイアメント・プランのときだけ債券に投資するわけではありません。さまざまな状況がありさまざまな方法が考えられるので一つひとつ検討します。このようにリーダーシップ、リレーションシップ、クリエイティビティの三つを通して自社の価値をお客様にアピールしました。
また投資をする際には自分でコントロールできる事柄とできない事柄があることを伝えました。お客様にはいつも「投資に関して5つの点をお話ししています。そのうちの4つはコントロールできますが一つはできません」と話しています。
税金はある程度抑えることができます。コストに関しては低コストの保険会社を選ぶことが可能です。リスクは資産配分や分散投資、保険で管理できます。また投資態度はコントロールできるかそうでなくても学ぶことができます。もし投資態度を学ぶことができれば、不安定な市場においても賢明に判断してリスクを回避できます。このようにコスト、税金、リスク、投資態度の四つは意のままに動かすことができます。ただ一つコントロールできないのは運用成績で、これは政府の方針や誰が大統領になるのか、イギリスのEU脱退がどうなるのかをコントロールできないからです。同じように中国も株式市場もコントロールすることができません。ですから私はアドバイザーたちが重い腰を上げて四半期ごとに集まり、投資パフォーマンスについて話し合うのはほとんど無意味だと思います。私たちには運用報告をする義務があります。しかし知恵に関する議論はなおざりにされています。それはインポスター・シンドロームやその他諸々の障壁が邪魔をして自信を喪失させ、自分たちには知恵があることを認めさせないからです。私のような年配者でなくてもそれぞれが持つ独自の経験を生かして知恵を体得することは可能です。
価格やパフォーマンスについて延々と議論するのは止めるべきです。それはただの商品に過ぎず最終的に議論する価値はほとんどありません。顧客がこうしたことをいつも聞いてくるのはそれ以外の何を聞けば良いのか分からないからです。ですからバリュー・プロポジションに関することはアドバイザーがリーダーシップを取る必要があります。そして会話の主導権を握り顧客に「本当は何を知りたいのですか?なぜこんなに働くのかということですか?なぜ会社に行って週に80時間も働くのですか?なぜこのようなやり方を選ぶのですか?本当に知りたいことは何ですか?」と尋ねてください。
私たちは物事を高い位置から見渡すべきです。3万フィートの高さを登ったつもりでそこからの眺めをクライアントに伝授するなら、それは素晴らしく価値のあることです。こうしたことを話すアドバイザーはごくわずかです。パフォーマンスや商品、自分の得意分野を売り込むことに夢中になっているからです。私はいつも顧客を3万フィートの高さへ連れて行き彼らの「なぜ」について語り始めます。クライアントの「なぜ」を知ると自分の「なぜ」も明らかになります。とてもシンプルです。一様に1%のフィーを請求し同類商品を扱う私たちにとり差別化は非常に重要です。差別化を図るため提供すべきサービスや商品にユニークさと価値を付与し、またそれをお客様が理解できるように巧みに伝えてください。
数十年前、コーチング・プログラムに参加する前は、自信がなかったためどの面談にも外部の資料をどっさり持参しました。裏付け資料をたくさん見せればクライアントは感心すると考えました。あるときクライアントに調査を実施して、私にしかない価値とは何なのかを調べました。90%の顧客が短い言葉で次のように書きました。「会って5秒以内に信頼できる人だと分かりました」「会った瞬間に信用しました」などです。その言葉は私に大きく影響しました。ありのままの自分をお客様に見せるだけで良いことに気付きました。それで十分でした。もちろんやるべき仕事はありますし、それはこなしました。しかしがむしゃらに働く必要はありませんでした。実際山のような資料を持って面談に臨むと顧客は戸惑いました。ですからクライアントと長期にわたる深い人間関係を築きたいなら、クライアントをランチに誘って「より高い視点に立った」質問をしてみてください。ビジネスを始めて間もないなら、本当に信頼できる人を訪ねて同じように聞いてみてください。堅固な土台の上に築かれる長期的な人間関係を模索していることを伝えましょう。あなたの価値がその人に必ず伝わるようにしてください。この業界に長くいる人も、もう一度初心に戻ってクライアントと有意義な話し合いをしていただきたいと思います。
3つ目は失敗は成功の元であることを認めることです。失敗しなければ成功できません。自分が何者で何を欲しているのかおさらいしましょう。自分はなぜ夢を追求しないのか?なぜグレムリンに反論しないのか?なぜ後回しにするのか?それは失敗するのが怖いからです。そのためやってみようともしなくなります。しかし失敗すればするほど成功に近づいています。失敗はつきものでそれは何度もあることだと認識してください。野球の最も偉大なバッターでさえ打率は3割5分くらいです。打席10回中4回未満です。私たちも同じです。ヒットを1000本打ちたいですか?それは無理です。三振することもあると肝に銘じてください。「潔い」ことが必要です。思い通りにならなかったといって人生を諦めてはなりません。ただ前に進んでください。潔く失敗し、次に向かって前進すれば本当に欲しいものにもっと近づいたことになります。
次にお話しする考え方も重要です。私たちはふさわしいクライアントのためにふさわしくない見込客から手を引く心構えを持つことが必要です。顧客に仕え本当に必要なものを提供するにはクライアントの人数をある程度制限しなければなりません。もちろんビジネスを構築している最中ならキャパシティを広げることができます。例えば業務委託、外部委託、自動化などキャパシティを広げるためにできることはいくつかあります。しかし、一般的にはふさわしい従業員を何人か雇う必要があります。それをベースにさまざまな仕組みを構築することができます。自分が理想とするビジネス、クライアント、価値に集中し力を注げば注ぐほど成功を収めます。偽りのない本物のビジネス・パーソンになれます。そして自分の本領を発揮し自ら考案したプロセスやシステムを築いていくことができます。そのようにしてできあがったビジネスは自分にも自分の家族にとっても価値があります。最優良顧客を増産し続ける方法を提唱する人がいます。しかしそれは法則にすぎません。
私は何年も前に顧客リストの下から45%の顧客からの収入は全体の5%しかないことに気付きました。お客様に喜んでいただきたいといつも思っているので、すべての顧客を大事にしてきましたし、彼らも私を頼りにしていました。しかしこの層にどれだけコストがかかりどれだけ収益を圧迫しているかを把握した結果、これまで通りでいることは難しくなりました。そこで私は顧客をふさわしいサービスレベルに慎重に振り分けることにしました。一部の顧客は本店に、一部は投資会社に、一部はこれからビジネスを始めようとしていているアドバイザーにお願いしました。非情な手段で彼らを切り捨てたのではありません。新しい住みかを与えました!その結果私の収入の大部分を生み出すふさわしい顧客層だけが残り、その方たちをベースに再びシステムを構築しました。
次の心構え:成功に終着点はないので、一歩一歩前へ歩み続けること。自分にとっての成功が定義できたら、それが最終目的地でないことを忘れないでください。成功は到達できる場所ではありません。それは常に変化し常に動くターゲットのようなもので、私たちはこの動くターゲットに向かって歩を進めながら道中で達成した小さな成果を祝っています。ターゲットはぐるぐる回り続けています。
また関連することですが完璧は存在しないので、ただ前進することを考えること。これは戦略的コーチング・プログラムで学んだことですが、完全であろうとすると結局後回しになってしまいます。なぜなら世の中に完璧なものなどないのに少しでも欠点があると最初からやらないか完璧になるまで先延ばしにしてしまうからです。ビジネスでも人間関係でもこれは真実です。完全な人はいません。よく言われることですから分かっています。しかしどういうわけかビジネスにおいては完璧さが期待されます。正確さの話をしているのではありません。不正確だったり間違っていたりするのは良くありませんがそれは完璧とは別の話です。私たちは完全な世界、完璧なシナリオを重視する傾向があります。「文句のつけようがないパーフェクトな仕事をすること、それこそが幸せであり成功だ」しかし常に変化し動き続ける完璧さにはいつまでたっても到達しません。ですからマインドを変えてください。わずかな軌道修正がのちに大きなインパクトを与えることがあります。このことがビジネスにどのように影響し、また生き方にどう表れるのか再考してみてください。自分にとっての成功に近づけるかもしれません。
マインドの最後はコントロールの手綱をどんどん緩めることです。何年も前にNAIFAの全米大会のメイン・ステージで聞いた話です。MDRTの歴代会長の一人Reggie Rabjohnsの講演は私にとって忘れられない話でした。コントロールの手綱を緩めるとはどういう意味でしょうか。コントロールとは単純に力を意味するものです。皆さんの周りにもビジネスをするとき何にでも首を突っ込み力を行使したがる人がいるでしょう。夫がテレビのリモコンを離さないので奥さんと子どもが困るという話をしているのではありません。今のは冗談です。コントロールを手放すとは権力を手放すこと、つまり権限を人に委ねることです。手綱を緩めて別の人に渡すのです。コントロールを他の人に与え、その人が権限を持つようにします。
力を手放すことは生活のあらゆる面で重要なことですが、今はビジネス面に限定して考えます。「間違いなくできるのは私しかいないので委ねるのは不安だ」「誰かがしくじって問題が起き、結局自分が出て行って解決しなければならなくなる。実を言うと私は出て行くのが大好きで、解決するのは得意だしこれこそが私の仕事だ。明日はもっと多くの問題を解決しよう」「忙しすぎて家に帰れない。何とか一日が終わったがまだ面接が残っていた。まだ火曜日なのに、もうやっていられない!」と思ったことはありませんか。このような悪循環に陥っていませんか。原因の大部分はすべてを自分でコントロールしようとしたからです。私は皆さんに注意喚起しています。自分の持つ権限の中で何か手放せる分野があるなら、それを他の人に任せることでゆとりが生まれ最も重要なことに焦点を当てることができます。
コーチングのクライアントにも言っていますが、やるべきことは本当にシンプルです。皆さんはたくさんのスキルをお持ちです。社会的スキルが優れていて、知性や経験、教育も申し分ありません。自分を信頼してくれる人たちとソーシャル・スキルや人心掌握術、教育や経験、知識や知恵などで繋がることに集中すれば、皆さんはとても影響力の強い人になります。影響力は力を手放したあとの空所を埋めます。皆さんは影響力を持つようになるのです。権限を他の人に委譲しその行使やプロセスに心配りを示すなら、皆さんは有力な人になります。より良い役目です。もっと多くの質の高い仕事を行うことができます。やりがいのある価値のある仕事です。スタッフに権限委譲すれば組織の中でも地域の中でも有能なリーダーになります。このことに焦点を絞ってください。すべてのことを管理しようとせず、コントロールの手綱をどんどん緩めて自分の人生を取り戻してください。
この講演を聞いた皆さんが次のように考え始めてくだされば幸いです。自分のやり方を変えることができるかもしれない。いろいろ考え合わせるとそれはビジネスだけでなく自分の幸福や自尊心、社会との繋がりにも大きな影響を与えるだろう。それは皆さんの周囲にも好影響をもたらし、特に今回お話ししている皆さんのクライアントを良い方向に導くでしょう。
変化を起こす
次はトレーニングです。実際に変化することに取り組みましょう。ファイナンシャル・アドバイザーはユニークな仕事です。私たちはチェンジ・エージェント(変革の促進者)です。政治や規制問題でチェンジ・エージェントの役割を果たすこともできますがクライアントに関わることにも変革を引き起こし、その結果社会にポジティブに働きかけることができます。誰かが社会のあり方や見方を変えれば最初は少数派であったとしても連鎖反応を引き起こします。皆他の人のことをもっと考えるべきです。そこで今から「どうのようにして」やるのかについてお話ししたいと思います。
AIM SMART
実際にどのような仕組みでどのように取り組めば良いのか?自分にできるだろうか?ほとんどの取り組みやプロジェクトはこういった疑問から始まります。しかしそれらは今気にする必要はありません。その代わり目標を設定するための枠組みをこれからご紹介します。それはAIM SMARTです。またミッション・ステイトメントのトレーニングも行います。
AIM SMARTは目標を設定するためのプロセスで、受け入れられる、理想的または無難なゴールです。それは明確な(Specific)、測定可能な(Measurable)、実現可能な(Achievable)、現実的な(Reasonable)、時間軸のある(Time-oriented)ゴールを基盤とします。これがSMARTの部分を構成します。SMARTゴールについて聞いたことのある方がどの位いらっしゃるか分かりませんが、これは新しいコンセプトではありません。SMARTは目標の質を定めるものです。「少しダイエットしよう」とか「もっと稼ぎたい」と言うだけでは不十分です。皆さんの中には私がシェアしたような大きな人生の目標を持っておられる方もいれば、もっと小さな目標、あるいは4年以内にトップ・オブ・ザ・テーブルの資格を得るといった中くらいのゴールを持っておられる方もいらっしゃると思います。いずれにしても目標は明確にする必要があります。一般論ではだめです。また測定できるものでなければなりません。
MDRTでのゴールに限定して考えてみましょう。資格取得のための挑戦期間は毎年1月からの1年間で、達成しなければならない数字も明確です。これでSMARTの二つの要件を満たしました。TOTは実現可能な目標です。固い決意を持って変えなければならないことは変え、付け加えるべきことは付け加え、やるべきことを行っていればTOTのレベルに達することは可能だと思います。それは現実的でなければなりません。ゼロスタートからこの年末までにTOTを取得することは現実的でしょうか。そうではないかもしれません。しかし「あと6ヶ月ある。今から本気で生まれ変わって、来年はTOTを手に入れよう」と決心するのはどうでしょうか。どんな目標でもSMARTの要件を満たすものであれば達成するチャンスは十分にあります。目標には時間軸も必要です。「いつかCOTかTOTになるのが目標です」では良くありません。それは本物のゴールとは言えずただの希望または夢です。目標は明確で、測定可能で、実現可能で、現実的で、時間軸のあるものです。また目標設定の第一ステップとしてAIMを付け加えました。
例えばジムに行くことを例に取りましょう。私のゴールはジムに通うことです。中でも体重を5kg減らすことが重要な目標です。ですからジムに行くことは受け入れられる(acceptable)目標です。私ができる最低限のことは何でしょうか?今日はジムへ行けないので別の日に行くことが最低限できることです。理想を言えば週に5回か6回はジムに行きたいところです。それが理想(ideal)です。しかし今の私の生活を考えれば現実的ではありません。ではその中間(middle)を取って週に3回通うことにします。重要なのは現実的になって目標を設定することです。これが実践方法です。SMARTの要件を満たすしっかりとした目標が定まったら、次のAIMのステップへ進んで実践してください。
ミッション・ステイトメント
最初に断っておきますが、今から作るステイトメントは内容が多少意味不明だったりおかしかったりすることがあります。それでもとてもインパクトが強くて意義深いトレーニングです。面白いので皆さんもきっと興味を持ってくださると思います。
まず用紙を四つのコマに分けてください。
最初のコマには人生から最も得たいものを書いてください。自分の本心から個人として本当に欲しいと思うものを少なくとも三つ書き出します。心に浮かんだ最初の三つをそのまま記してください。一つの言葉でもいいし、二つの言葉でも大丈夫です。どんなことでもいいので書いてください。
次に二番目のコマに進みましょう。二番目は「自分が人生で経験したい事柄」です。人生のある時点で、あるいはどの時期にでもいいのでぜひ起きて欲しいと願う事柄を少なくとも三つ書き出します。他にもあるなら三つ以上になってもかまいません。
次のコマには自分にしかない個性だと思うものを三つ書き込んでください。少なくとも三つはリストアップしましょう。皆さんはどんな資質をお持ちですか?どのような点でユニークだと言えるでしょうか?
最後のコマには「次の二週間で行う自分の生活の中で改善できる事柄または前向きに取り組める行動」を三つ書きます。最低三つにしてください。「私は次の二週間で…〔何をするか〕ができます」の形になるように記してください。
次に各コマの内容から項目を一つずつ直感で選んで丸をしてください。一つしか書いていなければそれが該当します。
さて、面白いのはここからです。次のようにして文章を完成させてください。
「私は〔四コマ目に丸をした項目を書く〕をする。〔三コマ目に丸をした項目を書く〕を利用して。〔二コマ目に丸をした項目を書く〕が実現するように。その結果〔一コマ目に丸をした項目を書く〕も手に入る」
内容がうまくかみ合わないことがあります。おかしな文章になるかもしれません。でも一番の目的は楽しむことです。最後は盛り上がりましょう。
辻褄が合わないとお思いならもう一度やってみてください。トレーニングのやり方が分かったので、もっといいものができるかもしれません。
話を締めくくる前にいくつかのことを思い起こしてみましょう。このプレゼンテーションが意図しているのは皆さんに広い視野を持っていただくことです。これには目標をもう少し高く設定し、自分の内面にある恐れや壁、後回しにする癖を認識することが含まれます。自分自身をどのように受け止めているのか考えてください。自分を客観的に見つめ直してください。何かを決めつけたり批判したりすることを避けてください。いったんそこから離れて他の考え方にも目を向ければ、束縛からもっと自由になれるかもしれません。自分の素の姿を見せ長所も短所もさらけ出してありのままの自分でいるなら、意外に思うかもしれませんが人から好意的に受け止められるでしょう。
他の人は皆さんの本当の姿を見たいと思っています。何かを演じているように振る舞うならすぐに見破られます。何かを売ろうとしているだけならすぐに分かってしまいます。これはよく言われることです。こうしたことに人は敏感です。これに対し、落ち着いた態度で自分の価値観と合致するものだけをその価値観に賛同する人たちに提供しようとするなら、ついてきてくれる人は必ず見つかります。しっかりとしたビジネスを構築し、皆さんの前進を助けてくれるクライアントに同じことをして報い、クライアントの「なぜ」と自身の「なぜ」を理解しましょう。このアニュアル・ミーティングでは、より効果的になって生産性を高めより多くのクロージングをかける方法などいろいろなことを学ぶでしょう。
次の五つの点を心に留めておいてください。
- 自分にとっての成功を手に入れるには、自分が何者で何をなぜ望むのかを明確にする必要があります。
- 成功の障壁となっているのは主に人の頭の中にあるものです。自分がコントロールできることに集中しそれ以外のことを手放すなら、障壁だったものが好機に変化します。
- 自分が世界をどう見るかは周りが自分をどう見るかに影響を及ぼします。類は友を呼びます。見方をコントロールすれば望むものが近づいてきます。
- 固定したマインドは人の潜在力や成長を制限します。成長段階にあるマインドは成功のチャンスを大きく開きます。役に立たなくなった考えは捨て去ってください。
- 最終的に成功するかどうかを決めるのは自分の本質の中にある価値観であり、価値観は自分や成功を測るものさしです。人は一番重要だと感じ、またそのためならどんな犠牲を払ってでも戦いたいと思うもののために行動します。
覚えておいてほしいこと:
皆さんにとっての「誰」は土台となる事柄です。それは自分の本質的な価値観であり出発点です。誰であるかはどのような困難に耐え、どのようなことを容認し、どこに境界線を引くかによって決まります。
皆さんにとっての「何」は任務・使命です。何がほしいかは自分の欲求だけでなくどのような痛みなら耐えられるのか、自分の価値観と照らし合わせて何が最も重要なのかによって決まります。
皆さんにとっての「なぜ」は原動力です。さまざまなゴールを達成するための燃料です。
人は一番重要だと感じ、またそのためならどんな犠牲を払ってでも戦いたいと思うもののために行動します。
その戦いから生まれた情熱は皆さんの内なる壁を突き破って皆さんを大きく前進させるでしょう。多くの障害を払いのけ成功の次の段階へ、皆さんが決めた次の成功へと導くでしょう。

Steven A. Plewes, CLU, ChFC は4回のコート・オブ・ザ・テーブルと10回のトップ・オブ・ザ・テーブルを含めて32年間MDRT会員。MDRTの大会で何回も講演をした経験がある。多様な委員会で貢献し、2017年はMember Resources-Practice Management DivisionのDVPとして活躍。