ちょうど30年前の1989年のアニュアル・ミーティングに初めて参加した私が会長に就任するなんて、誰が予想できたでしょうか。奇跡は本当に起こるのです!
信じられないようなジャーニーは2014年11月、土曜の朝に始まりました。妻と私はビーチで土曜の朝の散歩を楽しみ、自宅に帰る途中に携帯電話が鳴りました。
発信元の番号はアメリカのインディアナ州South Bendとなっていました。インディアナ州South Bendにいる知人はたった一人しかいません。2013年度会長を務めたScotty Brennanが私にいったいどんな用事で電話をかけてきたのだろうと思いました。
早速電話に出ました。Scottyをご存知の方は、かれが美しい言葉の使い手だということをご存知だと思います。彼は「Ross、インディアナ州South BendのScotty Brennanだ。誰かの人生を変えるかもしれないような電話をかけるチャンスはそれほど多くないのはご存知のとおりです。たった今、推薦委員会を終わったんだ。私は光栄なことに君がMDRT役員会メンバー予定者に推薦されたことを伝える役割を仰せつかった」とのことでした。
一言も話せないほど私は驚いていました。とりあえず急いで座りました。気が付くと涙が頬を伝っていました。隣にいた妻は、何がなんだかわからないままでした。私のリアクションを見て、よほど悪い知らせを受けたに違いないと思ったそうです。
私にこの重責が任される日が来るとは思ってもいませんでした。私がMDRTの為に行ったボランティア行為はすべてこの素晴らしい組織への恩返しだと思っていました。役員会メンバーを務める機会を与えていただけるとは思ってもいませんでした。
数週間後、Scottyは私と妻Chrisに会い来て、役員会メンバーの役割と責任を説明してくれました。2015年1月に予定者として発表していただきました。Scottyの言ったとおり;私の人生は本当に激変しました。
この講演のタイトルの“The Places You Will Go, the People You Will Meet”は子どもの本で有名なドクタースースからお借りしました。正しくは「訪れる場所、出会う人々、素晴らしい体験、素晴らしい食事、体重増、ダイエットしなきゃ!」にするべきでしょう。
5年間に出会い、交流する人々によって自分がどんな人間になるかを予測できるという言葉があります。役員会メンバーとして活動した4年半の間に役員会メンバーと非常に多くの時間を過ごしました。そして、世界中の情熱的なMDRT会員にたくさんお会いしました。要するにものすごく恵まれた、祝福された経験をすることができました。
役員会メンバーは忙しいとは聞いていたのですが、昨年9月に会長に就任してからの日々は想像を絶するレベルでした。2012年度会長を務めたJennifer Borislowは「時には消火栓から水を飲むように、膨大な量の情報を飲み込まなければならない」と表現しました。まさにその通りでした。
昨年9月に会長に就任して以来参加させていただいたMDRT Dayは:
- 韓国のソウル
- ブラジルのサンパウロの初MDRT Day
- インド、ムンバイ
- 日本、神戸
- 台湾、台北
MDRT ワークショップ、MCCそして保険会社のイベント:
- マカオ
- 中国の上海、北京、蘇州
- 香港
そして様々な、MDRT会議が:
- ハワイ、カウアイ島のトップ・オブ・ザ・テーブル会議
- ボストンのEDGE大会
- スペインのバルセロナで開催されたグローバル・カウンシル会議
そして、もちろんここマイアミ。
それぞれの国ではメンバーから大変な歓迎を受け、思いやりをもって接待され、素晴らしい経験をさせていただいたと感謝しています。
昨年のアニュアル・ミーティング、ロサンゼルス大会のメイン・プラットフォームでAndrew McCarthyは「ツーリストではなく、旅人になれ」という講演をしました。McCarthyはAndrew Zimmernの言葉を引用しました。「ツーリストではなく、旅人になってください。新しいことを試し、知らない人と出会い、自分の目の前にある物の先を見てください。広い視野を持つことこそ、私たちの暮らす素晴らしい世界を理解する鍵を握ります」。会長としての役割で、私も全力で視野を広げる努力を続けてきました。
旅行はもちろん楽しいのですが、何よりもありがたいのは偉大なメンバーとの交流でした。皆さんが準備したMDRT Dayやワークショップに参加し、皆さんが誇りをもって所属している会社を訪問し、MDRTのボランティアとして大きな貢献をしていることを実際に見せていただき、お話を聞く機会をいただきました。
そうした貢献はMDRTの為に役立っているだけではなく、会員同士の繋がり、アイディア交換、メンタリングなどでお互いの役に立っていることを実感しました。MDRTに関わっていると、世界が小さくなった気がします。仲間がいるから近く感じ、ボランティアとして活動するからフレンドリーなのでしょう。
私心を捨てて組織の為に尽くす中で、リーダーシップ・スキルを学ぶことはMDRT会員のコアなベネフィットと言えます。MDRTのユニークなベネフィットであり、ほとんどの団体や組織とは大きく違う点です。
たくさんの会員がMDRTから受けたインパクト、MDRTが仕事やプライベートに役立った話、さらにはよりよい父親、母親、家族、そして地域社会のメンバーになれたことを教えてくださる時、素晴らしい影響力のある組織の会長を務めさせていただいたことに身の引き締まる思いでした。
つい先日、ITがご専門の有名な大学教授の話を聞く機会がありました。その先生は3年間連続して試験に同じ問題を出題したことが大学の評議委員会で問題になり、呼び出されたそうです。十分な説明ができない場合は厳しい罰則に処すと言い渡されました。
教授の答えはいたってシンプルでした。試験の問題は同じでも、その答えは毎年違う。それほど早いペースで情報テクノロジーの世界は変わっているとおっしゃったのです。問題は同じでも、毎年答えは違う。実は役員会も毎年同じ問題に直面していたのです。役員会メンバーも、MDRT米国本部のスタッフも常に自問を繰り返しています。「どうすれば会員サービスを向上できるか」
そうです。問題は同じでも、答えは毎年違います。なぜならば、毎年会員数は変動し、年齢構成や地理的分布も変わり、テクノロジーは開発される中でMDRTはこれからも会員の為により良いサービスを提供することにコミットしています。
私が役員会メンバーに就任した2015年の会員数は69か国から43,200名でした。現在は72か国から70,000名以上がMDRT会員です。たった4年間で72%増加しました。
2015年度のアニュアル・ミーティングには8,100人が参加しましたが、売り切れにはなりませんでした。昨年は15,200席を用意したのに37時間で完売しました。そうした事実を重く受け止め、MDRTとしての大会の在り方を見直しました。
一番簡単な解決策は、単純に箱を大きくすることです。しかし、MDRTは安易な答えを出しませんでした。アニュアル・ミーティングのあるべき姿、フィーリング、MDRTマジックといった私たちにとって特別な要素を失いたくなかったからです。代わりに私たちは新たなブランドの大会としてMDRTグローバル・コンファレンスを開催することにしました。
グローバル・コンファレンス、を開催することで、今までの2倍の参加者を受け入れ、クォリティも維持することができると考えました。昨年は北米会員の為にEDGE大会を開催しました。この大会もより細かいニーズに対応することを目的にしています。
2015年には本部のウェブサイトmy.mdrt.orgが刷新され、Resource Zoneというセクションには過去3年分のアニュアル・ミーティングの講演記録とたくさんのビデオが提供されるようになりましたが、すべてが英語版でした。
現在、のResource Zoneには5,500以上のコンテンツがあり毎年、毎年2,200以上のコンテンツを追加しています。内容もテキスト(文字)、ビデオ、オーディオと多様です。
更に、それらのコンテンツを11の言語で展開しています。そうです11言語です。本当にグローバルな組織だからです。
2015年にMDRTは初めてのアプリをテストしました。大会スケジュールを見ることのできるアプリです。今年は2つのアプリがあります。大会用アプリに加えて昨年始動したMDRTアプリです。
新しいMDRTアプリはMDRTから毎週新しい情報を発信してコンテンツをお届けするものです。
現在はアメリカの会員をベースに試験段階のアプリはMDRTアカデミーと言うものです。MDRT入会を目指す方のための内容です。また一度はMDRTに入会したのになぜか成績が低迷してしまった方に再度基準を達成していただくことを目指しています。
会員登録、会議登録などの際に、ビジネスの内容や形態、専門分野や興味についての質問をされたと思います。新たに導入した会員管理システムのAptifyを活用して会員情報を取り込み、個々の会員に最適な情報を直接提供したいと願っています。
アニュアル・ミーティングのバッジのストラップにはブルートゥースが埋め込んであり、皆さんがどのセッションに参加したかトラッキングし、トラフィックの流れをモニタリング・分析し、今後の大の会場の割り振りなどにも活用させていただきます。
また、国別、言語別、年代別などのカテゴリー別の分析をすることでターゲットを絞ったコンテンツをデザインできるようになります。
さて、会員数が増えるということは、比率としてボランティアの機会が減ることを心配する方がいらっしゃいます。ボランティアはこの組織のマジックの源です。現在準備しているのはボランティアをもっとローカルにも推進することです。
ローカルに考え、グローバルに行動し続けます。
これまでお話したことや、施策はいずれも会員の皆さんのメンバー体験を向上させることを目的としていていずれも直近4年間での取り組みです。
先ほども言いましたが、問題・課題は毎年同じです。「どうすれば会員サービスを向上できるか」そして、毎年答えは違います。そうした努力を積み重ねた結果が現在の卓越した金融専門家の組織という存在であり、これからもそうあり続けます。
ある年のアニュアル・ミーティングでCaptain Charlie Plumbが講演をしました。彼は元アメリカ空軍のパイロットで任務中に撃墜されてしまいました。操縦不能となった機体から脱出して生還できたのは、パラシュートが機能したからです。
彼の講演のタイトルは“Who Packs Your Parachute?” 誰が自分のパラシュートを準備するのか、でした。あなたが確実に最高の仕事をするために、点検をしているのは誰でしょうか。
役員として過ごした4年間に私のパラシュートを用意してくださった方はたくさんいます。例えばシカゴで活躍する本部のMDRTスタッフであり、役員会メンバーであり、各国で活躍する会員とメンターとして導いてくださった方々です。
特に、私の仕事のパートナーであるGinoは欠かせない存在としてコミットメントをもって私を支えてくれました。役員会メンバーになって以来、仕事面では大変お世話になりました。
そして、この4年間はもちろんですが、いつもいつも30年間にわたり私のパラシュートを点検してくれたのは妻のChrisです。そして子ども達ScottとBridgetteです。愛情をこめて私を支え続けてくれたことに感謝しています。
MDRTのおかげで現在の私という人間があり、この30年間MDRTは私の人生というタペストリーの一部になっています。役員会メンバーを務めさせていただいたこと、そして第93代MDRT会長を務めさせていただいたことは、そのタペストリーの錦糸です。
本当にありがとうございました。

Ross Vanderwolf, CFP、MDRT会長。 本拠地はオーストラリアのクィーンズランド州Brisbane。9回のコート・オブ・ザ・テーブルと9回のトップ・オブ・ザ・テーブルを含め、32年間MDRT会員。MDRT FoundationのPlatinum Knightの称号を持ち、MDRT Foundationの理事を務め、Inner Circle Societyのメンバー。業界経験38年というベテランとして包括的なファイナンシャル・プランニングを提供する Rothgard Financial Partnersの代表取締役。MDRT会員として、多くの本部主催委員会で活躍してきました。2014年の創設以来毎年、「オーストラリアの最も信頼されているファイナンシャル・アドバイザー」のひとりとして認められています。