
「IFA」との出会い
「私の営業担当でもあった同期の仕事を見て、自分にもできると感じた」という言葉の通り、清水会員の生保営業マンとしての人生は順調に滑り出しました。当時は計上ベースで認定が取れたこともあり、6カ月で基準を達成し、その年のアニュアルミーティングに参加することができました。いくつものセッションに耳を傾けている中で、清水会員はあることに気づきます。それは、登壇している人が皆「IFA(Independent Financial Advisor)」であるということ。彼らの話を聞き、「生命保険と証券の両方を扱わなければ真の保障を提供することはできない」と思い到りますが、当時の日本では生命保険と証券を一人の人間が扱うことはできませんでした。IFAとの出会いから8年。金融ビッグバンによって業務の垣根が取り払われ、生保営業マンにも「証券仲介業」が認められました。ただし、保険会社に所属したままでは認可が取れなかったため、清水会員は独立を決めました。
見込み客を生み出すマーケティング
清水会員が独立した理由はIFAを目指したことともう一つ「マーケティングをよりシステマティックにしたかったから」だと言います。入社後しばらくは教員をメインに紹介営業を続けていた清水会員でしたが、MDRTの会議で「生産性を上げるためには1件当たりの単価を上げる必要がある」と学んだことで、マーケットを富裕層に転換。当時は飛び込み営業やテレアポ等、ありとあらゆる営業手法を試したものの、うまくいかなかったと振り返ります。そんな中たどり着いたのが、マーケティングでした。富裕層を抱える企業や団体と提携し、富裕層ならではの課題に対して解決手法を提案する中で保険を販売するというビジネスモデルを構築することで、安定的に優良な顧客に面談できる仕組みを作り上げたのです。
生保営業マンを幸せにしたい
独立後、清水会員は順調に成長を遂げ4年連続でTOTに認定されました。仕事が軌道に乗ったことで、清水会員の胸をある思いが去来するようになります。「保険会社時代、将来を嘱望されていた多くの人達が挫折して去っていったが、その原因は見込み客がいないことにある。自分のやり方なら、悩める生保営業マンに成功する機会を提供できるのではないだろうか」-そう考え、組織の拡大を決断しました。それから約20年。現在は、全国各地の医師会・歯科医師会と提携し、約80人の営業マンと共に医療機関の経営改善のサポートを中心に事業を展開しています。同社の主なビジネスは、医療関係者が抱える多様な問題を相談窓口のハブとなって受け止め、それぞれの問題を専門家へとつなぎ、専門家が提示する解決策を集約してその医療機関にとっての全体最適を図るというもの。業績は手数料ベースで年間18億円。「まだ成功とは呼べないが、及第点ではあるかな」と語るその目ははるか先を見つめています。
保険に加入しなかった人にも満足を
清水会員に、低金利や人口減少など、厳しい環境が続く日本で生保営業を成功させるために必要なものを聞くと、「お客様のために何かしてあげたいという思い」と「お客様の問題を解決するゼネラリストの能力」の2つだという答えが返ってきました。前者は保険業界で成功している人たちの共通項であり、こうした風土を醸成するため、同氏の会社では「保険に加入しなかった人の満足をつくる」ことを標ぼうしています。これは、面談した全ての人に「会ってよかった」と思われる人になるということ。後者は、お客様の抱えている問題を見抜く眼力を持ち、専門家を束ねてお客様を問題解決へと導く能力を指します。清水会員は「この2つを兼ね備えることができれば、これからの時代でも成功できる」と断言します。
まとめ
保険営業マン向けの教育にも力を入れている清水会員。今年は企業向け保険の販売に関する問題が注目されましたが、この件についても「保険で節税してもお金は増えない。お金を増やすためには、法人税ではなく、所得税の効果を使うべき。研修会ではそういうことを伝えている」と語ります。正しく努力する人が幸せになる仕組みを根付かせるために―、清水会員の挑戦は続きます。