
インド初の保険会社設立が200年以上前だったことを考えると、現在の生命保険普及率がわずか2.76%というのは驚くべきことです。しかし人口が14億人と非常に多いため、わずかな割合とはいえ3600万人が生命保険に加入しています。インドの生命保険業界はすでに世界最大規模ですが、今後さらなる成長が見込まれています。
「成長の可能性が非常に高く、実際この10年間で急速に成長しました。インドの保険業界は黄金時代にあると言えます」とムンバイを拠点にする18年間MDRT会員のPriti Ajit Kucheria, LUTCF, CFPは述べました。
21世紀初めの保険業界の民営化以降、黄金時代が始まりました。それ以前は公営企業のLife Insurance Corporation(LIC)が業界を独占していました。今日インドには24社の生命保険会社と31社の損害保険会社があります。業界の市場規模は2020年までに2800億ドルに達すると予想されています。
「2000年代初頭から100万人以上の個人ファイナンシャル・アドバイザー(IFAs)が現れ、約1000社の大手金融機関が全国に誕生しました」とハルヤナを拠点にする14年間MDRT会員のRavi Pahlajrai Rajpalは述べました。「それでもアメリカやイギリスと比べるとインドでの生命保険ビジネスの普及はまだこれからです」
保険市場が成長した結果、人々の意識が高まっているとインドのアドバイザーは考えています。
「消費者教育は必須です」とコルカッタを拠点にする5年間MDRT会員のSukanta Singha Roy, CFC, FSSは話しました。
人々が保険そのものに対する理解を深め、その活用方法を知ることで保険ビジネスの成長に繋がるとKucheria も考えています。
「以前はほとんどの人が節税対策のためだけに保険を利用していたので、保険料は節税効果が期待される額に左右されていました。現在、保険は以前より重要になっています。早死や長生きのリスクをカバーするといった明確な目的で保険に加入する人が増えています」
民間保険会社の誕生で業界内の競争が激しくなった結果、クライアントに合わせた提案やニーズに合わせたサービスが提供されるようになりました。Rajpalはクライアントとの信頼関係を構築し、ニーズにぴったり合う提案をするためにファクト・ファインドを大事にしています。オンラインで保険に加入できる時代にあっては、きめ細やかなサービスが特にクライアントの役に立つと考えています。
「直面する大きな課題の一つは、商品に関するクライアントの意思決定です」とムンバイを拠点にする6年間MDRT会員のPlabita Priyadarshiは述べました。クライアントにはさまざまな選択肢がありますし、多くの企業がアプローチしてきます。ですから時間をかけて検討するのは普通ですし、加入を断ることもあります。そうならないようにクライアントの財政健全性指数をチェックして、ニーズの分析を行い、適切なソリューションを提案するようにしています。
「クライアントの成功がわれわれの成功に繋がる」とRoyが指摘するように、アドバイザーはクライアントの財政健全性を確実なものとし、ニーズを完全に満たす保険に加入してもらわなければなりません。
規制で仕事に制限を受ける、もしくは規制は障壁になると考えられている国や地域もあるようですが、インドのアドバイザーはクライアントが健全な財政を保つことに注力しています。インド保険監督局(IRDAI)は顧客利益のためにインドの国内で業界を監督しています。Priyadarshiは「何よりもクライアントのために考えることが重要です」と述べています。
インドでの生命保険ビジネスの普及はこれからです。
— Ravi Pahlajrai Rajpal
Kucheriaは生命保険会社がユニットリンク保険商品の保険金について図表説明をすることを義務付ける規制を例に挙げました。保険会社は二つの標準的な成長率シナリオ(8%と4%)と正味利率を比較する図表を用意し、クライアントがプランを十分に検討し、賢い判断ができるようにしています。
近年手数料が減額され、さらに手数料の開示も義務化され、アドバイザーとクライアントの関係において透明性が高まりました。
意外に感じるかもしれませんが、Rajpalは手数料の開示で仕事が容易になると述べています。「生命保険会社は全データを図表化し、契約内容を文書に印刷しているので、曖昧さはありません。クライアントはアドバイザーと保険会社が提供するサービスのコストを知ることができます」
手数料開示の義務化はクライアントにとってアドバイザーが有用な存在だと位置づけるのにも役立つとKucheriaは述べています。
「クライアントへのプレゼンテーションでは、よくこの点が議論のポイントになります。アドバイザーとして手数料を受け取る代わりに、クライアントが得る価値をはっきりと示すのに役立ちますし、手数料体系が下方修正されたり、廃止された場合でも、最終的に料金を請求するための基盤形成に役立ちます」
IRDAIは継続率も監視しており、アドバイザーごとに初年度および5年目以降にどれだけの生命保険契約が継続しているかを開示することを義務付けています。
「継続率を無視するアドバイザーは高いコストを支払うことになります。つまり、じっくり生命保険事業に関わり続けるアドバイザーしか生き残れないためクライアントにとっては有利な規制です」とRajpalは述べました。
インドでは初年度以降の継続率が2016年に61%、2017年に65%と改善の兆しを見せていますが、世界的な平均の90%の継続率からははるかに劣っています。
規制当局は生命保険販売の筆記試験やライセンス制度を取り入れ、インドのアドバイザーの質を高めようと努力しています。Kucheriaはこういった改革がファイナンシャル・アドバイザーの自尊心を高め、ただのセールスマンから尊敬される専門家へと変身するきっかけになっていると考えています。
将来は企業家マインドのあるアドバイザーが課題を克服して、新たな機会を見つけるでしょう。Royは特に都市周辺部と農村地域に未開発の大きな白地市場があり、開発できると信じています。
「成長の可能性が非常に高く、実際この10年間で急速に成長しました」
— Priti Ajit Kucheria
「LICはこういった地域で主にビジネスをしていました。しかし根本的な消費者教育の問題があるためにこのセグメントはアプローチが難しいのです」と語りました。
他国と同様インドでもクライアント獲得が重要です。RajpalはMDRT会員のBen Feldmanのアドバイスをよく思い出し、呪文のように唱えています。「その1、人に会う。その2、もっと人に会う。その3、もっとたくさんの人に会う」
どんな出会いや機会、紹介や偶然も積極的に利用していると自負しています。
Priyadarshiにとっても、最も記憶に残るクライアントとの出会いもそうした偶然からはじまりました。南アフリカのケープタウンからムンバイの自宅へ帰る途中、空港ラウンジである父親とそのお嬢さんに出会い、長いフライトの機内でもたまたま座席が同列でした。彼女は自分の仕事について話し、オフィスへお越しくださるよう頼んだところ、やがて、その父娘は彼女に収入をもたらすクライアントになったそうです。
「我々は皆、誰にでもアプローチできる能力を持つべきです。クライアントはどこにでもいます。見つかるかどうかは最初の一歩を踏み出せるかどうかにかかっています」
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Sukanta Singha Roy sukantasingharoy@hotmail.com