
第8回は、いわゆる「生命保険会社のレディー」をグレートにしたような後藤菜穂子さんに話を聞いた。
大手企業の役員秘書や航空会社人事部を経て結婚、そのまま悠々自適な主婦を演じるかと思いきや生命保険会社にハローワークでスカウトされて保険のレディーを極めてしまった彼女はバブルを謳歌した世代だ。
そんな彼女の歯に衣着せない大胆な話をお読みいただこう。
年代的にバブルを経験されていますよね?
「そうなんですよ。バブルを知っているので、OL 時代はすごかったですよ。役員秘書という職業柄だったのか、上司の会食先へ 書類を渡す だけの つもりがそのまま食事をしたり、遊んだり本当に今では考えられない消費生活をしていました。その意味では今の若い人たちは、不況とデフレで消費することを知らないので不安になりますよね。私の息子なんて貯金することしか知らなくて、お金を使わなくて何が楽しいんだろうと思っちゃいますよ」
そんな当時の OL を謳歌されて、ご結婚もされればもう働く必要はなかったのではないですか?
「そうですよね。ただ、職種はどうであれ働きたかったのは事実です。何でも良かったのですが、とりあえず働く意志はあったので失業給付をもらいに 当時職安と呼ばれていたハローワークへ 行ったんです。そしたら今でもたまにいますが、スカウトがいたんですよ 。
まさかその場でお決めになったとか?
「まさか笑 。で も名前や住所や電話番号を教えてしまって、主人に怒られました。 そ したら電話がかかってくるのではなくて直接家まで来ちゃったんです。 」
生保会社であればやりかねませんね 笑
「そうでしょ?それで話を聞いていたら一度会社で話を聞いてくださいということになって、いきなりタクシーで家から会社まで直行ですよ。今風にいうと拉致られたんです 笑 」
ということは、キャッチで入社してしまったんですか?
「そういうことになりますね。結果論としては良かったんですけどね」
ではそろそろ保険についてお話を伺いましょうか?
「誤解を恐れずに一言でいいますと、この仕事は男性には向かないと思っています。もちろん全員がそうとはいいません、あくまでも私のオピニオンですよ」
それは構いませんが、言っちゃいましたね。理由をおたずねしてもいいですか?
「男性が全員そうだとは決して言いませんが、男性は瞬発力こそ ありますけど 、 持続性がないと思うんです。もちろん 細かな対応が必要な MDRT メンバーのみなさんは そうだとは思いませんが 、 あくまでも一般論です。結果として保険屋になってしまう傾向があると思うんです」
そういうご意見をお伺いすると 、男性外交員の多い 外資とバッティングし てとんでもない目にあったことがあるとか、そういうことですか?
「いえ、そういうことは不思議なことに一度もないんです。外資とバッティングすることはなく、 バッティング するのは同じ会社内か日本社ですね。なぜかというと、外資や損保系の上位企業 の外交員は 1 万人くらいかと思うのですが、 日本社は主要会社だけでも 10 万人はいますから 、意外と バッティングはしないんです」
では純粋な感想なんですね
「そうですよ。ただ、外資の名誉のために付け加えますと、彼らのおかげで私たちのレベルがあがったのも事実です。いわゆるコンサルティングセールスというのはやったことがなかったわけですから、その意味では日本社も新たな戦い方を身につけたことになります」
そういう外資の営業方法は見ていてかっこいいですけどね
「確かにそうですね。でも、いまさらかっこいい営業をしようとは思わないです。泥臭いかもしれませんが、長年培ってきた信用や実績や誠意でやってきましたから」
日本社では支社や支部などの単位で営業することが多いですよね?部下の方々はどうなんですか? MDRT に入れなければならないのではないですか? 笑
「実は私は元々 MDRT の存在を知りませんでした 。私の部下が先に MDRT に入ったことがきっかけで MDRT の存在を知りました。そこで私も入りたいと思い、 MDRT にチャレンジしたんです 。そういう意味では部下のおかげなのかもしれませんね」
保険業界は社員の入れ替わりも激しいでしょう?大変ではないですか?
「確かにそれはあります。隠しても仕方がないので正直に言 いますと、定着率は悪いです。ただ、うちを退社してほかの企業に勤めても私のことを忘れずに保険を紹介してくれる元部下や元仲間がたくさんいるんです。そういう人たちは元々保険会社にいたのですから、説明もすべて終えてあるんですよね。 笑 これとこれのプランを持ってきてほしいと詳細を指定して連絡してくるんです。そうなればプランを持っ て行って必要な説明をして署名捺印をいただくだけですからね。考えてみれ ばすごく良い 紹介 者 ですよね」
確かに。それは後藤さんのお人柄のたまものなのかもしれませんが 、これからは保険業界もい っそう 厳しく なると予想されます。そのあたり のことを、音声放送で語っていただけますか?
「えー、私なんかでいいんですか?保険のレディーですよ(笑)」
インタビュー中は終始笑い通しで、たまに飛び出す爆弾発言にどきどきしながら、大変スリリングな取材となった。
それぞれの外交員の立場や所属によって立ち位置が異なるのは当然としても、それを何のわだかまりもなくおおっぴらに発言できるのは、彼女が持っている自信の現れなんだろうと感じた。
自信の持ち方も人それぞれ、表現の仕方も人それぞれ。営業経験がある記者の感 想としては、重要なのはそれが顧客 や部下にきちんと伝わるかどうかに尽きる のだろうと思った。
Interviewer Profile
聞き手:フリーランスライター 古川智規
金融機関で外国為替や国際商品のディーラー・ブローカー業務を経験した 3 級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人
資産相談業務)。
現在はフリーランスライターとして、主にウェブメディアでノンジャンルの記者として執筆活動。