
インフレーション(以降「インフレ」)は「物品やサービスの価格水準が全般的に上昇し通貨の購買力や実質的価値が低下すること」と定義されます。インフレはお客さまの貯蓄や投資に大きな打撃をあたえるものです。お客さまには、資産の一部を株式に配分すべきとする私たちのアドバイスはインフレを根拠としたものであることをご理解いただかねばなりません。
ウォートン・スクールのジェレミー・シーゲル教授は、1802年以降北米の投資利益について調査を行い大企業はインフレ調整後6.6%の利益を還元したとする結果を得ました。この数字は第二次世界大戦後には11%を超えていました。わずか2%の低いインフレ率であっても10年~30年の間に18%~45%も価値を低下させてしまうことを私たちは明確に説明できなくてはなりません。インフレの脅威こそは最も警戒すべきものです。
ではお客さまや見込客にどう伝えるのが良いでしょう。
- シンプルに
- 覚えやすく
- 楽しく
これがコツです。グラフや表はお客さまを退屈させてしまいます。
私は時間が経過すると購買力が失われていくことを示すグラフを持っています。正確なデータですが実世界に応用できるものではありません。代わりにお客さまには50年前の切手をお見せしています。普通郵便の切手は1971年には6セントでしたが今は55セントもします。
ここ50年間で米国の郵便料金は6セントから55セントになりました。これは4.5%のインフレ率で全体的な消費者物価インフレ率の3.9%より少し高い程度です。お客さまに瞬時に飲み込んでいただける良い例えであり、インフレについてシンプルで覚えやすく、そして楽しくお伝えできる方法です。シーゲル教授の調査では投資利益が6.6%でしたので郵便切手のインフレ率
4.5%を引くと2%ほどの実質利益が得られるということになります。お客さまの長期的目標をめざす上ではこうした複合的な要因を考えねばなりません。
お客さまに問いかけるべきは、今から50年後に55セントで何枚の切手が買えるかということです。恐らく切手1枚のほんの切れ端ほどにも相当しなくなっているでしょう。
お客さまにはインフレのグラフの代わりに切手をお見せすることで理解していただけます。またこの例えをずっと覚えていてくださいます。
郵便切手の貼られたはがきを印刷し時間を経過するごとに物価が高騰することをご説明します。価格の上下変動は市場平均をつくります。株価の上下変動は投資プロセスを構成する要素です。お客さまは損失が出たと認識されると直感的に手を引こうとされますが、折に触れて郵便切手の例を思い出してもらい、データが示す事実を信じてもらう必要があります。
平均という概念について説明するには次のようなたとえも使えます。片手に雪玉を、片手に熱々の芋を持てば決して心地良くはありませんが全体としては体温のバランスが取れます。ここでのポイントは、株式投資は長期での平均利回りを追求するものであって時に我慢を強いられることもあるということです。またそうしたときこそ私たちは最もお客さまの役に立つことができます。こうした上下変動は当たり前であり長期的なデータを信頼すること、安心を得るために配分構成を調整したり変えたりするのは市場が変動している時は不安に駆られて行うべきではなく市場が安定しているときにこそ良い結果を生むものであることを認識していただく必要があるためです。
階段をイメージして長期的な見通しにフォーカスするのです。階段は長期的な市場の実績(6.6%)です。ヨーヨーをしながら階段を上る人をイメージしてみてください。ヨーヨーは市場の短期的な上下変動です。私たちはみな階段の行く先を見通すべきで、ヨーヨーの動きに神経質になるべきではありません。一日一日の市場の下落や危機に対して敏感になりがちなお客さまにとっては分かりやすい例えです。そうしたお客さまには階段とヨーヨーを思い出していただきましょう。
アドバイザーであれば、株式市場で長期的に最大のリスクとなるのは株価の一時的な急落やその後の反発ではないことはすぐに分かります。最大のリスクとなるのは投資しないことです。
インフレについてお客さまや見込客にどうお伝えするのが良いでしょう。
- シンプルに
- 覚えやすく
- 楽しくこれがコツです。

Richard Dobson Jr., CFPは投資顧問会社として登録しているAmerican Financial Managementの社長です。また American Financial Securities社の役員でもあり、MDRTのいくつもの委員会で活躍しました。