イスラエルが2010年に経済協力開発機構(OECD)に加盟した際、同国の金融システムに関する予備審査が行われ、過去30年間に「大幅な規制緩和が行われた」と評価されました。しかし、驚くことに2018年OECDが発表した同国の規制指数は大きく低下しました。その間イスラエルの規制は貿易や投資の障壁になったと判断され、加盟35ヶ国中、規制指数が最下位から2番目に厳しいという結果になりました。
この変化はイスラエルのファイナンシャル・アドバイザーにとって驚くべきものではありません。30年間MDRT会員でHod Hasharonを拠点にするYossi Manorは自国の規制を「過剰」だと言います。
「OECDが発表する規制指数は各国の規制が経済の繁栄に必要なダイナミックな競争力をどの程度促進しているかを評価したものです。規制は業界に影響を与える重要な要因のひとつです」と説明しました。
8年間MDRT会員でエルサレム在住のBoaz Bar Elは国内の保険代理店を代表してロビー活動を行うイスラエル保険代理店協会(Israel Association of Insurance Agents)の年金委員会のメンバーです。資本市場・保険・貯蓄局(Capital Markets, Insurance and Savings Authority)との交渉に参加して、イスラエルの保険代理店に課せられる不均衡な規制を緩和するよう働きかけています。
イスラエルでは以前から規制の変更が頻繁に行われていましたが、商品を勧めるにあたり、提案の正当性を示し情報を開示するよう求められるなど、近年「大幅に強化された」とBar Elは指摘しています。
Reem Shukhaは重大な規制変更が唐突に課せられることを課題のひとつに挙げています。その影響で民間の長期介護保険など特定の商品は姿を消しました。
9年間のMDRT会員でNazareth在住のShukhaは「過去3年間に大規模かつ急激な改革がありました。保険募集人に不利な変更を食い止めることにある程度成功したが完全ではありません」と意見を述べました。
Manorはクライアントが生命保険を契約後5年以内に解約した場合、保険募集人は手数料を返還しなければならないという2020年に施行された規制に言及しました。また、現規制当局は商品の種類にかかわらず、アドバイザーが受け取る手数料の金額を標準化する政策を支持しています。
これらの規制は負担が大きいとは言え、間違いなく必要なルールです。Bar Elによるとイスラエルの保険業界に参入した「専門性と倫理に欠け、未熟な保険営業をするテレマーケター」や「メディアで絶え間なく流れる、消費者の誤解を招く虚偽のマーケティング広告」などの不謹慎な行為が急増していると懸念しています。そこで彼はクライアントに本物のファイナンシャルの専門家の意見を聞かずに、どこかで聞いたことをうのみにすると思わぬ結果になると頻繁に警告しています。
Shukhaもまた、こうした業界の新規参入者の悪影響を目の当たりにしてきました。
「イスラエルの保険代理店やファイナンシャル・プランナーは、クレジットカード会社や小売りチェーン店など保険が専門外の企業が業界に参入し、医療保険や旅行保険などを販売しようとする動きに苦慮しています」
しかし当然ながら規制には良い面もあります。
「さまざまな規制変更が行われてきた中で、国民年金清算局(National Pension Clearance Bureau)の設立など、業界の透明性を高める、前向きかつ有益な変更もありました。このような規制変更により、初回の面談でクライアントの個別のニーズに対応するために、アドバイザーが必要な情報を全て備えておく必要性が高まったと考えています」とShukhaは説明しました。
また、アドバイザーはクライアントに十分なサービスを提供し、永続的な信頼関係を築くためには市場の動向を常に把握しておくことが重要だとも述べました。
「クライアントのニーズを理解し、最適なソリューションを提供できるよう最善を尽くすことが大事です。また、エージェントとクライアントの関係が長期的なものになることを理解した上で、クライアントのニーズの変化に応じてサポートできるよう準備しておくことも大事です」
クライアントと長期にわたる関係を望むBar Elは高齢のクライアント向けに年金を専門分野に選びました。
特定の商品分野の専門性を身につけて、競合するアドバイザーに抜きんでる自分自身の付加価値を強調すれば、結果的にお客さまとの長期的な関係を強化する方法になるという考えです。
一方Manorは専門性においてさらに一歩進んでいます。一般的な保険や年金および貯蓄商品を専門とする自分の子ども2人と組んで仕事をしており、自身は投資とリタイアメント・プランニングを専門としています。
「ワンストップ・ショップと専門店の組み合わせでお客さまのニーズと信頼に応えています。クライアントは今この時も、あらゆる分野の専門家が私たちのオフィスにいるとご存じです」とManorは語りました。
Shukhaも自社を「ワンストップ・ショップ」と呼んでいます。彼女は生命保険、年金、医療保険を中心に提供しており、同僚がその他のニーズに対応しています。
「保険業界で成功するためには、お客さまに多様な商品を提供し、専門性を保ち誠実であることが重要です」と話しました。
テクノロジーの進歩や商品内容の変更への対応はもちろんのこと、規制が進行中のイスラエルでは、特に柔軟性が永続の鍵であると3人とも同意しました。
Manorは「柔軟に対応するアドバイザーは生き残り、競争力を維持できます。そうでなければ競争から脱落するかもしれません」と述べました。
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