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プロデューサーはさまざまな理由でビジネスを売買したり合併したりします。事業と顧客リストを購入してクライアントや管理資産を増やす、新規事業を始める、サービス内容を拡大する、あるいは自社の役割を見直すことを意図するかもしれません。理由が何であれ当事者は新たなビジネス・チャンスに興奮し、楽観的になりすぎてしまうことがあります。

買収や合併の手続きをしているときにマイナス面を検討するというのは、プレナップ(訳注:結婚前に取り決める法的効力を持つ夫婦間の契約書)の内容について話し合うのと少し似ています。最高の結果が得られると信じたいのが本音です。

「バラ色のメガネを外して矯正メガネをかけるようなものです」とMDRT会員歴11年でカナダ・カルガリーで活躍するAdrian George, CFP, TEPは言います。

時には「してはいけないこと」のリストが「するべきこと」のリストと同じくらい、あるいはそれ以上に役に立ちます。後でご紹介するレッドフラッグ(訳注:カーレースで中断を意味する赤旗)のリストを見て過度にネガティブになる必要はありませんが、プロセスのスピードを少し落として間違った契約に向けて全速力で突っ走ることがないようにしていただきたいと思います。

James Fisher, J.D.(金融サービス業界を対象にした承継マネジメント、買収と査定を行うFP Transitions社のM&A担当ディレクター)は、アドバイザーや企業がM&Aのチャンスに熱中しすぎてレッドフラッグを見逃してしまうことがよくあると言います。最近は特にウェルス・マネジメント分野の購買熱が非常に高まっています。

Fisherは買い手の立場からアドバイザーがなぜ無機的成長を求めるのか自問することが重要だと言います。「現金がたくさんあるから、あるいは他の会社が買収に成功しているからというだけで事業を買い取ることはお勧めできません。買収は単に収益を上げて将来最高額の入札者に売却するためではなく、より完全な戦略的成長計画の一環として利用するべきです」と警告しました。

FisherはまたM&Aを専門に扱う企業に委託するなどの適切なデュー・デリジェンスを行うことで、危険要素を見つけ出し問題に取り組むことができると言います。続くレッドフラッグのリストはすべてを網羅しているわけではありません。他のアドバイザーがM&Aで得た教訓を追加することもできるでしょう。しかしこのリストは皆さんの期待値を調整して最良の結果を手に入れる助けになります。最終的にM&Aから手を引くという選択をした場合でもそれは変わりません。

1. スピーディーなタイムライン

何かが間違っていることを示す最も分かりやすい兆候は、ビジネスを手放そうとしている売り手が手続きを急いでいることです。

Ryan J. Pinney, LACPはそれが理由で企業買収を断念しました。オーナーが売却することに積極的でしかも急いでいるということは大きな危険信号のひとつです。

「話がとんとん拍子に進んでしまうとエラーが発生しやすくなります。数字を確認する時間が足りないためミスを犯しやすいのです。また現オーナーが早く手放したいと思っているのは、買い手に言えない理由があり裏で何かをしているからかもしれません」とカリフォルニア州を拠点にする13年間MDRT会員のPinneyは言います。

実はPinneyが買収しようとしていたビジネスは更新時期を迎えた大口顧客を失う危機に遭遇していました。売り手はそのことを黙っていて、それも売却を急いでいた理由のひとつではないかと推測しました。

「もし購入していたら翌月には大口顧客を更新で失い、大きなロスになったでしょう」とPinneyは述べました。

2. クライアントやアドバイス・スタイルの不一致

危険な兆候は会社やビジネスの欠点に起因しているとは限りません。そのビジネスが自分の築いたビジネスになじまないことが明らかになる場合もあります。

例えば購入した顧客リストに載っているのが主に医師で、自分も医師をターゲットにしている方なら相性が良いと思えるかもしれません。しかし自分がいつもサービスしているのと同じタイプの医師でしょうか?キャリアの浅い病院勤務の医師のニーズは、定年間近の眼科医と大きく異なる可能性があります。

また、新しく獲得したお客さまにこれまでと同じようなサービスを提供できるでしょうか。アドバイザーの中にはお客さまと実際に会って話すことを好む人もいれば、私情をはさまず能率重視で仕事を進める人もいます。新しいお客さまが一方のアドバイス・スタイルに慣れていたのに皆さんがもう片方のスタイルで接したら、移行はスムーズに行かないかもしれません。

しかしそれが必ずしもマイナスに働くわけではなく、いくらか調整することでうまく行くこともあります。Georgeが買収したビジネスの前任のアドバイザーはクライアントとの関係を仕事と割り切って接していました。

Georgeは「スタイルの違いがもたらす結果は、ポジティブな場合もネガティブな場合もあります。ネガティブな場合、お客さまはこのアドバイザーとは相性が良くなさそうだと感じます。一方で成功ストーリーもたくさんあり、面談をしてみて分かったが本当はこのようなアドバイス・スタイルを求めていたと言ってくださるお客さまもいます」とは語りました。

同様に売り手が売却するビジネスに関わり続けたいと思っているのに、買い手がそれに乗り気でないなら良いマッチングとは言えません。Pinneyは自社のある事業の売却を進めていましたが、買い手は彼が会社が移行に関わることを望んでいないことに気付きました。

「買い手が事業価値を別の観点から見て何かをもくろんでいたことは明らかです。本当は事業を分割して切り売りしたかったのだと思います。それが分かったので、これ以上取引を進める気が無くなりました」とPinneyは語りました。

話がとんとん拍子に進んでしまうとエラーが発生しやすくなります。数字を確認する時間が足りないためミスを犯しやすいのです。
— Ryan Pinney

3. 財務内容が良すぎる場合

会社や顧客リストの財務状況が非常に良好に見えるときは、時間をかけて数字を調べてください。

Pinneyが買収を検討していたあるビジネスは表面的には高い収益性を示しましたが、よく調べてみるとそうでもありませんでした。

儲かっているように見えたのはサービスやサポートの要素を切り離し、従業員を解雇していたからでした。

現在の数字だけを提示して、過去にビジネスを維持し成長させるために費やした本当の経費を隠していました。Pinneyがスタッフの数を戻して今後の維持・成長に必要な事柄を検討した結果、収益性が高いと思われたビジネスは実は収支がゼロ、場合によっては赤字でした。

4. これが原因で経済的に苦しくなることはあるのか

投資金の回収もそうですが、投資に対する利益が出るのにどのくらいの期間が必要か考慮してください。

これは買収した事業の費用をどのように支払うかという単純な計算にも関連します。現金で支払う場合、自分の資産にリスクは及ばないのか、購入した顧客リストを当てにして貸し倒れの心配はないのか。

またその投資を他の場所に回すことも検討する価値があります。例えばマーケティング担当者を雇用する、CRM(顧客関係管理)のアップデートに使うなどです。

Georgeは「まずは費用を払えるのか、その根拠を示してください。損益分岐点までどのくらいかかるのか計算しましょう。それにリスク要因を加え、もっと良い投資方法や投資先はないか検討してください」と述べます。

状況がどうであれ、はやる気持ちを抑えて危険信号を見落とさないことが大切です。それがビジネスの健全性に関わるときは特に注意してください。

レッドフラッグを利用してビジネスを改善する

買収することをためらう要素が分かれば、自分のビジネスが購入に値するものであるかを確認する助けになります。また売却する過程で、買い手が自分のビジネスの何を危険要素と見なしているかを知ることから学ぶことができます。

Pinneyはある事業の買い手候補からのコメントをきっかけに財務を再構築しました。「これまでと異なる方法で会計処理を行うことにしました。計算方法や数字は変わりませんが、以前よりクリーンでシンプルになりました」と述べています。会社は2022年に創立50年を迎えますが財務体質は大幅に改善しました。予算の中に10年前、20年前あるいは30年前に使用していた商品やサービスの項目が並んでいましたが、それらを計上するのを止めました。

Pinneyにとってすべての財務を整理し簡素化する良い機会になり、去年はそのために多くの時間を費やしました。大変な作業でしたがその後の管理は楽になりました。今後事業を売却したり合併することになっても、先方に会社を紹介してその価値を提示するプロセスがもっと簡単になったと言います。

Fisherは多くの企業が危険信号から学習し、今後の取引で同じミスを避けるための方針や手順を導入するのを見てきました。そして自身の会社もこれらの教訓をクライアントのM&A取引に役立てていると語りました。

Fisherが指摘するその他の危険要素:

  • 詳細な財務情報の欠如
  • 業務およびスタッフのコンプライアンスに関する好ましくない履歴
  • パートナーや従業員の間の不和
  • スタッフの離職率が高い
  • 顧客の財布内シェア(訳注:share of wallet特定の期間における顧客の特定の会社への支出割合)の欠如
  • スタッフの競合禁止条項(訳注:Non-Compete競合他社に特許内容や企業秘密が漏れるのを禁止する条約)の欠如
  • 特定のクライアントへの依存度が高く、多様性の欠如(例:少数のクライアントが収益の大半を占めている)
  • 顧客数の減少
  • 買い手と売り手の投資哲学の相違
  • 会社の文化や個性の面での整合性の欠如
  • 会社が提供するサービス面での整合性の欠如

CONTACT

Adrian George adrian@playcheques.com

Ryan Pinney rpinney@pinneyinsurance.com

Sarah Steimer
Sarah Steimer
2021年8月18日

M&Aでの危険信号を見極める

ビジネス(ここでは代理店買収・保有契約)を買い取ることに夢中になる気持ちは分かりますが、デュー・デリジェンス(適正価格の評価)を行ってスピードを落とすことも必要です。
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著者

Sarah Steimer