
安定は周りの環境を把握することから始まります。路面が凍結している可能性があれば慎重に歩くでしょう。階段を上っているときにふらついたら、手すりにつかまるでしょう。
そして、安定性には360度の視野も必要になります。
過去から学ぶとともに、未来を見据える能力が問われます。
MDRT会長のRandy L. Scritchfield, CFP, LUTCFには仕事に対する強い責任感があります。それはアドバイザーとしての仕事も、ボランティア・リーダーとしての仕事でも同じです。うまく行ったこと、行かなかったことの両方を冷静に分析し、あと何ができるかを常に考えています。
アメリカ、メリーランド州Damascusで活躍する37年間MDRT会員のScritchfieldは極端な楽観主義やがむしゃらに働いて成功を築いたのではありません。むしろ、戦略的な思考と冷静な分析を経て現在の地位を築きました。これまでにコート・オブ・ザ・テーブル資格を3回、そしてトップ・オブ・ザ・テーブル資格を20回獲得しています。またMDRT Foundationへの貢献も大きく、エクスカリバーの騎士の称号を持ち、Foundationの理事を務め、インナーサークル・クラブ会員としても活躍しています。MDRTではさまざまなポジションでリーダーシップを発揮してきました。そして、リタイアメント・プランニングを専門に扱うMontgomery Financial Groupを創設し、社長を務めています。
会長に就任するにあたり、経営者の視点を持ち、多くの人生経験を生かしながら新しい未来へと導く覚悟を決めています。そして、自分だけの考えで進めることができないことも十分自覚しています。リーダーシップについて質問をするとScritchfieldはよくグループ・メンタリティ、集団思考という言葉を使います。MDRTではこれまで多くの会長が貢献し、今後も多くの会長が続きます。すなわち自分は大きな絵を創り上げるパズルのひとつであると考えています。ひとつのピースでありつつ、大事なピースです。そして指導者というよりモチベータだと考えています。組織として進むべき方法を示し、仲間と一緒に力を合わせることで成功に向けて進めるという考えです。その実現に不可欠なのは振り返る能力と未来を見据えるビジョンの両方です。
強固な基盤
Scritchfieldは初めて会員に登録した1985年からMDRTの成長と変化を見届けてきました。初参加はサンフランシスコ大会で参加者数は約6,000名でした。
「1985年の私は生命保険の募集人で生命保険の募集だけが仕事であり、収入源であり、MDRTに入会するために必要な入会基準でした。現在の私たちはファイナンシャル・アドバイザーとしてさまざまな金融商品を扱い、入会基準も手数料ベースに加えて保険料、収入などでの登録も可能になりました」と振り返りました。
当時、会員の大多数は北米で活動する人たちでしたが、現在は90%の会員がアメリカ以外の方々です。組織としてMDRTはグローバルであること、そして世界で活躍するアドバイザーにふさわしい組織になることを戦略的に選択した結果です。
もう一つの重要な変化は役員会メンバーが多様化していることです。9月からの新年度では北米以外のメンバーが過半数となるのはMDRT史上2回目となります。
地理的にも文化的にも多様な背景を持つリーダーがいることはこれからの組織にとって不可欠な要素だと確信しています。
「第一に、多様な地域で活躍するメンバーがリードすることで、世界ではどのような変化が起きているかを把握することができます。第二に、文化的な違いにより、会員はどう捉えるかの多様性を認識することに役立っています」と述べました。
役員会はメンバー構成が変わりましたが、その役割も変化してきました。彼の表現を借りると、これまで役員会はエンジンルームの「へそ」として細かい施策の意思決定をし、すべてを仕切ってきました。しかし、現在の役員会は意識的にマイクロ・マネジメントを避け、大きな環境の変化や今後に注力しています。
そこも過去と未来を見据えるという役割の一環です。Scritchfieldが会長として組織の未来のためにやりたいことはいくつかありますが、いずれも会員として学んだこと、MDRTのリーダーを経験して考えたことであり、何人かの元会長の言葉を引用してくださいました。
熟慮のというブランド
十分な配慮と考察の上に目標を設定することで問題と答えが明確になることをScritchfieldは経験してきました。彼は金融サービスの専門家になる以前、非常にマージンの少ない飲食業で働いていた経験があります。材料費、テーブルあたりの売り上げ、スタッフの給与などを計算して収益を上げる努力を続けてきました。この仕事に転職してからも同じ手法で自己分析を続けてきたことがこの仕事での成功に大きく寄与していると考えています。売上台帳を使わなくなってからも、コンタクト数、見込客、面談数などを細かくトラッキングして年間目標達成を目指しました。常に過去を記録し、明確な未来予定を設定することで「驚くべきことにその未来は実現します」と語りました。
分析家であるScritchfieldが大きな躍進を果たした要因のひとつはビジネス・コーチを雇ったことでした。コーチの指導に基づき、3ヶ月ごとに仕事の大掃除をしました。スタッフや後輩に任せる仕事、やめる仕事などをリストアップして、そうして空けた時間で自分がするべきことを決めていくという作業です。
この手法を役員会でも取り入れたそうです。何がうまく機能しているか、いないか、何を追加できるかを検討しました。
振り返ることのない人生は生きる価値がないと言われます。Scritchfieldはビジネスも組織も困難を乗り越え、生き残り、成長してこそ価値が高まると考えています。その一方で、十分に機能しているので、注視する必要のない部分もあると考えています。
「役員会では厳しい批判的評価を続けています。新たに開始した施策についても同じです。経験があり安定的に推移していることにリーダーが深く関わる必要はありません。非常に優れたスタッフと有能なディレクターがいるので彼らに任せておけば安心です」と語りました。
本部でこの数年間取り組んできたデジタル化プロジェクトについては、グローバルな会員のニーズに応えるためのカスタマイズが必須だと考え、付加価値の高い内容にするために注力していく予定です。すでにいくつもの施策が進んでいるので、急激な方向転換をする予定はありませんが、微調整を繰り返すことになるでしょう。
「組織の長として会長はさまざまな場面で前面に出て、スポークスマンの役割を果たしますが、私たちの組織の会長は12ヶ月という短い期間を担い、組織としては軌道に乗っています。優れた軌道を進んでいる組織の進路を阻むことなく、追い風を十分に生かして前進を続けるのが会長としての役割だと認識しています」と述べました。
グローバルで大きな組織であるにもかかわらず、MDRTは昨年のパンデミックを乗り越え、さらに発展を続けています。それは世界中のアドバイザーを支援するというミッションに注力した結果と言えます。これからもその使命に忠実に正しい道を進んでいくと決意を新たにしています。そして、多くの会員が望んでいることでもありますが、再び世界中から会員をお招きして大会を開催できる日を心待ちにしています。ただし、過去と同じには戻らないであろうと警告を忘れません。すなわち、私たちはこの1年あまりで多くの違いを学んだのでそれらを生かした未来を築く必要があると考えているからです。
「この15ヶ月間で学んだことを忘れるべきではありません。ブッククラブ(推奨図書の情報交換)の活動を増やし、ウェビナーも増やすべきでしょう。対人ではなくてもできることがたくさんあることを学びました」と述べました。
もちろん世界中から仲間が集まり、情報を交換し、ディナーを楽しみ、ネットワークを広げた楽しい経験も忘れられません。その一方で、現在の会員は何を望んでいるのか、ニーズは何か、どうすれば会員に役立つ組織になれるかを常に考えています。先人、仲間からの学びを生かし、聞く耳を持つことを大事にしていくつもりです。
「会長のするべき仕事は会員の声を聞くこと。声を聞くためにメンバーと会うことです。会長として主張するべきことは何もありません。唯一あるとすれば、入会を目指す方を励まし、登録した会員に交流を促すことです」と語りました。
2021年アニュアル・ミーティング・バーチャル大会での就任のあいさつでScritchfieldはMDRTの大事な要素は3つ、すなわち有意義、関連性(時代やニーズに即した)、そして絶対不可欠な存在であることだと述べました。
有意義:「大多数の会員は会員になったことで仕事に対する姿勢が変わり、やりがいを感じ、感謝の気持ちを持ってお客さまのために活躍していると確信しています。昨年はまさにそれを再認識しました」と語りました。MDRTはこれからも私たちが大事にするホールパーソン・コンセプトの下に確固たる信念を持って前進します。
関連性 (時代やニーズに即している):MDRTは常に業界のトップブランドとして入会を目指す方々を引き付けてきました。そして、そうしたMDRTを目指す方々のために新たなブランドとしてMDRTアカデミーそしてMDRTグローバル・サービス(機関長向け)を立ち上げ、今後ともステータスとブランドを守ります。
不可欠な存在:会員のビジネスの向上はMDRTの目指すものであり、特に昨年はその実現に尽力してきました。例年通りの会員が集う大会を開催できなかったにもかかわらず、会員数が新記録となったのは皮肉とも言えます。しかし、これまでの分かち合い、助け合いの精神で会員が難しい環境でもビジネスを向上させる成功事例を共有し、既存会員の継続と新規会員の掘り起こしに成功した成果です。
Contact: Randy Scritchfield randy@randyscritchfield.com