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期待に添う
期待に添う

4 22 2022

期待に添う

早期に目標設定をすることでお客さまとの長期的な信頼関係を構築

対象のトピックス

見込客をクライアントに変えるためには、アドバイザーとしての皆さんとの付き合いが一生続くことに同意していただかなければなりません。お客さまの関心事は資産の保護、資産形成、保険プランあるいはそのすべてかもしれませんが、私たちは最初の面談から何年経過していてもお客さまの最善の利益を考え続ける必要があります。

お金を扱い、お金を失う恐れといった非常に重要な事柄が関係するため、お客さまの信頼を勝ち取るのは簡単ではありません。そのため初期の面談では相手の期待値と皆さんが提供するサービスが一致するように心掛けてください。お客さまが皆さんのオフィスを訪れ入門編ビデオ・セッションに参加するのは、リスクがほぼゼロのポートフォリオでマーケットの利率を超えてもうかるとか、補完的医療保険が膨大な医療費を保障してくれると考えたりするからです。期待と現実が食い違っていると、お客さまは次に弱気相場が来たときや保障が思っていたのと違ったときに怒りの電話をかけ、できもしない約束をしたとかダメなアドバイザーだと皆さんを非難するかもしれません。

はじめに

期待に添うためにはクライアントを教育する必要があり、そのプロセスは自由回答形式(Yes/Noで答えられない)の質問と傾聴から始まります。その際には大人同士の会話を心掛け、お客さまにも説明責任を持たせるべきだとカナダの5年間MDRT会員Elke Rubach, LL.M., CLUは述べます。

アドバイザーの仕事はアドバイスをすることであり、何をするべきか指示することではありません。従って商品提案を前面に押し出さないでください。むしろ質問をしましょう。『お客さまは何をしたいのですか?なぜそうしたいのでしょうか?そうすることでお客さまの立ち位置はどのように改善しますか?どのような状態になり、それに対してどのように感じるでしょうか?』そしてお客さまに責任を持ってもらいます。『これをしたいとおっしゃいましたが、それを実現するためには自己管理が必要です』根拠の乏しい期待を取り除いた上で、合意に達するようにしましょう。

ペンシルベニア州のScott F. Thompson, LUTCF(COT4回を含め、MDRT会員16年)は、初期の面談で上記の質問をしつつ会話の主導権を見込客に譲ります。また資産状況や現実的に目標に到達する見込みがあるかを確認します。その上でプランニングが本格化する前に、特定の会社やプランだけを全面的に推すことは一切しないとはっきり伝えるようにしています。

「私たちの関係は双方向です。お客さまは自分が求めているものを、それに対し私はお勧めのものをそれぞれシェアします。変更したい点があれば何であれ教えてほしいと言います。私が勧めたものに満足できないのであれば、10年後ではなく今知りたいのです」

インドの21年間MDRT会員で18回のTOT会員のPriti Ajit Kucheria, LUTCF, CFPは、何を目標にしたらいいか分からないと言うお客さまに予想以上の長生きや早すぎる死、病気、今のあるいは理想とするライフスタイルにかかる費用のためにプランを立てるべきだと言います。そしてオープンな質問形式で深く掘り下げていきます。お客さまにとってリタイアメントとは何ですか?お金の心配がなければご自身や家族に対してどのような夢を持っていますか?バケツリスト(訳注:死ぬまでにやることリスト)はありますか?

「願望をすべて書き出してもらってからそのリストをニーズ(needs)とウォンツ(wants)に分類し、現在および将来の富の配分を決める必要があると説明します。この2つの言葉を簡単に定義するとこうです。ニーズとは自分や家族の健康ややすらぎに必要だと思うもの、一方ウォンツはそれ以上の願望です。分類作業の間はアドバイスしないように気を付けます。アドバイザーは視野を広くし、多種多様なお客さまの考え方に対し常にオープンでいるべきです」

サウスカロライナ州の8年間MDRT会員Douglas S. Grant, LUTCF, RICPは、期待値を設定するために最初の面談で3つの投資バケツについて説明します。Grantは起業家を専門に扱っているのでリタイアメント資産、リタイアメント以外の資産そして全体的なポートフォリオという3つの観点からクライアントのリスク許容度と損失許容度を評価します。お客さまの目標や状況に応じて長期的な年金やリタイアメント基金に資金を預け入れることもありますが、いざというときのために生命保険から借り入れするなどいつでも現金化できるようにしておくことを推奨しています。2020年のパンデミック中、彼のクライアントは製造工場の近くに倉庫を購入するため2000万ドルの資金を必要としていました。Grantは資産の中で流動性が高いものを利用し、預金の引き出しや融資などで資金を調達することに成功しました。クライアントは不動産を購入し、その後ほとんどの貸付金を計画通り返済できました。

「お客さまの望みを把握し、お金を入れておくさまざまなポケットやバケツがあること、緊急時や市場下落時に現金を出しても無傷でいられることが分かると、本当に感謝されます」とGrantは語りました。

リスクとフィーの話

フィーを払う価値のあるアドバイザーは、見込客のリスク許容度と損失許容度を評価します。これらの分析を明確に提示することは、見込客を教育するだけでなく期待値と現実を一致させるのにも役立ちます。

英国の23年間MDRT会員Helen Jayne West, APFSは見込客との最初の面談の前にプロファイリング・ツールの一環としてアンケートを実施してリスク許容度を1から10の段階で採点します(10が最も積極的な投資家)。次にそのスコアに基づいてダミーのポートフォリオを作成しますが、予想されるリターンは過去の実績に基づいているためそれが繰り返し起こるとは限らないことを説明します。その上でポートフォリオの資金配分と予想リターンを円グラフに色分けします。例えば見込客がレベル4以下の低リスク投資家の場合、そのポートフォリオで期待される年間リターンはWestが請求するフィーによってそのほとんどが相殺されるので実り多い投資にはならないとこの機会に説明します。

「お客さまには正直でいたいと思います。私が請求するフィーを改めてお伝えし、私だったらお金が戻ってこないと分かっているものにフィーを払わないと言います」

私が意識しているのは、将来について考えるとき何をしたらお客さまが枕を高くして眠れるかということです
—Helen West

先ほどのシンプルな円グラフを使いレベル4(株式投資比率が50%以下で、インフレ調整後の実質資産価値が12ヶ月で11.5%下落する確率が20分の1)とレベル5(4と比較すると株式投資比率が高く、より多くのリターンが期待できるが評価額が下がる可能性が2%高くなる)の違いについて説明します。円グラフはリスクとリターンの関連性を視覚的に示すので、お客さまはあと数パーセントだけリスクを取っても大丈夫だと思うかもしれません。

とはいえWestは自身の採点ツールが示す分析結果をすべてうのみにしているわけではありません。例えば20万ポンドの貯蓄がある夫婦で夫がレベル7、妻がレベル6というケースがあったとします。夫は趣味でデイトレードをしており、一方で妻は老後資金を堅実に運用したいと考えていることが分かりました。Westは次の面談でボラティリティについて説明し、どのようなリスクがベストか、例えば2人が納得できるリスクとリターンの混合ポートフォリオにするか、あるいは夫が投資に使うお金を少しとっておき残りの大部分を妻が安心するようなリスクスコア5のポートフォリオに投資するか検討します。

「私が意識しているのは、将来について考えるとき何をしたらお客さまが枕を高くして眠れるかということです。お客さまと会話をするときいつも分析しています。安心できないのであればその投資はするべきではありません」とWestは語りました。

ダウンタイム(不稼働時間)にも手を取り合って

最初に重要な事柄をきちんと教えていても問題は起きます。弱気相場でポートフォリオの価値が沈み込むと、クライアントは市場のボラティリティやそれを乗り切れば長期的には利益が出るといった私たちの説明をすっかり忘れてしまいます。

「不満を防ぐことはできません。私たちにできるのは人間関係を改善するよう精いっぱい務め、面談の詳細な記録を残すことです。記録は膨大な量になるので、要約したものを各面談の後に送り『私たちはこのように認識していますがお客さまの理解と一致していますか?』と尋ね確認してください」とRubachは助言します。

Jonathan Peter Kestle, CLU, B Comはクライアントから契約後3ヶ月でポートフォリオが悪化したと苦情を受けたとき全体像を過去にさかのぼって眺める方法を教えました。同様の投資に対する平均リターンを6ヶ月、1年、3年と徐々に期間を長くして見せると、グラフは時間がたつにつれてばらつきが小さくなります。

「この3ヶ月間の成績はひどいものですが、お客さまはリタイアメントまで15年間あるとおっしゃっていてお金が必要になるのはその後です。15年間のチャートで見ると変動はほとんどなく、安定した上向きの線になっています。短期的な変動を経験した今、リスク許容度アンケートをもう一度行って違う回答をしたいですか?この配分では不安だ、こうなるとは思わなかったということならそれで結構です。配分を調整して前に進みましょう。リスクは減りますが高いリターンは期待できないでしょう」とカナダの8年間MDRT会員Kestleは助言しました。このような場合ほとんどのお客さまは配分をそのままにします。

別のアドバイザーはクライアントのポートフォリオをより大きな下落を記録している類似セクターの投資パフォーマンスと比較し、長期的な投資であることを思い起こさせて不安を和らげます。また下げ相場で安く買ったからポートフォリオ開始時よりも多くの株式や投資信託を保有していることを指摘し、安心感を与えることもできます。市場が回復すれば評価額は上がるのです。

Thompsonによると、ほとんどは苦情ではなく誤解から生じたものです。お客さまは「マーケットが下がっている。まずくないですか?」と言うかもしれません。Thompsonはファイルに目を通し「この資金は10年間必要ないとおっしゃっていました。でも半年で心配になるということは何か原因があるのでしょうか?」と尋ね、それを見つけ出そうとします。

早めに頻繁にコミュニケーションをとる

年間を通して意思の疎通を図ることは今後の展開を確認し、驚きを軽減するもう1つの手段です。Westは年に一度レビューのための面談を行う契約をしていますが、新規顧客には半年後に電話をかけ郵送した評価報告書を見たか確認しています。もし見ていなければ電話で報告書の内容について話し合います。

GrantはVIPの顧客とは四半期ごと、Aグループの顧客とは半年ごとに面談しています。この2つのグループは年間収益の4分の3を占めています。VIPとのレビューでは第1四半期は目標に注目し、第2四半期はリターンに焦点を当てリスク許容度を再検討し、第3四半期は税務戦略、第4四半期はリスク対策について話し合います。

「お客さまのためにやるべきことをしっかりやっているので、苦情や電話を受けることはあまりありません」とGrantは言います。

良い関係を築き、現実と期待を一致させるためには何度も面談を重ねる必要があります。見込客を顧客にするために6回以上のセッションが必要だとしても、Kestleからすれば彼の言う絆銀行に信用(クレジット)を積み立てる機会がもっと多くなるだけです。

「お客さまの側に不満があるとき、話し合ったことや承諾したことを思い出していただくために蓄積したクレジットを活用することができます。お客さまとの関係を構築するのに長い時間をかけた方が、プロセスを進める上で有利になることもあります」とKestleは語りました。

CONTACT

Douglas Grant douglasgrant2@financialguide.com

Jonathan Kestle jonathan@ianmoyer.com

Priti Kucheria priti@kucheria.co.in

Elke Rubach elke@rubachwealth.com

Scott Thompson sthompson@dpainsurance.com

Helen West helen.westfm@gmail.com