4 25 2022 / Round the Table Magazine
情熱と目的そして仲間たち
対象のトピックス
金融サービス業界での最初の数年間は恐れや疑問、さらにプレッシャーで仕事が重圧となりがちです。しかし経験を積み自信が付いてくるにつれ負担は軽くなり、多くの人は生き残って成功します。新入社員だったJohn F. Nichols, MSM, CLUはこのビジネスに携わることに胸を躍らせましたが、失敗を恐れるあまりチャンスをつかむことができませんでした。やがて彼は恐怖に立ち向かい、顧客数を増やしスペシャリストとしての自信を持ち、これまでにない成功を手に入れます。しかしある事情からキャリアを築き直す必要が生じて自分の会社を立ち上げたとき、再び以前の心細い心境に戻ってしまいました。2度目の挑戦が一度目と違っていたのはミッションを達成するためにあらゆる努力をしたこと、他社の強みと自分の強みを組み合わせることで最善の道が開かれるのを実感できたことです。
Nicholsにとって学習と変革に終わりはありません。イリノイ州シカゴの22年間MDRT会員は自分のやり方で再出発してから20年後、ビジネスとサービスの次の章へと歩みを進めています。経験に裏打ちされた強力な基盤を生かし、MDRT役員会メンバー予定者となることを快諾しました。
「最初の頃は非常に消極的でした」
父親が大手銀行の重役で兄弟が8人もいると、仕組みやプロセスといった事柄は普段の生活の中で自然に身に付くものです。「想像できると思いますが、わが家ではいつもちょっとした事件が起きていました」とNicholsは言います。大家族ということで夕食は毎日きっかり午後6時に始まり、幼いときから全員が家事を手伝い、成長してからは夏休みにバイトをしてお小遣いを稼ぎました。このような生い立ちと私立学校での体系的な教育により、Nicholsは高い労働倫理観や学ぶことへの愛着、リーダーシップ、人のために尽くすという精神を育むことができました。
大学を卒業して故郷のミネソタ州でラジオ広告を販売する仕事に就きましたが、程なくして地元の保険代理店の店長からスカウトされます。1984年の夏に広告の仕事を辞めて金融サービスのキャリアをスタートさせました。
「私は高い勤労意欲を持っていますが、最初の頃は非常に消極的でした。周りが思うより内向的で、いろいろ考え始めると本来やるべきことができなくなるのです」とNicholsは言います。顧客数をなかなか増やせないまま代理店勤務を3年続けた後、大都市の方が見込客の絶対数が多いと考えシカゴに移りました。
振り返ってみるとNicholsには断られることに対する恐れという弱点があり、それはシカゴでも尾を引いていました。電話をかけてアポイントを取るには恐怖心を克服する方法を編み出す必要がありました。その弱点から解放されるカギとなったのがBill Grimesによるcall reluctance programというものでした。Nicholsは新しい視点と戦術を取り入れ、顧客基盤を築いて生産性を上げました。恐怖心の克服に加え、もう一つ成功のカギとなったのは専門の高度障害所得保険です。シカゴの代理店に入社したNicholsは高度障害の専門家からメンタリングを受け、その道に進むことにしました。専門分野を絞った結果、自信が付き好機へのドアが開かれます。アメリカ医科大学協会は医学生のためのHIV感染者用プログラムを画策しており、Nicholsはプログラムの開発と普及に携わり2年以内に60の医科大学のうち38校をクライアントにし初めてMDRT入会資格を獲得しました。
しかしプロとして軌道に乗り始めた頃、Nicholsは水上スキーの事故で首から下が麻痺してしまいました。医師からは二度と歩けないかもしれないと言われ、実際に回復するまで6年に及ぶリハビリが必要でした。身体機能を戻すことに専念する間、多くの医科大学を含むクライアントはいつの間にか他のアドバイザーの元へと去っていました。
この想定外の出来事はNicholsを新たな方向へと導きました。身体の健康が安定すると中立的な立場の専門分野に特化したエキスパートとして再出発する決意を固め、1999年にDisability Resource Groupを設立します。ビジネス用の口座に$1万の貯金と従業員に払う給料しか残っていませんでしたが、やる気は人一倍ありました。「パッとしないオフィスでも平気でした。小規模なスタートでしたが、自分たちのミッションを実現することが楽しくて気になりませんでした。このようなことを行っているときは目的意識がとても強いので、他のことはどうでもよくなってきます」と語りました。
Nicholsのビジネスは自分ひとりが行ってきたサービスの再現と拡大を目指すことで、より大きなチームを構築して成長しました。経営者として必要なリソースを供給しチームや技術力、オフィス環境を継続的にアップグレードしました。「別の角度から考えるようになりました。私は基本的に商品、解決策、サービスを提供する機会を作り出しています。そこからビジネスや収益の流れが生じ、品質をさらに向上させることができました」
その後コート・オブ・ザ・テーブル、次いでトップ・オブ・ザ・テーブルを獲得し、それは今に至るまで続いています。しかしNicholsは来年も同じことが起きると思わないようにしています。「1月1日になると私の成績はゼロになるので皆さんと同じように不安です」と述べました。
所得補償保険に特化したNicholsの事業は案件の約95%が他の専門家から来ます。このようなビジネス手法は、生き残るために必死で顧客基盤を築こうとしていた新人の頃とは全く異なります。現在Nicholsは他のアドバイザーのサービス向上を手助けし、一緒に成果を出すことでWin-Winの関係を築いています。「仲間を助けることを意識すればビジネスはずっと簡単になります」と語りました。
「この業界とMDRTが私を形作った」
Nicholsはこの仕事に就いたときからMDRTの価値を理解しているつもりでした。会員になるのは名誉なことで、さらに前進するために自分より成功しているアドバイザーから継続的に刺激を受けられることは知っていました。しかしMDRTとの関わりがその後の自分という人間に与える影響についてはまだ気付いていませんでした。
初めてのボランティアは他の会員から誘われたことがきっかけです。2004年のアニュアル・ミーティングで初めて講演を依頼されたれた際、スピーカー・リエゾンを担当してくれたボランティアはプレゼンテーションを改善するために本番前に時間を割いて助けてくれました。この経験によりNicholsはMDRT会員ボランティアの無私の奉仕と活動を知り、それが自分自身の行動基準になりました。
小規模なスタートでしたが、自分たちのミッションを実現することが楽しくて気になりませんでした。このようなことを行っているときは目的意識がとても高くて、他のことはどうでもよくなってきます
MDRTのメンバーシップが提供するものを本当の意味で体験することは会費以上の価値があります。「探し求めているものに手を挙げるかどうか、参加するかどうかは自分次第です。ボランティアすることで仲間と出会い、学んだり成長したり共に楽しんだりすることができます。少なくとも180人のMDRT会員が私という人間そして私の成功に貢献しました。その数は増え続けていて、それがMDRTマジックです」とNicholsは自分が関わる仲間の会員、ボランティア、メンターひとりひとりを思い浮かべながら語りました。
Nicholsの業界におけるリーダーシップはNAIFA(全米保険ファイナンシャル・アドバイザー協会)の地元支部で活動するようになった1980年代にさかのぼります。後にシカゴ支部の支部長を務め、2013年には全米支部の会長に就任しました。
2010年からはMDRTのチャリティー部門を積極的に支援し、MDRT Foundationの活動に参加しています。地域社会で支援を求めている組織をサポートすることを他のMDRT会員と共に支えています。奉仕活動への参加は高校時代に学んだサービス精神に基づくリーダーシップという概念を呼び起こし、組織の影響力を一層拡大することにつながりました。そして2021年9月にはMDRT Foundation会長に就任しました。
MDRTの貴重な経験は本業をより効率的に進める助けになりました。ビジネスでの成功もさることながらNicholsは自分自身の成長にも注目しています。「MDRTを通して成長すればするほど、より良いプロデューサーそしてホール・パーソンに近づいていきます」と語りました。
「自分より大きなものの一部であること」
1999年にたった2人から始まったビジネスは変化を遂げ、現在は20人のチームへと成長し、就労不能に対する保障サービスのリーダー的存在になります。2017年にNicholsは自分とチームとビジネスを新たな軌道に乗せる好機を見いだし、Disability Resource Groupを収益化して大手保険仲介会社の株主パートナーになりました。この動きは事業継続のプランを固め、スタッフのチャンスを増やすことに貢献しました。
Nicholsは現在も創業者としてビジネスをコントロールし一部のお客さまを担当していますが、日々の業務は後継者に任せ自分は戦略を練ることに集中しています。Nicholsの大局的な視点は変化する世界にビジネスを適応させることを可能にしました。彼はより大きな組織の中でさまざまなイニシアチブをとり存在感を増しています。「重要な人間関係や戦略上の好機にフォーカスできるのはうれしいことです。私は自分より大きくて自分とチームに報いてくれるものの一部を担っているのです」と語りました。
情熱、目的、仲間たちというコンセプトは人生のあらゆる分野に浸透しており、MDRT役員会の一員という新たな旅路においても踏襲されます。
NicholsはMDRT会員として成功している先輩からビジネスを学び、メンタリングを経験し、リーダーとして成長するという恩恵を受けてきました。その経験をもとに、MDRTを未来へと導くチームの一員となる準備はすべて整っています。
「短期的なニーズは常にありますが、MDRTがより長期的なインパクトを与えられるようにしたいと考えています。この組織やビジネス、家族やコミュニティ、その他いろいろなもののライフサイクルを延ばすことに長期的にフォーカスし、それを実現するための施策を進めていきたい。それが私の考え方です」とNicholsは語りました。
生涯学習を実践しているNicholsは他の役員会メンバーの意見を拝聴し観察し、学ぶことを楽しみにしています。このグループはMDRTを通し各地域で価値を提供しながら、グローバルに活動するためのさまざまな取り組みを行ってきました。Nicholsはこれまでの経験から一歩踏み出し、5人で構成されるリーダーシップ・グループの一員としてグローバル・メンバーシップの広々とした景色を眺めることにワクワクしています。とはいえ、各会員の経験には共通するものがたくさんあることも認識しています。
「存じ上げない会員はたくさんいますが、私も皆さんと同じ経験をしてきました。困難に立ち向かい、恐れを抱き、やっていけるかどうか不安でした。誰も取り残すことがないようにしたいと思っています。私たちの円卓にはすべての人のための席があります」