さまざまな賞のシーズンです。その中でもオスカー像で知られるアカデミー賞は別格です。大きく光り輝くスターが一層の輝きを放つ夜であり、誰がどの賞を得るか、最優秀賞は誰が勝ち取るかに多くの人が注目しています。「では封筒を開きます。勝者は…」とステージの司会者にも会場にも緊張が走ります。候補者全員が自分の名前を呼ばれるかもしれないという期待で息を殺して発表を待ちます。オスカーを受賞すると箔が付きます。一方、そこまで有名ではない Golden Raspberry Awards 別名ラジー賞というのもあります。オスカーのパロディーで誕生したその年最低のシネマを表彰するものです。そんな賞を欲しがる人がいるのでしょうか。

倫理綱領を守るアドバイザーはオスカーの候補者として映画の主演を任されます。

私たちの業界にも金星のように輝く優勝者がいます。例えば、管理資産が一位の方、保険料が1番だった方、COTやTOTを獲得した方などです。しかし、大きい案件を狙っているとどこかで私たちの倫理綱領を完璧に遵守できない事態が発生しがちです。MDRTの倫理綱領は最高水準の倫理観をメンバーに求めています。いくつかのシナリオを紹介しますので、皆さんがオスカーを受賞できるほどの倫理観を維持しているか、それともラジー賞がふさわしいかを審査してください。

精神的に不安定な状態のお客さま

ある日、最近奥さまを亡くされた高齢のお客さまが、友人のために使いたいので$1,000を投資資産から引き出したいとアドバイザーに申し出ました。2週間後にその方からもう一度連絡があり、ご友人のために今度は$10,000を引き出したいとのことでした。アドバイザーは心配になったので、そのお金を提供するご友人について質問すると、どうやら同じ方だということが分かりました。

そこでアドバイザーはクライアントのご兄弟（信頼できる連絡先）も同席の上で実際にお会いして書類にご記入いただく必要があると答えました。お客さまに詳しく話を聞いてみると、送金先の友人というのはデートアプリで知り合った海外にいる会ったことのない「友人」だということが分かりました。アドバイザーが一歩踏み込んで質問をしなければ、お客さまはもっとお金を失っていたかもしれません。

このアドバイザーはお客さまの最善の利益のためにベストなパフォーマンスを発揮したのでオスカー賞を獲得できます。おそらくMDRT会員でしょう。お客さまの言う通りに送金の手配をして、詐欺を成立させたアドバイザーはラジー賞を受け取ります。お客さまがどのようにお金を使うかに口を出すのは難しい部分もありますが、専門家として注意していなければいけないことでもあります。

道徳的責任

ファイナンシャル・アドバイザーとして私たちは常にお客さまにとっての最善を考え取扱商品を熟知し、その商品の適正評価をする責任があります。しかし、私たちが持つべき知識は商品に限りません。公的制度や規制の最新情報の把握、免許や資格の維持、納税義務を果たすなどの責任もあります。私たちは高潔部門のオスカー受賞者になるべきで、常に法的にもモラル的にも正しく契約上の義務を果たしている必要があります。ラテン語のignorantia legis neminem excusatすなわち「法の不知は抗弁とはならない」という言葉の通りです。

フィデューシャリー部門の候補

お客さまに「あなたはフィデューシャリーですか」と聞かれたことはありますか？（フィデューシャリー = 受託者。お金を預かる人）最近は業界内でフィデューシャリーという言葉をよく聞くようになりましたが、本当の意味を理解していてください。MDRT倫理綱領の7項目にも法的、倫理的な高潔を求めることが明記されていますし、お客さまの財政、資産、保険をお預かりする以上、信頼できる存在であることは当然です。私たちの倫理綱領は、フィデューシャリーとして求められる基本的な義務よりもはるかに高い水準の倫理を守ることを求めています。MDRTは会員に対して高潔を求めているから存続しているとも言えます。私がメンターに教わったことの一つは、「常にお客さまのために正しいことをしていれば、全てのことは結果的にうまくいく」ということです。倫理綱領を守るアドバイザーはオスカーの候補者として映画の主演を任されるでしょう。

評判を確立する

お客さまに「あなたにとってお金はどんな意味がありますか」と問い掛けると多くの方は自由とか保障という単語を挙げます。それらは金融用語というより感情を表しています。

アドバイザーは将来の自由や経済的な安定を達成することに感情移入しており、これらの目標を達成できるかどうかは評判に影響します。だからこそお客さまの資産を守るように私たちの良い評判を維持することが大事です。倫理水準は当然アドバイザーの評価を大きく左右しますので、MDRT倫理綱領を遵守し、常に正しい行いをすることは理にかなっています。倫理綱領を読み直し、自分の行動は常にオスカー候補にふさわしいかを考えてください。少しでも倫理観が揺らぐとすぐにラジー賞候補になり、行いにも表れてしまいます。

MDRT倫理綱領はMDRT会員としてお客さまのために提供する価値と基準のベースラインです。高い倫理観を維持することで、心穏やかに仕事に取り組み、オスカー賞受賞者にふさわしいサービスをお客さまに提供できるでしょう。

MDRT倫理綱領

MDRT会員は一般の方々と保険・金融サービスの専門家の利益のために、倫理的で高潔な態度で活動することを約束しています。その目標を達成するために Million Dollar Round Table には倫理綱領があります。従って会員は：

1. 常に顧客の最善の利益を会員自身の直接間接の利益より優先させる。
2. 専門家として知識、スキル、能力の維持向上に努め、最高水準の専門的能力を維持する。
3. 顧客の事業上および個人的情報の守秘義務を厳守する。
4. 顧客が十分な情報に基づく意思決定を下すために必要な全ての事実等を完全かつ適切に開示する。
5. 個人としての行動は保険と金融サービスの専門家、そしてMDRTに対して期待される水準を維持する。
6. 保険および金融商品の乗り換え・変更は全て顧客にとって有益でなければならない。
7. 会員の営業免許を交付する管轄地域の法令と規定すべてを遵守する。

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