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人工知能:友か敵か?
人工知能:友か敵か?

11 01 2023 / Round the Table Magazine

人工知能:友か敵か?

AIを活用してコンテンツを作成し、生産性を加速させているアドバイザーがいます。

対象のトピックス

人工知能(AI)は一部の人たちにとっては魔物のような存在で、人類に偽情報や雇用喪失などの混乱をもたらします。Jonathan Peter Kestle, CLU, B ComにとってChatGPTは英語を専攻する大学生のインターンに似ています。

カナダ・オンタリオ州の9年間MDRT会員であるKestleはクライアントと共有するマーケティング報告書の目次を書くようAIチャットボットに依頼しました。しかしリクエストを出す前に自分はオンタリオ州に住む40歳のファイナンシャル・プランナーで妻子がいること、たくさんの農場がある小さな町で小規模の事業を営んでいることを伝えました。さらに単なる退職後に収入が減るカナダ人のためのヒントやアドバイスではなく自分の事業にもっと特化した結果を得たかったので、自分のLinkedIn履歴書をアップロードし事業所の価値提案ステートメントを入力しました。ChatGPTは散文体で即座に回答しました。

骨格を手に入れるためにChatGPTを利用し、次いで骨に肉付けします。
— Jonathan Kestle

「骨格を手に入れるために利用し、目次ができたら骨に肉付けしていきます。例えば第1章第1節としてあるテーマについて500字書くように依頼します。その通りの結果が得られるので後は調整すればいいだけです」と述べます。

Kestleは残りの部分も同じ手順で書き進め、これまで何時間もかけて調査し下書きしていたものがわずか数分で画面に表示されるようになりました。さらに面談のときに書いた箇条書きのメモを入力して議論した内容やお客さまが次にするべきこと、自分が担当する事柄などを要約したお礼メールを書くように依頼しています。KestleはChatGPTのプレミアム・サブスクリプションに毎月20ドル払っていて「AIは英語が得意な言語モデルなので大学で英語を専攻したスタッフに年間5万ドルの給料を払うよりは節約になる」ということです。

生成AIはインターネット以来の大革新としてもてはやされていますが、一方でAI研究者や決定理論の専門家の一部は非常に優れた知能が悪者の手に渡ればどうなるのかを恐れAIシステムの開発を休止あるいは停止することを求めています。また仕事が失われ、生計の手段が崩壊することを懸念する声もあります。AIによって消費者がDIYでポートフォリオや保険プランを立てるようになるとファイナンシャル・アドバイザーの仕事は時代遅れになるでしょうか? それともAIはこれまでにない最高のアシスタントになるでしょうか?

ニューヨーク州の9年間MDRT会員であるTerri Krueger, ChFCは自身の事業を未亡人や離婚した女性の支援に集中することについて地元の雑誌に執筆することになっていましたが、スランプに陥り何ヶ月も筆が止まっていました。そこで彼女は自分が言いたいことの概要を書くようChatGPTに依頼し、回答をひな型にして加筆と編集を繰り返して自分自身の文へと形作っていきました。

「約20分で記事を編集し完成させました。ChatGPTは大幅な時間の短縮になりますし、一から始めるプレッシャーからも解放されます。私だけでなく雑誌の編集者も本当に気に入っています」と語りました。

AIはトレーニングの補佐をすることもできます。Panos Leledakis, LUTCFはAIを使ってロールプレイを行い、クライアントの断りへの対処法を練習しています。ChatGPTに保険商品を購入しない人の断りを何十通りも出すように依頼し、チャットボットと行ったり来たりの議論を交わしています。フロリダ州マイアミのMDRT会員5年目になるLeledakisはバーチャル・リアリティ(VR)ヘッドセットを使って大統領執務室や宇宙ステーションのセットでクライアントとオンライン会議を行う取り組みの先駆者ですが、今度はVRベンダーと協力して、仮想会議を通じてアバターの顧客と会話できるようアドバイザーを訓練するプログラムにAIを組み合わせようとしています。またAIとVRのようなプログラムを組み合わせ、人前で話すことが苦手な人が仮想の聴衆の前で練習できるようにすることも考えています。

「AIがファイナンシャル・アドバイザーに取って代わるとは思いません。AIは見積もりを早く作ったり複雑な試算を単純化したりできるので、自動車保険や火災保険のようなシンプルな商品は扱えるかもしれません。しかしお客さまと直接お会いし、教育し、安心できる関係を築くことはできません。お客さまには困難なときにそばにいて助けてくれる人が必要なのにAIにはそれができません。それでもAIを利用すれば新しいテクノロジーを取り入れないアドバイザーより有利になります」とLeledakisは述べます。

AIとは何か?

AIとは1950年代から何らかの形で出回っており、ほとんどの消費者は顧客サービスサイトのチャットボットやSpotifyのようなデジタル・プロバイダーが予測する音楽プレイリストを通してこのテクノロジーに接したことがあるはずです。最近話題になっているのは生成AIという機械学習の一種で、ユーザーから送信されたプロンプトと呼ばれる命令に反応して質問に答え、文章を要約し、コンピューター・コードを書くといった言語処理タスクを行います。

大規模言語モデルあるいはGPT(事前学習する生成的な変換器)は膨大なデータで訓練されたニューラル・ネットワークです。2018年に作られたGPT-1から2023年3月にリリースされたGPT-4に至るまで代々のモデルは増え続ける膨大なデータセットで訓練され、人間が作成したように見えるコンテンツを作る能力は指数関数的に向上しました。OpenAIが作ったChatGPTはGPT3を使用した最初の一般利用可能なチャットボットです。より強力なGPT4バージョンは有料のサブスクリプションで利用できます。他の生成AIチャットボットにはGoogleのBard、MicrosoftのBing Chat、AnthropicのClaudeとClaude2があります。いずれも多言語で利用でき今後も続々と登場する予定です。

オレゴン州の13年間MDRT会員であるTimothy Daniel Clairmont, CFP, MSFSは「質問を入力するたびに最初から検索し直すGoogle検索とは異なります。ChatGPTではGoogleのように質問することから始めますが、1つ目の質問の続きで2つ目の質問をすると1つ目の回答に基づいて回答してくれ、それをずっと続けることができます。ChatGPTは実際の人間がするように会話を構築していきます」と説明しました。

AIアバター

Clairmontはより良いポッドキャストの題目を見つけるためChatGPTのプロンプトにリスナーの指標を入れ、その聴衆の間でトレンドになっている金融サービスのトピック上位10個を尋ねました。この作業により彼は時間を節約しホットな話題を推測することができました。

彼のAIを使った壮大な計画はパートナー企業と協力して彼の外見と声を持つアバターによる双方向性の3Dデジタルクローンの試作モデルを作ることです。このアバターはウェブサイト上に存在し、コンピューターのマイクとスピーカーを通してビジターが選んだ言語で会話をします。これにより画面のボックスに質問を入力するより人間らしい対話ができます。

アバターはウェブを相互参照しながら金融サービスに関する彼の専門知識をデータから引き出し、消費者からよく寄せられる次のような質問に答えます。「今から退職までに100万ドル貯めるには毎月どれくらいのお金を定期的に貯金するべきか?」「自動車ローンの適切な金利は?」「個人年金勘定のRothと従来のIRAの違いは何か?」人間のアドバイザーからの回答が必要な場合、アバターは専門家に相談するよう消費者に指示することもできます。

「私の壮大な計画は10億人にお金に関する教育をすることです。そのためのウェブサイトを作りました。サイトに私のAIを配置すれば、ユーザーは質問してお金について役立つことを学び、その10億人の1人になることができます。ライセンスを取得してコンプライアンスを遵守して再現できれば、他のアドバイザーと共有し彼らの顔や声を彼らのウェブサイトに置くことができるかもしれません」とClairmontは述べました。

ClairmontのAIを使った壮大な計画はパートナー企業と協力して彼の外見と声を持つアバターによる双方向性の3Dデジタルクローンの試作モデルを作ることです。

LeledakisはAIのおかげで電子書籍やその他のマーケティング・コンテンツを手際よく作成できるようになり、それをソーシャル・メディアで宣伝・配布した見返りに見込客として数百件ものメールアドレスを得ています。

「秘訣は見込客にとって有益な記事や動画などを少なくとも週に1回は投稿することです。価値があるものを提供すると見込客はメールアドレスを提供しメールリストは増えていきます。まず市場を育成し、次にウェビナーに招待します。話の最後に私にアポを取りたいか尋ねます」とLeledakisは述べました。

またリーズ生成動画を作るときは実際の情景を撮影する必要がないデジタルクローンを使っています。コンテンツの作成はAIにZ世代と保険に関する短編動画を作るためバズりそうな話題を10個見つけるように依頼することから始まります。AIは「あなたの未来を守る」「あなたが知らなかった珍しい保険」「予算に合った保険」といった見出しを回答します。次に1番目の話題について2分間の台本を書くよう指示します。チャットボットの回答には台本に加えて冒頭のセリフの提案も含まれており、もっとフォーマルにとか、フレンドリーにとか、ユーモラスにと指示して微調整することもできます。

今度はアバターの出番です。台本をテレプロンプターに写しウェブカメラで自分の動画を撮ることもできるし、AI動画生成サイトのsynthesia.ioを開いて台本をアップロードし140人のアバターのひとりを選んで読ませることもできます。あるいは自分で5分程度の文章を読んでいるところを録画すればSynthesiaが声と表情を似せたLeledakisのアバターを作ってくれます。映像素材や字幕を含む完成した動画は数分で投稿できるので、Leledakisは付加価値を高める活動の追及やクライアントとの打ち合わせにもっと時間を割くことができます。

AIのおかげで時間を短縮できた活動は他にもあり、例えば長いYouTube動画をTikTokやInstagramに投稿するためにAIが20秒の短編動画に分割したり、ソーシャル・メディアの投稿を書いたり、グラフィック付きのパワーポイント・プレゼンテーションを作成するときはAIに発表したい内容の要約と必要なスライドの枚数を指示します。

最近LeledakisはAIと自分が発明したリスク分析ソフトウエア(個人や企業が直面するリスクに優先順位をつける)を組み合わせました。このソフトは保険数理データと人がどのようにリスクを認識し、意思決定を行うかについての神経科学研究を融合させたものです。以前Leledakisはお客さまと40分かけて面談し、保障範囲のギャップを明らかにするためにどのような資産、収入、保険を持っているのか質問していました。現在はお客さまをAIチャットボットへと案内し、数分間で完了する10個に絞り込んだ質問に答えてもらっています。回答はソフトウエアに入力され数分でお客さまのリスク・プロファイルが生成されます。AIコンポーネントを追加することによりLeledakisはお客さまとの最初の面談でファクト・ファインディングに時間をかける代わりにリスク管理ソリューションの提案に専念できるようになりました。

「この技術は世界中で拡大しておりゲーム・チェンジャーになると思います。世界各国の多くのアドバイザーからAIがアドバイザーに取って代わるのではないかと聞かれます。私の答えはNoです。しかしAIを活用するアドバイザーはそうしないアドバイザーに取って代わるか、少なくとも競争優位性を大いに高めるのではないかと思います。AIは急速に進歩しています。産業革命は50年以上かけて抜本的な変化が起きました。インターネットは11~20年で成長しました。AIはここ3~4年で成長するので、適応しないアドバイザーはインターネットを導入しないでメールを秘書に印刷させる管理職のようになりそうです。近い将来、私達は2023年以前の時代とAIが世に出た後の時代を区別するでしょう」とLeledakisは語りました。

AIによって思考力、指導力、実行力が進化するのを拒否すれば、私たちの役割(職務)は他に取って代わられる恐れがあります。しかしAIを活用すれば今の職務から一歩前に出てリーダーの役割を担うことができるでしょう。
— Josh Hotsenpiller

何が脅威となるか?

ゴールドマン・サックスの報告書では今後10年間で世界全体の18%にあたる3億の正規雇用の仕事、特にホワイトカラーの仕事が自動化される可能性があると予測しています。一方で世界経済フォーラムはAIが2025年までに9700万の新しい仕事を生み出すと主張しています。私たちはAIに対する警戒心や驚きの間で揺れ動くかもしれませんが、AI導入論者のJosh Hotsenpillerはこのテクノロジーに対するひとつの理想的なアプローチはAIと協力し検証すること、ただし依存しないことだと言います。

オンデマンド・デジタル・プラットフォームを提供するJUNO社の社長であるHotsenpillerは「AIによって思考力、指導力、実行力が進化するのを拒否すれば、私たちの役割(職務)は他に取って代わられる恐れがあります。しかしAIを活用すれば今の職務から一歩前に出てリーダーの役割を担うことができるでしょう」と語りました。

ChatGPTは弁護士試験や大学入試試験に合格したことでメディアの注目を集めましたが、TaxBuzz(独立系税務・会計専門家向けのオンライン・リスティングサービスおよびニュース・ポータル)が米国の税務政策について質問した際は100%不正解でした。AIは言語を理解するというよりむしろアルゴリズムを使って指示に論理的に従う単語やフレーズを予測しており、その出力は常に改善しています。AIは真実の発言と虚偽の発言を区別するよう訓練されていないため事実誤認することがあります。

「アドバイザーは税務や法律に関するアドバイスとの一線を踏み越えないように注意する必要があります。ChatGPTは注意を怠らせ不適切なアドバイスをさせてしまう可能性があります。個人的にGPTは多くの用途に使える素晴らしいツールだと思いますが、お客さまにアドバイスするときに働く人間的な感情を計算に入れることはできません」とKruegerは言います。

注文を取るだけの平凡なアドバイザーはAIに取って代わられるでしょう。またAIを使うアドバイザーはそうでないアドバイザーに取って代わるとClairmontは言います。

「ほとんどのお客さまは何を頼めばいいのか分からないし、AIの方も何をするべきかお客さまに教えてあげることはできません。アドバイザーはここに価値を付け加えます。お客さまをやるべきことに導き、確実に実行させる能力で差別化を図ることができます。その過程でAIは大きな資産になり得ます」と説明しました。

AIを活用した今後のスキルセットは商品知識よりも創造的な質問になるとKestleは言います。「どのみちアドバイザーは本当に良い質問をする方法を習得しなければなりません。私たちは問題を分析し解決策を提案するためにお客さまと会い、ファクト・ファインドを行ってお客さまがどのような状況に置かれているのかを知る必要があります。それは今後の私たちの強みになるでしょう」

Kestleのオフィスにとってもう1つの強みは来年の夏から週4日勤務になることです。「ChatGPTだけでなくさまざまな理由で生産性が向上しています。パンデミックを通して在宅勤務が可能になりデジタル・ファイリングと電話システムが導入され、さらにAIが言語ニーズを助けてくれたことで生産性が向上しました。短い時間で多くのことができるようになったのですから、皆で共有して家族との時間を増やし健全なビジネスを行おうではありませんか」と語りました。

CONTACT

Timothy Clairmont timmdrt@clearfp.com
Jonathan Kestle jonathan@ianmoyer.com
Terri Krueger terri.krueger@lpl.com
Panos Leledakis pan@ifaacademy.eu