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透明性をもってリード
透明性をもってリード

1 02 2024 / Round the Table Magazine

透明性をもってリード

現場は一次査定として面倒で時間のかかる仕事もありますが、ていねいな事前作業はお客さまに対しても保険会社に対しても差別化につながります。

対象のトピックス

ファイナンシャル・アドバイザーになるための訓練では見込客を見つけて説得する方法、どのような保障が不足しているのかを発見する方法、成約に繋げる方法などを学びます。しかし多くの場合、研修プログラムには現場での引き受け査定(フィールド・アンダーライティング)に関する講義は含まれていません。

ルイジアナ州ニューオーリンズの40年間MDRT会員で元MDRT会長のJulian H. Good Jr., CLU, ChFCは「引き受け査定について教わったことはありません。それは試行錯誤の連続でした。まずはその仕組みに興味を持たなければなりません。生命保険や所得補償保険、長期介護保険に携わっていても引き受け査定をする忍耐力がない人は別のキャリアを探した方がいいでしょう。非常に多くのアドバイザーがウェルス・マネジメントや投資の仲介に関心を持っているのは引き受け査定が無いからです。クライアントがアドバイザーの推奨する商品やサービスの基準を満たしてさえいれば、商談を進めることができます」と述べました。

現場での、あるいは事前の引き受け査定とは、お客さまが保険会社のリスク許容範囲のどこに位置するかを判断するためアドバイザーが最初に行う評価のことです。客先での引き受け査定業務には労力や時間が必要ですが同時に成約率を向上させ、保険会社からの信頼性を高め、お客さまに合理的な期待を抱かせ、お客さまからの評価を向上させることもできます。

評判を高める

アラブ首長国連邦ドバイの19年間MDRT会員Rickson Joel D’Souzaは「この仕事で初めての大きな案件の必要書類を準備していたら、先輩アドバイザーが関連リスクの度合いをアンダーライター(引き受け査定者)が理解できるようにするべきだと言いました。私たちの多くがアンダーライターは少しでもリスクの可能性があると口を挟んでビジネスを妨げる存在であると見なしていますが、先輩は私たちこそ現場のアンダーライターであることに気付かせてくれました。私たちの仕事は彼らの目と耳になって加入を申し込んでいる方を見ることです。医務査定者が見ることができるのは申込書類だけだからです」と述べました。

最終的に自分の案件を台無しにしかねない人物の目となり耳となることは保険販売で報酬を得ることと相反するように思えますが、保険会社の査定者から確固たる評判を得ることは長期的に見て利益になります。D’Souzaは1年目の新人のときに評判がどれほど重要かを思い知らされました。小中学校でクラスメートだった友人の父親の依頼で100万ドルという当時の彼にとっては高額の保険をお預かりしたときのことです。そのお客さまは3ヶ月後にがんで亡くなり、D’Souzaはお客さまがご自身の病歴を隠し、化学療法を受けたばかりなのに告知していなかったことを知りました。

「私は全くの初心者で深く考えていませんでした。残念なことに保険会社は私がその息子と同じ学校に通っていたことから私も不正に加担していたのではないかと考え、あたかも私が犯人であるかのようにこの件以後の私の申込書類は細かい点に至るまで精査されるようになりました」とD’Souzaは言います。

それ以来彼はチームのリサーチ・アナリストに入手可能な記録やSNSを調べてもらい、お客さまについて報告してもらうなど徹底したプロセスでお客さまを吟味することにしました。その情報をもとにお客さまとの面談のための質問事項を準備し、調査で明らかになった事実をお客さまが開示しないことを未然に防ぎます。例えばインスタグラムに14台のポルシェ・カレラのコレクションの前でポーズを取っているクライアントには、レーシングカーのドライバーですか? スピード違反の切符を何枚も切られてはいませんか? と質問します。このプロセスは絶対に確実というわけではありませんが、少なくともアンダーライターはD’Souzaが可能な限り多くの情報を提供しようとしていることを理解してくれるはずです。

「コミッションは重要ですが、成約に至らなかったらまた別のお客さまを見つければいいのです。しかしアンダーライターの信頼を失えば選択肢は限られてしまいます。職務明細書にあるように私たちの仕事はお客さまを探すことです。しかし不注意や倫理観の欠如、情報開示の不履行によって評判が悪くなり保険会社の協力が得られずに提供できる商品が無くなったらどうですか。保険会社に信頼されないと非常に多くのものを失うことになります」とD’Souzaは語りました。

引き受け査定をコントロールする

David Eric Appel, CLU, ChFCは見込客を見つけ生命保険が仕事や家族にとって重要であることを理解してもらうこのビジネスの他の部分、つまり正式な申込書類が提出された後のバックオフィスでの引き受け査定が無視されることが多すぎると言います。

マサチューセッツ州の27年間MDRT会員であるAppelは「お客さまに保障内容を示したりもっと詳しく説明したりする前にまずこの部分に取り組みたいと思っています。生命保険の募集で見込客と2回、3回と面談しても、その方の病歴すら把握していない募集人がいます。すると見込客は無保険になったり、話していた保障範囲が無意味になるような査定を受けて時間を無駄にすることになりかねません」と述べます。

フィールド・アンダーライティングはAppelにある程度の引き受けプロセスの管理を可能にしました。まず初めてのお客さま向けのアンケート(社内では通称危険信号アンケート)を行い、病歴、運転歴、喫煙歴、薬物やアルコールの摂取、リスクのある趣味や職業、処方薬、犯罪歴について尋ねます。事前に危険信号を見つけることで、後になってアンダーライターが不適切な点を発見して却下する可能性が低くなります。医療記録で要精密検査と記載してあったのにまだ受けていない場合、Appelは推奨された検査は済ませるようクライアントに促します。糖尿病や睡眠時無呼吸、スピード違反の切符など回答の結果でリスクが明らかになった場合は、どの保険会社のどの商品を利用するか暫定的な保険申請をします。申請の際はクライアントの経歴や医療記録、最近の治療によってリスクがどの程度改善したかを説明する手紙を添付することができます。Appelは仮査定のために進んで保険会社に情報を提出します。それによってクライアントの情報が保険会社が文書化する米国とカナダの保険会社が使用する情報交換データベースの顧客プロフィールに記録されることもありません。

その申請で3社が保険を断り、2社が標準的な査定結果を出した場合、Appelは保険引き受けプロセスをさらに細かく管理できるようになります。その査定結果から、お客さまに最適な商品や解決策、保険の正確なコストを示すことができるようになるからです。

「余計な時間はかかりますが、保険会社もその案件を引き受けたいなら正式な申請の前に医務査定を受けることを承知しています。ファイルが戻ってくるとそこにはこう書かれています。『申請書を検討しました。特に問題がないと仮定し、該当の暫定的な申請を終え、正式な申し込みと医療記録のさらなる審査を許可します』その保険会社に申請書を提出すれば95%の確率で引き受けてもらえます」とAppelは語りました。

Goodは予備的な引き受けプロセスを調査報道記者の仕事に例えます。お客さまの職歴を尋ね、収入が安定しているのか増えているのか減っているのか確認します。また過去2~3年分の納税申告書を出してもらい、個人の貸借対照表を見てお客さまの財務状況を把握します。「個人的なニーズであれビジネスに関連した保険であれ資産税対策であれ、納税申告書の読み解き方を理解している人は非常に優れた専門家だと言えます」

綿密な健康履歴を得ることと詳しい既往症の情報は引き受け査定の重要な部分です。学生時代から成人後のさまざまな時期の身長、体重、食生活、運動量をお聞きします。この情報はその人がどれだけ自分自身を大切にしてきたかを知るのに役立ちます。また、Goodはブローカー・ディ―ラーとの関係を通して専門家による医務査定にもアクセスできます。8社もの中核的な生命保険会社と提携しているため、特定のケースに適した保険会社を選ぶことが可能です。

「保険引き受けおよびケース管理チームと真の協力関係を築くことができたのは幸いでした。彼らは、重要に見えるか見えないかに関わらず私が全ての案件に対して最良の提案をすることを理解しています。医療記録や調査報告書に納得できなければ何度も見直してもらいます。必要があればお客さまや主治医にさらなる協力を求めます。お客さまに正しい対応をするため、できることは何でもします」と語りました。

人によっては関係ないとさえ思えるような情報を過剰なくらいに追加します。私はアンダーライターがお客さまを一人の人間として見ることができるような絵を描きたいのです。
— Rickson D’Souza

カバーレター

プロセスで最も重要なのはカバーレターです。保険会社の医務査定者は氏名や生年月日、住所やその他のデータが記載された何千もの申込書に毎日目を通しています。カバーレターは特に判断が難しい深刻な健康状態にある人の情報や数字を人間味のあるものにすることができます。

「カバーレターは生命保険の必要性と被保険者・申込者がどのような人物であるかを説明するものです。特に引き受けに問題があると思われる案件ではカバーレターにストーリーを含めることがお客さまを代弁する上で非常に重要です。目的は敵対するのではなく協力したいと思っていることを医務査定者に感じてもらうことです」とGoodは言います。

D’Souzaにとって良いカバーレターとは申請書だけでは知ることができない被保険者の姿を描いたものです。お客さまやその人生、家族や通っていた学校、さらに出会った経緯についても書くことにしています。

「人によっては関係ないとさえ思えるような情報を過剰なくらいに追加します。私はアンダーライターがお客さまを一人の人間として見ることができるような絵を描きたいのです」とD’Souzaは言います。

カバーレターではリスク要因についても正面から向き合います。D’Souzaのクライアントは脳卒中で倒れた父親を見舞うため中東の国を定期的に訪れていました。保険会社1社は加入を断り、他の2社は政治的紛争でリスクが高いと判断された国への渡航中は対象外とする条件が付きました。D’Souzaはクライアントが父親に会いに行くのは1年に80日間だけなので追加保険料を求めるべきではなく国別免責条項を付けるべきではないと主張しました。渡航の頻度と期間を証明するためにクライアントのパスポートを自発的に提出したところ、ある保険会社はカントリー・リスク評価や国による除外のない超優遇レートで保険を引き受けてくれました。

またD'Souzaは腎不全の可能性を示すクレアチニンの検査値が高かった43歳のお客さまのために生命保険会社3社に保険の引き受け査定を依頼しました。その点以外は健康に問題がなくD’Souzaはその方がいかに食事に気を付けているか、つまり決まった時間に食事をし、プロテインのサプリメントを摂取し、有酸素運動と筋力トレーニングを定期的に行っていることを報告書に書き、クレアチニン値が高い理由について医師の説明を添えました。保険会社2社は保障を断りましたが1社はさらに深く掘り下げて質問をしてきました。最終的にその会社は3年後に健康状態を見直すことを条件にわずかな付加保険料で保険を引き受け、3年後に通常の保険料に下げる可能性まで示しました。

「態度を決めかねていた保険会社を納得させることができたということは、保険会社がシステムやプロセスに従っていても人間が介入する余地がまだあるということです。私の書いたものがそれを読んだアンダーライター3人のうちの1人に理解してもらえたのは、以前このような状況に対処したことがあったからかもしれません」とD’Souzaは語りました。

申込者にレッドフラッグ(危険信号)がある場合、答えないことで問題を回避する代わりに透明性を保てば医務査定者はアドバイザーが提供する情報をより信頼するようになります。
— Curtis Keehr

保険に加入できない人を引き受ける

保険リスクは優良体と特別クラスのレート間のどこかに属しています。しかし糖尿病や高血圧その他の疾患がある人は保険に加入できないと思い込んでいるため、自分の状態を明かさなかったり保険を全く求めなかったりします。Shelley MacIntyre, CLU, CHSのかつてのクライアントは重大疾病保険を探していましたが、健康診断で病気が見つかり、保険金は支払われないと考えて保険加入をあきらめてしまいました。カナダの9年間MDRT会員であるMacIntyreはクライアントの病気は保障の対象となる20のうちの1つであると説明しましたが、引き受け査定の手続きに長い時間がかかったためクライアントは苛立ち、自分が加入できる保険はないとやけになりました。

MacIntyreはいつでも対話できるようにするなど別の対処法があったのではないかと振り返ります。そのため現在は自分が売るためではなく助けるためにいることをお客さまが感じられる対話を心掛けています。面談中は健康やライフスタイルについて気楽に話し合い、質問に答えるだけにならないようにします。また追加保険料が発生する場合や謝絶になる可能性があることも伝えているので、それらに該当しなかったときお客さまは大喜びします。

「引き受け査定はかなり時間がかかることもあるので心配しないでくださいとお話ししています。また重要であるか否かに関係なく、基礎疾患について申し込みの段階で詳しく教えてもらえればそれだけ早く引き受けられるとお伝えします。お客さまもそうだと思いますが私は予期せぬことに遭遇したいと思いません。私たちが協力してアンダーライターのためにできるだけ多くの情報を提供していけば、後でがっかりする可能性は少なくなります。代表的な例として先ほどのクライアントの話をすると、お客さまは情報が多い方が妨げになるどころか役に立つということを理解してくれます」とMacIntyreは語りました。

優れたフィールド・アンダーライターになるための秘訣はありません。Goodはアドバイザーが既に持っているスキルを使って質問をし、信頼を得て、お客さまのために良い仕事をしようと最善を尽くせばいいのだと言います。

「こうすれば他のアドバイザーと一線を画すことができます。正しい行動だけでなく関係者全員にとって確実に有益な仕事をするプロフェッショナルとして、世界に通用するアンダーライターになれます。皆さんの適切な仕事がお客さまにとっても保険会社にとっても良いことであれば、それは後に収益となって帰ってくるでしょう」と語りました。

医務査定者に感銘を与えるものは何ですか?

アンダーライターを味方に付けたければお客さまの全体像が分かるようなカバーレターを添付してください。プルデンシャル・ファイナンシャル生命保険引き受け査定部門のディレクターであるCurtis Keehrは「完全な開示があり、有能な現場のエージェントが『この問題を発見し、それに対処しました。これが答えです』と言う場合、それはアンダーライターがより早く回答を出す助けになるので反対されることは少なくなります。事前に全体像を把握できれば、それだけ良い結果が得られます。アンダーライターが望んでいるのはどんな疑問にもすぐに答えてもらうことです」と述べました。

Keehrは申込者の家族の病歴、地域の立派な一員としての地位、どのように事業を成長させたのか、慈善活動などについて書かれたカバーレターを読んできました。そのような情報が満載なのに医療記録に記載されている喫煙状況やその他の注意事項には触れていないものも読んだことがあります。

「私たちは品性や道徳を査定しているのではありません。健康状態や財務状況を査定しているのです。カバーレターは役に立ちますか? もちろんです。財務書類に不明瞭な点があるとき、例えば慈善活動家であることが記されていれば全体像がより明確になる可能性があります。一般的にカバーレターは歓迎されますが、優れたカバーレターの目的は問題にすぐに対処することです」と言います。

申込者にレッドフラッグ(危険信号)がある場合、答えないことで問題を回避する代わりに透明性を保てばアンダーライターはアドバイザーが提供する情報をより信頼するようになります。「正々堂々と勝負すればアンダーライターからより多くの同意を得ることができます」とKeehrは語りました。

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David Appel david@appeladvisors.com
Rickson D’Souza ricksonjoel78@gmail.com
Julian Good julian.good@goodfinancialgroup.com
Shelley MacIntyre shelley@securafinancial.com