予備校経営で鍛えられる
国立大学の教育学部を卒業した榎本会員は、新卒社員として学習塾を経営するベンチャー企業へ就職しました。学習塾で講師や教室運営に勤しむ傍らで、就業間もない23歳にして愛娘の誕生に恵まれました。まだ十分に給与が得られない状況のなか、必死に妻子を抱えながら働く日々となりました。1年がたち、ようやく新しい生活に慣れてきたところでしたが、会社は新規事業として医学部合格を目指す受験生のための予備校を新たに開校することになり、榎本会員は早々にその予備校の取締役として抜擢されることになりました。予備校の新規開校は、生徒の募集から各種帳票の準備など多忙が続き、年に1回か2回しか帰宅できないという状況で「妻や娘にはほんとうに苦労をかけた」といいます。苦労の甲斐あって順調に軌道に乗り始めた新設予備校の開校で、「相当な激務にも耐えられるタフさ」が身に着きました。しかし、3年に渡って激しく走り続けた予備校経営には、区切りをつけたいと思うようになっていました。
コンサルティング会社で大きな挫折
予備校経営をへて、榎本会員は保険会社に入りファイナンシャル・アドバイザーとしての新たな人生をスタートしました。「論理的に思考するタイプではありますが、もともとその場その場での臨機応変なトークが得意なタイプではなく、一般的に営業には向いていない性格かもしれません」という榎本会員は、それを補うように何十通りにも及ぶ想定問答を事前にロールプレイしておき、「相談ごとを持ち帰らない」という姿勢でお客さまと面談していました。「そこそこ」の成績でファイナンシャル・アドバイザーを続けましたが、当時はまだ1度もMDRT登録を実現していませんでした。もしかしたら保険だけでなく、投資や会計、税務などを含めた業務、更にはより垣根を超えた経営コンサルタントとしてのフィールドの方が自分に合っているかもしれないと考えるようになり、8年間に渡る保険会社勤務をへてコンサルティング会社へ転職しました。しかし、榎本会員はここで大きな挫折を味わうことになります。国内トップの大学や海外の大学を卒業した優秀な社員が、早朝から深夜まで働き、深夜帰宅しても翌朝には企画書を仕上げてくるこの世界では、時間を削って必死にキャッチアップもついていけず、プロジェクト中の睡眠はせいぜい2~3時間ほど、能力も体力も限界でした。榎本会員が人生で初めて味わった大きな挫折でした。堕ちてしまった自分はまた下から這い上がっていかなければならない。コンサルティング会社へ転職してから1年足らずで、保険業界へ戻ることを決断しました。
保険代理店への転籍でMDRT登録
榎本会員はわずかな期間でコンサルティング会社を諦め、新たに保険代理店へ転職しました。過去8年間に渡って在籍した保険会社のお客さまは当然、すべて別の担当者へ引き継いでいました。ゼロからの出発です。しかし、榎本会員の実直で真面目な性格が多くの保険会社の商品を扱う代理店と合っていました。榎本会員は取扱保険商品の約款を隅から隅まで読んでから契約締結を行っています。真面目な性格で細部に至るまで徹底的に商品理解を深めるため、複数社の保険商品の細かな違いを正確に見込みのお客さまへ説明できます。こうした商品理解は代理店に所属してこそ真価が発揮されました。榎本会員は保険代理店へ転籍後、初年度の成績で初めてMDRT登録を果たしました。以後6年間で3回コート・オブ・ザ・テーブル(COT)基準を達成しました。以前の保険会社では約380名の顧客を担当していましたが、現在は約840名の顧客を抱えています。こうした商品理解の重要さについて、榎本会員は「『専門家として知識、スキル、能力の維持向上に努め、最高水準の専門的能力を維持する』とMDRT倫理綱領に書かれており、これを当たり前のように履行しているにすぎません」と素っ気なく答えています。
常に顧客の最善の利益を会員自身の直接間接の利益より優先させる
保険代理店では、新たなチャネルで見込みのお客さまと面談する機会が増えました。例えば、マタニティイベントや投資セミナー会場での相談窓口です。相談窓口には、さまざまな悩みをもった人が訪れます。ある時、未就学児と手をつないだ大きなお腹のお母さんが相談に来ました。3歳の子どものために30年以上先が満期の変額保険に加入しているといいます。お腹の子どもが生まれても加入した方がいいですかと問われた際に、榎本会員は、期間については慎重にご検討された方がいいですよと回答し、満期の年数によってのメリットとデメリットを細かく説明しました。「上の子のときはこんなに丁寧な説明をしてもらえませんでした」というお母さんは、その場で榎本会員とお腹にいる子どもの学資を賄うための保険商品の商談を始めたといいます。お客さまのメリットを何よりも優先し提案するという当たり前を実践し続ける実直さを榎本会員は大切にしています。「私は大学を卒業してすぐに親になりました。例えば初任給で高級レストランに行くとか、旅行を楽しむといった自分のためにお金を使う期間が一切ありませんでした。家族を含め常に誰かのために、というまま今にいたるため、良くも悪くも真面目な性格はこうした生い立ちから来ているのかもしれません。『常に顧客の最善の利益を会員自身の直接間接の利益より優先させる』というMDRT倫理綱領を大切に守っていきたい」といいます。MDRT倫理綱領が自然と口にでてくる実直さこそが、榎本会員のファイナンシャル・アドバイザーとしての強みになっています。
Contact: MDRTeditorial@teamlewis.com