私が職域で開催したセミナーで、ある重役からプレゼンテーションがとても気に入ったので個別に相談したいと声を掛けられました。今から5年前のことで当時彼は58歳でした。
最初の面談で、あと2、3年で引退するつもりだと伝えられたため、年金などの財務書類を調べ、彼が勇退するためのプランを作成しました。彼は会社に60歳で引退する意向を伝えましたが、その2週間後、正式な最終出勤日の前に手術不可能な脳腫瘍と診断されました。
その診断が下る前に、一部の生命保険への加入を済ませていたのは幸運でした。しかしまだ全てではなく、プロセスは完了していませんでした。診断が下った後、彼は私に会いにきて「計画変更だ。でもあと2年の猶予がある 」と言いました。
彼は息子さんも含めて家族全員で資産税対策と相続の手配に取り組み、奥さまの生活を保障するために何をすべきかを掘り下げました。奥さまのために介護保険に加入し、あらゆる事態に備えました。奥さまは自宅の庭木の手入れができなくなる日がくると予測し、私はご自宅を売却してマンションに引っ越すことを勧めました。芝刈りをする代わりにふたりで過ごす時間を増やすためです。もう車の運転もできなくなるため愛車のトラックも売却しました。
息子さんは空調設備の会社を経営していましたが、ご両親から9万ドルの借り入れをしていました。そこでその借り入れを計画的に返済するプランをたて、息子さんはそれを実行し、借り入れを完済しました。
介護保険に加え、奥さまのために高額の終身保険に加入していただきました。奥さまにはご主人の雇用主が加入していた団体保険から多額の保険金が支払われる予定だったからです。というのも、ご主人はまだ正式には退職していなかったので、団体保険の被保険者だったのです。最終的に死亡保険金で奥さまの終身保険の保険料を払えたので、2世代先まで遺るような財産を形成できました。まさに的確な戦略でした。
後日、ご夫妻はもう一度プランを確認したいとおっしゃいました。私はスクリーンに全体像を映し出し、チェックリストの項目全てにチェックが入っていることをお見せしました。すると彼は「2万5千ドルの生命保険料はどうやって払うのか、もう一度説明してもらいたい」と言いました。そこで「あなたが亡くなったら、年金の一部を奥さんに割り当てて保険料を支払い、低い税率で税金を払います」と説明しました。彼は「お見事。プランのことは知っている。ただもう一回あなたから説明してほしかった」と満足気に言いました。
彼は他に何かすべきことはないだろうかと尋ねました。私は全てをカバーしたつもりだと伝え、奥さまに私が何か見落としていることはないかと尋ねました。奥さまは「いいえ」と答え、「あなたがいなければどうなっていたのか見当もつきません。感謝しています」とおっしゃいました。
お客さまは正式に退職した後、企業年金から20万ドルを引き出すことができました。半年後には死亡保険金の小切手を手渡すことになるだろうと覚悟していただけに、その大仕事をやり遂げた彼の姿は感動的でした。2024年春の面談では、みんなで大泣きして笑い、たくさんのハグをしました。私は「お会いするのは今日が最後であってはなりません」と言いました。チームでなすべきことをやり遂げたという満足感で、その日一日、この上もない幸せに包まれていました。お客さまが私たちのアドバイスを大切にしてくれれば、私たちもお客さまを全力で守ります。
ご家族からの次の電話は幸せなものではありませんでした。彼は昨年7月に旅立ちました。その後、団体保険と企業年金、彼の保有していた資産は無事に奥さま名義の口座に移行できました。婚約者との間に5月には第一子が生まれる予定のご長男は、母親の後見人となりました。
試練を乗り越え、私たちは遺された奥さまが不自由なく暮らせるように手を打つことができました。保険金とご主人の年金、そして私たちのプランのおかげで彼女の保有資産は現在200万ドルを超え、全資産からの収入総額は彼女が予想していた2倍になっています。現在私たちは、成人した3人のお子さまたちの全面的な支援を受けて、さまざまなチャリティー団体を永続的に支援するための家族財団の設立に取り組んでいます。
Darren Ulmerは16年間MDRT会員。Contact:darren.ulmer@sunlife.com