アドバイザーやスタッフに収益ベースのボーナスを支給することは働く動機づけとなる最も分かりやすい方法に見えるかもしれませんが、2人のベテランMDRT会員はスタッフから最大限の力を引き出して仕事の満足度を高めるにはお金以外にも方法があると言います。
「誰もが持っているその人だけの才能を生かせれば皆が幸せになり、スタッフの1日はもっと楽しくなるでしょう」と39年間MDRT会員のMichael H. J. Evers, CFP, CLUは言います。
スペースを与える
事務担当者5名、アドバイザー2名から成るEversの会社で毎回ウェビナー用ビデオを準備するのは会計責任者です。動画撮影や編集は彼女の仕事ではありませんが、たまたまテクノロジーに精通していました。「彼女は会計の責任者ですが動画作成が好きだったので任せることにしました」とEversは述べます。
従業員の強みを適切な業務やチームワークに生かすことはその人に力を与え、その人自身も日々の業務を意思決定するといったある程度の権限を与えられることで自信が高まります。最近Eversの会社は産休に入る従業員の穴埋めとして事務補佐を雇いました。新人研修のプロセスでは基礎的な事を教え、その人が得意なことをしてもらうことが中心になります。初期のトレーニングでは他のスタッフに付き添って仕事を観察(シャドーイング)しながら自分に「向いていること」を見つけます。その後はより難しい仕事に挑戦するため複雑な業務を任されるようになります。経験あるスタッフが仕事をチェックしますが、近い将来その新人は多くの責任を持ち信頼レベルを高めるでしょう。
問題を抱えて電話をかけているお客さまは、対応している従業員が笑顔かを聞き分けることができます。
—Michael Evers
「このように従業員は徐々に監督されなくても働けるように導かれ、仕事への満足度は高まります。私たちは社員が力を限界まで発揮できるよう努めていますが、多くの場合、彼らに限界はありません。そしてスタッフが辞めることはほとんどなくなりました」と語りました。
26年間MDRT会員のHelen Jayne West, APFSもコンサルティング会社を経営しており、スタッフが仕事面でもプライベートでも成長することを優先しています。スタッフの年次評価の際に目標設定について話し合い、公認ファイナンシャル・アドバイザーになりたいというスタッフの願いを実現するための費用を負担して支援したこともありました。またAIのような革新的技術を独学で勉強するスタッフもいます。年に一度開かれるブレーン・ストーミングとトレーニングには外部のトレーナーを招いて新しいスキルを学び、事業の短期および長期の展望について話し合います。
「弊社は5年間この取り組みを続け研修費用を負担してきました。昨年は私が運営を担当し非常にうまくいきました」と述べました。
報酬
英国では好調な業績のインセンティブとしてボーナスを支給することは、お客さまの利益にならないアドバイスによる収益の奨励として厳しく禁じられているので、簡単ではありません。「文化は確実に変化しています」とWestは言います。
彼女は3~4カ月間集中的に販売活動を強化するプロフィット・スプリント(集中期間)を行うことで、スタッフに追加の収入を得る機会を提供しています。この期間中に何週間で何を達成するといった基準を示し、それによって生み出された収益の一定割合を報酬として設定します。報酬は保証されておらず、1件でも苦情があればボーナスは支給されません。
「常にアクセルを踏み続けることは難しいですが、従業員にとってこの期間中は真剣に取り組む機会になります。監督省庁は現在お客さまを適正に扱うよう指導しクライアントをリスクにさらすような目標を従業員やスタッフに与えないよう目を光らせているので、苦情が来たらボーナスを払わないことにしています」とWestは述べました。
また最近、創業20周年記念の特別イベントにボーナスを支給しました。「会社の給与総額の10%を従業員の勤務時間に応じて分配しました」とWestは説明します。
さらにチーム全員とその大切な人たちをロンドンでのディナーに連れて行き、ミュージカル「マンマ・ミーア!」を観劇して節目を祝いました。「皆で一緒に素晴らしい旅行をしました」と言います。
Eversは四半期の新規契約件数が過去12四半期の平均を上回るとボーナスを支給します。移動平均値より成長が大きければ、増加分の10%が翌四半期の最初の給料日に支払われます。四半期ごとのボーナスの2つ目は会社の資産税対策部門の業績と連動していて、そこで生じた余剰金は非課税でスタッフの退職金勘定に支払われます。このボーナス制度は10年以上続いており、通常は年に数回四半期ごとに支給され、最近の支給額は700~1,500カナダドルでした。
特典
ボーナス制度は全ての人が同じ目標に向かって協力するのに役立ちますが、Eversは従業員の労働意欲を高める上で報酬を与えれば良いというものではないと警告します。
「そのような考えだと、別の会社が1ドルでも高い報酬を提示すれば従業員はすぐ辞めてしまい短期間しか続かないでしょう」と話します。
Eversは他社に引けを取らない給与、2週間の有給休暇、グループ医療保険料の100%負担に加え、クリスマスから元日にかけて有給で休業するなどして金銭以外の特典も与えています。夏の祝日が月曜に当たる場合、前の週の金曜も休業日にして4日間の長い週末にします。また四半期に一度「スタッフお楽しみデー」を設け、全員がオフィスを離れてワイナリー巡りやブリューパブ巡り、食糧配給所での炊き出し、アウトレット・モールでの買い物、ナイアガラの滝のボートツアーなどを楽しみます。この前の休日明けに高級レストランで集まったときは全員がリムジンで自宅まで送迎され、運転の心配をする必要がありませんでした。
従業員が権限を与えられ、さらに個々が同僚の役割を理解してチームワークが強化されると仕事の満足感が高まり、その満足感は顧客サービスにも良い影響を及ぼします。
「問題を抱えて電話をかけているお客さまは、対応している従業員が笑顔かを聞き分けることができます。お客さまは敏感です。私たちはお客さまに深い敬意を持って接しますが、従業員も同様に重要なので同じように接することを心掛けています」とEversは語りました。
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Helen West helen@westfm.biz