Bryson Milley, CFP,CIMはチームに加わる素晴らしい候補者が見つかったと確信しました。その女性は愛想が良く、面接の受け答えがスマートで履歴書もしっかりしていたからです。
そのとき、候補者の適性評価を依頼していた心理テストのコンサルタントから電話がかかってきました。
「報告書を書くまでもありません」とその専門家は言いました。評価の結果、候補者は細かい事柄をたくさん突きつけられるとミスを犯しやすいことが分かりました。専門家は「この候補者を避けるように」と言いました。
専門家の強い意見を踏まえ、カナダのバンクーバーに住むMDRT会員20年のMilleyは採用を断念しました。専門家の意見を無視して候補者を採用すると、どんなことが起きるかこれまでに目の当たりにしてきたからです。ほとんどの場合、候補者は何らかの理由で短期間のうちに会社を辞めていました。心理テストは長期的なチームへの適合性や、新入社員への受け入れにかかる莫大な投資を失う可能性のある職務への適合性について洞察力のある報告を提供してくれるので、直ちに採用したいという気持ちを抑えるのに役立ちます。
性格診断テストをすることで人はそれぞれ違うこと、言葉だけで人を判 断してはいけないことを理解しました。
— Shalyn Xiaoqi Lee, BSc
心理テストは目新しいものではありません。性格診断テストとして有名なマイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標をご存じでしょうか。Milleyの会社では彼が入社する2003年以前からテストを積極的に活用していました。実際会社は産業心理学者のLarry Stefan博士に絶大な信頼を寄せており、Larryという名は会話の中で名詞、動詞、形容詞のように扱われています。弁護士や医師、中小企業の経営者のための包括的なファイナンシャル・プランニングを担当するMilleyは「あなたはLarryされましたか?あなたが経験したのはフルLarryですか?それともLarryライトですか?」のように使います。
Larryライトは4時間の質問、フルLarryはさらに2時間のテストとLarry Stefan博士または彼のビジネス・パートナーとの1時間にわたるインタビューで構成されています。Milleyは入社時に自らフルテストを受けましたが、見知らぬ人がまるで親しい家族のように自分のことを説明することに衝撃を受けました。
「たくさんの質問に答えただけなのに、報告書には何十年も前から私のことを知っているかのように書いてありました」とMilleyは言います。
潜在的な社員を理解する
Stefan博士はこのシステムが独特である以上に包括的であると言います。心理テストに使われる手段をひとつに限定せず、さまざまなテスト(心理学者や博士レベルの専門家しか利用できないものもある)を統合し、精度を最大限に高めるために常にアプローチを変えています。その結果、候補者のワークスタイルや対人関係スキルなどに関する1000個以上のデータが得られ、正しい採用決定が行われる可能性が飛躍的に高まります。
Stefan博士は「知性は比較的簡単かつ正確に測定できますが、性格は複雑です。100人の人間を評価した場合、その中の4,5人はわれわれの予想とは正反対のことをする可能性があります。これまで管理職のために2万回以上テストを行ってきましたが、全く同じ人はひとりとして見たことがありません」と述べました。
ポイントは候補者のポジティブな資質を裏付ける、あるいは一見優秀な人材であっても理想的でないことを示す識別が困難な特性(多くの場合感情的な知性や対人関係に関わること)を見つけることです。
Milleyは有望な履歴書を持つ候補者が最初の適性テスト、最初の面接、2回目の適性テスト、フォローアップの面接を経てからStefan博士のテストを行うようにしています。Milleyが候補者をぜひ採用したいと思ったときに初めてStefan博士に評価を依頼し、最終的に長所と短所、1~10段階のランキングを含む3ページの報告書を作ってもらいます。
Shalyn Xiaoqi Lee, BScも十分に吟味されていない人材を採用して苦労するより、採用前にテストを行う方が効率的だと考えています。シンガポールの4年間MDRT会員は、管理職になった2008年に最小限の評価テストだけで8人の候補者を採用しました。そのうち6人が1年以内に辞めてしまいました。
Leeは30人のアドバイザーを統括し、500人のクライアントのためにファイナンシャル・プランニング、生命保険、投資を扱う事業の採用とトレーニングを管理しています。彼女の評価活動は、候補者が最初の面接の前に10分間のDISC性格診断アンケートに答えるところから始まります。このアンケートは主導、感化、安定、慎重という尺度で評価し、Leeが候補者に質問する内容の参考になります。
候補者が二次面接に進むと180問のエニアグラム・テストを受けます。Leeは1回のテストにつき$10~$20払い、結果を評価する資格を得るのに5日間かけました。このテストは達成する人、調べる人、熱中する人、挑戦する人などの9種類のタイプからその人を深く見ていきます。それぞれの性格タイプの長所と短所も示唆されます。例えば改革する人は本質的に完璧主義なのでミスに敏感で決断力に欠ける可能性があります。また助ける人は、人を助けることにはたけていますが自分の仕事や時間を管理することが苦手です。
Leeは「社員が長所を磨き短所を改善してより良い自分になるのをサポートすることができれば、その人はよりバランスの取れた人間になりパフォーマンスを上げることができます」と語りました。
カナダの16年間MDRT会員でファミリー・ビジネスの継承と継続、移行を専門にしているDarrell Wadeは10分以内で終了するプレディクティブ・インデックス・テストを利用し、個人の自己主張の強さ、外向性、忍耐力、規律性のレベルを分析します。
自分自身や一緒に仕事をする人たちを理解するために時間をかければ、より良い判断ができるようになります。
— Darrell Wade
Wadeは以前、緻密できちょうめんなパラプランナーを探していました。ある候補者は2度の電話インタビューでWadeがまさに聞きたいと思っている事柄を語りましたが、プレディクティブ・インデックスは出来過ぎた話であることを示唆しました。Wadeは候補者に連絡して、緻密さと分析力が必要とされる職責であること、しかし調査は緻密へのこだわりが長続きしないことを示していると伝えました。Wadeはそれについてどう思うか尋ねましたが、沈黙が返ってきただけでした。
調査結果を検証するためにWadeは候補者に仕事のサンプルを送り、それが何度も開かれては未完のまま終了し数日後にやっと完成した形跡を見て、候補者がどのような人なのかを学びました。
同僚を理解する
Wadeは2019年に25年の経験を持つスペシャリストを採用する際にもプレディクティブ・インデックスを利用しましたが、このテストは今いるチームメンバーにも有効です。彼は数年に一度自分で調査を行い、チーム全体の結果を新入社員にシェアしてどうすれば気持ちよく一緒に仕事ができるかを理解してもらいます。
指標によるとWadeは3人のビジネス・パートナーの中で最も自己主張が控えめで外交的でもありませんが、非常に規律正しく忍耐強いことが分かりました。この分析結果を受けてパートナーはWadeに大きな決断をさせたい場合木曜日に情報を渡して翌月曜日まで決断を待つことがベストであることを理解しました。
このような優れた対人理解があるからこそ、Leeはスタッフに年に一度のエニアグラム・テストを受けてもらいます。そして各人と面談し、現在と過去の結果を見て何が改善しどの部分に引き続き取り組むべきなのかを話し合います。
Leeは「性格診断テストをすることで人はそれぞれ違うこと、言葉だけで人を判断してはいけないことを理解しました。誰しも異なる動機を持ち、異なる資質をリーダーに求めています。私は人の態度や行動がもっと理解できるようになり、社員を指導する方法を改善することができました」と述べました。
Milleyが使用する別のツールにも同様の成長志向のミッションがあります。先ほどのマイヤーズ・ブリックス・タイプ指標と類似するテストを行うコンサルティング会社と協力して定期的にチームの4人全員がテストを受け、長所や短所、得意なことや苦手なことを確認します。その後コンサルタントのFraser Engelによるチーム・ビルディングの研修があり、スタッフ間の人間関係を深めながら日々の業務や長期的な運営についての洞察を得ています。
Milleyは「人にはそれぞれ心理的な特徴があり、得意なことと不得意なことがあります。向いてないことをしても意味がありません。ある時点で失敗するか不幸になるか、あるいはその両方だからです」と述べました。
また後継者育成のために心理テストを活用することも考えていますが、まだ49歳なので急いで引退するつもりはありません。
「全ては初心に帰ることから始まります。自分の強みを生かし会社を長く存続させる人材が必要です。弊社は50年近く続いていますが、これは偶然ではありません」と語りました。
クライアントを理解する
心理テストはクライアントにも利用することができます。Wadeがプレディクティブ・インデックスから得た情報は、ファミリー内の異なる考え方を解決するのに有効でした。例えばある農場主のクライアントは別の農場を購入する機会があるのに躊躇していたので息子はいら立っていました。父親は過去に2度自分の農場を失いそうになった経験から、リスクを避けていることがプレディクティブ・インデックスにより分かりました。
このような経験があったので、問題が発生してからではなくクライアントと仕事を始めるときに当インデックスを使い始めることにしました。Wadeは調査後にお客さまとグループ・セッションを行い、報告書について話し合い次のステップを計画します。
Wadeは「このツールは人間関係を強化し、可能性を引き出し、ぎょっとすることを避けるのに役立つことをお客さまに説明します。自分自身や一緒に仕事をする人たちを理解するために時間をかければ、より良い判断ができるようになります」と語りました。
人材を採用するときの8つの危険
Stefan博士は、心理テストにより回避できる採用のわなを以下のように指摘しました。
1. データを曲げること。ネガティブな情報を隠すためにポジティブな情報を使い、逆にポジティブな情報を隠すためにネガティブな情報を使うことを避けてください。どのような候補者であっても、評価には包括的な情報が必要です。
2. 理性より直感を信じる。具体的な証拠より偏見を優先するのは良くありません。
3. 専門家の意見に全てを委ねる。外部からのアドバイスは非常に参考になりますが、専門家が常に正しいとは限りません。
4. 平凡な候補者の中から一番良いと思える人を選ぶ。ありふれた集団のトップで妥協せず、素晴らしい人材を採用するために時間をかけてください。後々粘って良かったと思うはずです。
5. 仕事の能力と人格。仕事の能力は満点でも人格のことで苦労することがあり、逆もまたしかりです。総合的に評価することで、最強の人材を生み出すことができます。
6. 面接の限界。短過ぎますか、それとも長過ぎますか?狭過ぎますか、それとも広過ぎますか?面接は採用決定に使われるさまざまな情報の一部にすぎないことを認識してください。
7. スーパースターを採用する。成功するかどうかは状況によります。他の組織で成功したからといって、必ずしもこの組織でこれから成功するとは限りません。時間をかけて候補者一人ひとりを知るようにしましょう。
8. 自分自身の弱点に気付かない。他人を評価する能力があまり高くない人もいます。自分が得意なこと不得意なことを認識し、必要に応じて他者の意見を取り入れることで最強の判断を下すことができます。
テストをより詳しく
一部の地域で公開されているHBO Max最新のドキュメンタリー「Persona: 性格テストの背後にある暗い真実」でTim Travers Hawkins監督は、人を理解して候補者を選び、コミュニケーションを向上させるシステムとしての心理テストにどのような欠点があるのかを探っています。人間が作るテストは性差別、人種差別、能力差別、階級差別などの偏見につながる可能性があるというのです。
一例としてマイヤーズ・ブリックス・タイプ指標の共同制作者であるIsabel Myersの著作に看過できない先入観が含まれていると指摘します。また双極性障害と診断され、うつ病と闘っているKyle Behmという青年のインタビューを取り上げています。彼はBig Five(主要5因子性格検査)などの性格テストで自分ができることを否定され、就職が困難になったと感じました。例えばカスタマー・サービスの経験があるにも関わらず、Kroger社のカスタマー・サービスに応募する際に受けたテストでは人と接する仕事に向いていないと言われました。Behmは自分のどこが悪いのか思い悩み、自らの命を絶つという悲劇が起きました。
コーネル大学の労働・雇用法の准教授でThe Qualified Workerの著者であるIfeoma Ajunwa, J.D., Ph.D.は映画の中で「人間の管理職であれば、たとえ偏見のある判断をしても影響を受けるのは一度にせいぜい100通の履歴書です。しかし企業全体に展開する偏った自動採用システムは何十万通もの履歴書に影響を与えます」と述べました。
候補者が雇用者の望むような答えを探す可能性もあります。ビデオ・インタビュー・プラットフォームHireVueの主任産業心理学者であるNathan Mondragonは「知識豊富な応募者は答えのカギが何であるかを理解し始めている」と述べました。
性格診断テストの中には有用な情報を提供してくれるものもありますが、テストそのものにも批判的な評価が必要です。
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Shalyn Lee shalynlee@pruadviser.com.sg
Bryson Milley bmilley@rgfwealth.com
Darrell Wade darrell@parkplacefinancial.ca