Log in to access resources reserved for MDRT members.
  • 学ぶ
  • >
  • ある未亡人の信頼と夫のレガシー
ある未亡人の信頼と夫のレガシー
ある未亡人の信頼と夫のレガシー

1 02 2024 / Round the Table Magazine

ある未亡人の信頼と夫のレガシー

お客さまの利益を最優先するアドバイザーは信頼によって報われる。

対象のトピックス

この仕事に就いて2年もたたない頃に、私の事務所が他社の保有契約を引き継ぐことになり、B氏が私のクライアントになりました。面識はありませんでしたが、電話で度々お話しするうちに親しくなっていきました。そのおかげでB氏にもしものことがあった場合、私から奥さまに伝えるべきことは何かを理解することができていました。

彼は元科学教師で、退職して奥さまと小売店を営んでいました。ふたりはネパールでPeace Corpsの活動中に知り合い、結婚後は渡米して一女をもうけました。娘さんは当時14歳でした。また、ボランティア活動の一環として、キャプテン・アメリカの衣装で親を亡くした子どもたちを訪問してカウンセリングを行った話も伺いました。2年という短い期間でしたが彼について多くのことを知りました。

持病のない健康体の48歳のB氏は、ある日軽い病気と思われる症状ですぐに入院しましたが、数日後に帰らぬ人となりました。葬儀の日に初めて奥さまとお会いしました。3週間後に彼女の店を訪れて自己紹介をして、受取人としての書類を作成するお約束をしました。B氏は5万ドルの終身保険に加入しており、退職金勘定に貯蓄がありました。悲しみに暮れる未亡人と会うだけでも十分に気まずいものです。それなのに、B氏が亡くなる数日前に失効した住宅保険を更新するために、奥さまから2,000ドルの保険料を徴収しなければならなかったのです。

この保険は亡くなる1週間前にB氏と契約したもので、保障は開始されていましたが、保険料は未払いでした。奥さまと直接会う前に時間的余裕がないことを電話で包み隠さず伝えなければなりませんでした。死亡保険金をお支払いする前に保険料2,000ドルをお支払いいただく必要があったのです。しかし、さらに重要な任務は、奥さまと亡くなったB氏で経営していたお店の実態、そして今後の優先事項についてもっと知ることでした。奥さまは一度も保険に加入したことがありませんでしたが、これからは家計、ビジネス、従業員十数名、そして娘の将来を決める責任者となります。奥さまとの信頼関係を構築するためには、ある程度私から金融関係の教育をする必要があるだろうと理解していました。拝察したところ、その時点でさまざまな決断を急がせるのではなく、できる限り整理を優先するべきだと思いました。

奥さまとのミーティングは事前に全てを準備し、十分な時間を確保して行いました。私が以前物理教師として働いているときに得た、複雑なテーマを分解して消化しやすい大きさに分けるスキルがアドバイザーの仕事に役立ちました。例えば住宅保険に関しては「奥さまには住宅保険が必要です。このステップを済ませて、まずはひとつ負担を減らしましょう」と言えば実に簡単です。奥さまは保障の必要性を理解してくださいました。

私たちは、B氏と奥さまが得ていた収入について調べ、従業員と娘さんがその収入に代わる十分な給付を受けられるかを確認しました。「ご主人が亡くなった今、もしあなたに何かあったら娘さんはどうなりますか」と問い掛け、奥さまは保険の必要性を理解し、100万ドルの20年の定期保険に合意しました。しかし葬儀に参列するために滞在していた奥さまのご親族から「用心した方が良い」と忠告があったそうです。私が彼女を食い物にしているのではないかと心配したようです。奥さまの義兄は、私のことを探るために面談に同席しました。私はお勧めしたい商品とその理由をご説明しました。ご親族は決して不愉快な方たちではありませんでした。ただ守りに入っていただけです。ご心配はもっともです。奥さまがまだ立ち直っていないのに、私が決断を無理強いしようとしたと思われたようです。しかし職務上、彼女が立ち直るまで1年以上も待つことはできませんでした。奥さまには今この保険が必要でした。

後に奥さまは、ご家族の忠告を聞かずに保険にご加入くださったのは、私を信頼していたからだと打ち明けてくださいました。私が彼女にとって最善の利益を考えていたことを感じてくださったのです。ご主人が亡くなって2ヶ月後に生命保険契約をお預かりし、1年後には自動車保険とご主人の退職金勘定を整理しました。現在、奥さまのお店は繁盛しています。奥さまは米国市民となり、娘さんは大学に通っています。お店ではご主人の遺志を継ぐイベントを主催し、私も年に2、3回ほど出向いて奥さまにお会いします。昨年は、ご主人が好きだったジェネシスのコンサートのために、娘さんと一緒にイギリスに行かれたそうです。今では彼女を友人だと思っていますし、彼女も私に感謝してくれています。つらい時期に難しいことやストレスをたくさん引き受けてくれたので、悲しみに暮れる余裕ができ、自分の店に集中することができたと言ってくださいました。

また、B氏は遺産の一部をチャリティーに寄付したことによって、彼にとって大切な人々や組織に良い変化を起こすことができました。B氏が亡くなって間もなく、私の会社では全ての保険契約を対象とした新たな特約を導入し、追加保険料なしで死亡保険金に1%を上乗せし慈善寄付が行えるようにしました。その特約について顧客に説明するとき、B氏が活動していた慈善団体や地元の団体のことも一緒に紹介しています。

Alex Smithは米国ロードアイランド州East Greenwichの3年間MDRT会員です。Contact: alex.smith@horacemann.com