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地盤と看板を承継
地盤と看板を承継

1 02 2024 / Round the Table Magazine

地盤と看板を承継

Katoは父が信頼を築く姿を子どものころから見て育ちました。

対象のトピックス

親から地盤を引き継ぐのは思うほど簡単なことではありません。Mitsutaka Kato加藤光隆は想定より早く父のクライアントを引き継ぐことになり、その難しさを実感することとなりました。

加藤は熊本県で活躍する2年目のMDRT会員で、2年前に14年間MDRT会員だった父、加藤光浩の健康上の問題からバトンを引き継ぐことになりました。加藤は10年前にアシスタントとしてサポート業務をするために父の所属する代理店に入社していました。

父からは「お客さまと信頼関係を築くのに10年はかかる」と言われていたので、10年以上のサポート業務を覚悟してのことでした。しかし、予定より早い段階で本格的に父に代わってファイナンシャル・アドバイザーとして前面に立つポジション・チェンジを迎えました。

幸先の良いスタート

とはいえ、小さい頃から時々父に連れられてお客さまを訪問していたので、スムーズな移行を実現できた面もあります。まだ2~3歳の頃から同行していたので、お客さまから小さい頃の話をされたり、とてもかわいかったと言われたりするのは少々恥ずかしくもあります。父は息子がまだ幼い頃からお客さまとの信頼関係に種をまき、いつの日かアドバイザーとして引き継ぐことを考えていたのでしょう。

父が築いた信頼関係がとても重要な役割を果たしていることはひしひしと感じています。「例えば、お客さまとの距離の目標が100だとすると、父親の代で関係ができていれば少なくとも95からスタートできます」と加藤は言います。そんなお客さまが500名もいらっしゃるのです。父の信頼をもとに契約をお預かりしたこともあります。それだけに信頼には重い責任が伴うと感じています。「神経をすり減らし、慎重にやっています。大きな信頼をいただいているので注意深くプランニングしています。マーケットを引き継いだからといって簡単だというわけではありません」と述べます。

子どもの頃は父の仕事の後を継ぐつもりはありませんでした。福祉系の大学に通い、将来は介護関連の仕事に就くことを目指していました。しかし、大学卒業を控え就職活動をする中で自身の将来について悩んでいた頃に父から「違う形で人の役に立つこの仕事をやってみないか」という打診があり決断することになりました。

大学を卒業後、社会勉強をするためにいくつかのアルバイトを経て、父が所属する保険代理店に入社しました。入社当初から父の仕事を引き継ぐことを前提にファイナンシャル・アドバイザーのキャリアをスタートしました。「お客さまとの会話の難しさを学びました。言葉選びを間違えると相手をいやな気持ちにさせてしまうので、言葉選びは慎重になります」と言います。

仕事を学ぶ

父の所属する代理店に入社してからは事務処理や保険会社とのやりとりなど保全業務を中心に担当しました。その仕事からアドバイザーの役割の知らない一面を学ぶことができ、父の仕事を違う角度から見ることができました。

「父はいつも率直な人です。何も気にしていないように見えました。悩みなどないのではないかとさえ思っていました。しかし、本当はお客さまのためを考え、心配し、誰よりもお客さまを一番に考えていたのだと感じるようになりました。実際に仕事に関わるようになってからやっと専門家としての父の在り方を知ることができたと思います」と加藤は語りました。

加藤の父の時代からお客さまだった老夫婦から知人を紹介されたときには「光浩さんの息子さんだったら信頼できる」と契約を預かることができました。とはいえ、信頼があれば惰性でプレーできるわけではないと慎重です。むしろ信頼されているからこそ、より大きな責任を負っていると感じています。

現在は父のやり方を踏襲して既存のお客さまに定期的に会いに行っています。ひと月も間があくと「しばらく来なかったね」と言われるほどです。

小さい頃を知っているお客さまは歓迎してくれます。「あのときの小さな坊やが今はこんなに大きくなったのだね」と言われることもあります。加藤には父親を越えてやろうといった威勢のようなものはなく、家庭円満で“縁”を大切にしながら等身大でお客さまと向き合う姿勢が感じられます。保険営業の承継という難問のひとつの答えかもしれません。

現在は新規契約をお預かりし、給付金請求をする日々の活動を丁寧に行っています。父とはポジションを入れ替わり、オフィスでの業務を担当してもらっていますが、師匠としていつでもサポートできる体制です。

加藤がお客さまに受け入れられ、信頼されていることを感じるのは愛称で呼ばれるときです。最初は息子さんと呼ばれていましたが、光隆君になり、最近では親しみを込めて「たかちゃん」と呼ばれています。

「これも信頼を引き継げているサインの一つだと感じています。この仕事で一番大事なことかもしれません」と加藤は述べます。

Tetsuo KageshimaはMDRTのアジア太平洋市場のコンテンツ開発を担当するコミュニケーション代理店Team Lewisのライターです。Contact: mdrteditorial@teamlewis.com

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Mitsutaka Kato mitsutaka-katou8a@sonic-japan.co.jp