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潜在意識に売り込む
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4 23 2022

潜在意識に売り込む

ニューロ・セリングを使ってクライアントの脳内に潜入

対象のトピックス

ニューロ・セリングはまだ実験段階と考えられていましたが、神経学の画期的な進歩と心理学や人類学などの学問的な裏付けにより、消費者の脳の中にある「購入ボタン」を発見する科学は確立されつつあります。

消費者は購買を決定する際に「競合するブランドや価格を比較する」と言いますが、Harvard Business SchoolのGerald Zaltman教授の研究によると実際にはそうではありません。Zaltman教授は著書『How Customers Think: Essential Insights into the Mind of the Market』(訳注 消費者の思考:市場心理を読み解くための洞察)の中で、購買決定のうち合理的なものはわずか5%に過ぎず、95%は脳の潜在意識と感情によって決定されると論じています。

すなわちプレゼンテーションの成功率を上げるには、事実や数字に加え、潜在意識に訴えかけなければなりません。医師で神経科学者のPaul MacLeanが提唱する「脳の三位一体論」によると、脳には3つの部分があります。最も原始的な部分は「爬虫類脳」と呼ばれ、脳の最初のフィルターであり、「敵か味方か」「脅威か信頼できる人物か」を区別する部分です。大脳辺縁系は「哺乳類脳」とも呼ばれ、脳の感情的な部分です。記憶、忠誠心、価値判断などがここに宿ります。第三の部分は、大脳新皮質または「人間脳」です。抽象的な思考や意識的な意思決定が行われる理性的な部分です。

私がこのアプローチを金融サービスに応用したときの経験談を基に、ニューロ・セリングの威力についてお話ししたいと思います。

ある日、会議を終えたところで、中小企業の経営者である友人とばったり会いました。何気ない会話の中で、彼女が年金制度に言及したので、私はエルサルバドルの年金制度改革の専門家であることを伝えました。そして、このテーマをもっと深く掘り下げるために時間をとって話すことを提案しました。彼女はビジネス・パートナーも話を聞きたいだろうから、一度オフィスを訪ねてほしいと言ってくれました。

2日後、私は彼女のオフィスを訪ね、彼女は自分のビジネス・パートナーを紹介してくれました。話をするうちに、彼女たちの仕事内容が分かってきましたが、それ以上に、彼女たちの不安や苦しみの原因が理解できました。2人ともお子さんがいらっしゃるのですが、老後の生活資金がないことと、ビジネス・パートナーに万が一のことがあった場合、お子さま方が教育を継続できないことが最大の心配事でした。

そこで私は、私の友人であり、事業で成功したビジネスマンの話をしました。彼もかつては同じように不安を抱えていましたが、生命保険に加入することで、自分に万が一のことがあっても、息子さんが大学で勉強を継続できると知り、安心感を得ることができました。

オフィスを出るまでに、お二人にすでに3つのソリューションを提案しました。その2日後に、私のチームと一緒にまとめた提案書を携えて戻り、アドバイスをお伝えしました。その日のうちに2件で合計100万ドルの生命保険をお預かりしました。お二人はユニバーサル保険に加入し、お子さまたちは母親に万が一のことがあっても学業を終えることができるようになりました。また、お二人も相応の老後を送ることができるようになりました。

このケースで私は、年金改革に関する知識を共有して信頼関係を築き、絆を構築することで、「爬虫類脳」に訴えかけました。「人は商品そのものを買うのではなく、感覚や感情に動かされて買う」という戦略でアプローチしました。お二人はすでに不安を抱えていたので、保険に関する事実や数字を提示するのは止めました。その代わり、自分たちと同じ境遇にありながら、解決策を見いだしたクライアントの話を交えながら、シンプルに話を進めました。

プレゼンテーションの際に最も効果的なニューロ・セリングのテクニックを紹介します:

  • 差別化。ライバルとの違いを見つけてください。アドバイザーは基本的に同じ商品を提供しているので、消費者の購入(加入)の判断が難しくなっています。しかし、際立つ存在になる方法を見つけることで、差別化が可能です。
  • 相手をおびえさせない。強引に売り込むと見込客は自分が商売相手としか見られていないと感じて逃げてしまいます。適切な質問をし、最も不安なことを突き止めてください。その苦悩を解決する対策を提供することができるようになります。
  • ストーリーを語る。私たちは子どもの頃から物語を聞くのが好きなので、これは有益なツールです。ストーリーは数字を視覚的にイメージするのに役立ち、潜在意識に語りかける良い方法です。信頼を築き、購買・加入の意思決定を助けましょう。
  • 合理性を忘れない。購買は非合理的で感情に基づきますが、データ、数字、統計を提供して、購入プロセスを後押しすることは害にはなりません。これらの事実によって、クライアントに良い買い物をしたと思い出してもらうことができます。

最後に、顧客獲得に有益であったアイディアをもう少しご紹介します。

  • ハイパー・パーソナライゼーション。顧客のユニークなニーズに合わせて、緻密に設計をカスタマイズすることでクライアントの印象を良くし、購買決定意欲を高めます。
  • 見込客と顧客を知る。女性には男性と同じアプローチではいけません。人はそれぞれ、何によって購買を決定するかのポイントが違います。購買決定に導くにはどのボタンを押せばよいかを知る必要があります。
  • 会議のオープニングは非常に重要。会ってくれたことに感謝を述べ、自己紹介をした後、最初の5分以内にあなたが何をし、どのように手助けができるかを力強く、簡潔に述べましょう。「私たちは親御さんがいなくなった後も、お子さまの教育費を支払い続けることができるように手助けをします」説明にかかる時間を述べ、プロセスは機密扱いされることを前置きして、顧客を安心させます。
  • 購入するかどうかはクロージング次第。セッションの最後には、過去の経験談を話し、見込客が商品を自分の状況にどのように適用すればよいかが理解できるようにするとよいでしょう。そして「生命保険はあなたがこの世を去った後も残るラブレターです」のような力強い結びの言葉を使って、行動を促しましょう。
  • 有効なキーワードを選択する。適切な言葉選びは、脳内で購入の意思決定を引き起こす力があります。achieve(達成する)、make(実現する)、transcend(超越する)、conquer(打ち破る)などの動詞を使いましょう。しかし、すべてのキーワードの中で最も重要な言葉があります。それは、見込客の名前です。

人に影響を与えたいと思ったとき、顧客のどんな心配を和らげることができるのか、どんな幸せ体験を提供できるのか、どうすれば顧客のエネルギーを節約できるのかを自問自答してください。これを意識すれば業績は倍増するはずです。

Walter Ramirez Madridは、エルサルバドルの2年間MDRT会員です。連絡先は、wramirez@segurosjr.com