ファイナンシャル・アドバイザーにとってメンタリングは最も充実感を得られる経験のひとつです。恩返しができる喜びに加え、自らの経験を生かし異なる世代のアドバイザーを支援することが専門家としても個人としても成長に繋がります。
37年間MDRT会員で、MDRT元会長のBrian D. Heckert, CLU, ChFCはメンティーの指導を通じて、教えるペースが速すぎることに気付きました。トピックの提示をゆっくりと行うように改善したところ、その変化がメンティーの顧客との面談にも良い影響をもたらしました。
「多くの人は耳で聞くより目で見て学ぶ傾向があるため、この気付きを実務にも取り入れました。右脳と左脳の両方に働きかける必要があると理解したことで、プレゼンテーションのスピードも大幅に改善できました」と述べます。
メンタリングではメンティーが主体的に会話をリードするのが最も生産的です。「私はトレーナーではなくメンターです。私の役割は商品知識の伝達ではなく、より良い人間、優れたビジネス・パーソン、そして金融業界の有能な一員として後輩が成長できるよう導くことです」と語ります。
Heckertは最近メンティーとなった2人に対して、会話を主導する必要性を伝えました。「2人はそのルールを完璧に守り、ミーティングや議題の設定も全て彼らだけで行っています。私が細かく指示を出す必要がなく、彼らにも非常に有意義な時間となっています。これにより人間関係もさらに良好になっています」
26年間MDRT会員のMark D. Olson, CFP, MSFSにとってメンタリングによる最大のメリットは自身のビジネスを見直す機会を得たことでした。「以前うまくいっていた方法でも、いつの間にかやらなくなっていることがあります。メンティーに教える時、それに気付かされます。メンタリングを通じて、時間と共に忘れがちになる基本に立ち返れるのは、大きなメリットです。誰かに貢献することが個人的な満足感や充実感にも繋がります」
Olsonはメンタリングがアドバイザーの指導力やリーダーシップの向上にも役立つと考えます。「私がメンタリングした人の中には、MDRT会員からコート・オブ・ザ・テーブルやトップ・オブ・ザ・テーブルを獲得した人もいます。そのプロセスで私自身のリーダーシップも磨かれました」
また、メンタリングは自身のビジネスの後継者を育てる機会にもなると述べます。「若手アドバイザーが後継者として適任かどうかは、クライアントへの接し方を見れば分かります。メンタリングでキャリア構築を支援する中で、クライアントを託すにふさわしいかどうかも判断しています。お客さまを委ねるのですから慎重になります」
加えて、Olsonはメンタリングを通じて生涯の友人を得たと言います。この記事に登場する他のアドバイザーたちも大きな恩恵としてこれを挙げています。
可能性を最大限に生かす
17年間MDRT会員のElaine Milne, Dip PFSはメンタリングが双方向のプロセスであることを学びました。月1回の電話で9年間継続して彼女を指導したMDRT会員のメンターは「メンターとして一歩引いて俯瞰し、メンティーに価値ある支援を提供できるよう準備する必要があります。常にベストな状態であるために、私自身も多くのことを学んでいます」と述べました。
また、世代に合わせて指導スタイルを柔軟に変えることも大切な学びの一つでした。「この業界に入ってくるのは、私より20歳ほど若い世代です。若いアドバイザーは仕事には熱心でも人間関係の大切さを見落としがちです」と彼女は述べます。
若い世代からは「古いやり方」と受け取られることもありますが、27年間にわたるMilneの経験は世代間のギャップを埋める上で重要な役割を果たしています。彼女が採用した若手アドバイザーの一人は、将来の後継者候補でもあり、彼女自身がかつて先輩アドバイザーから学んだことを今まさに彼に引き継いでいます。
「70代、80代のアドバイザーが、この業界やロータリー・クラブからいなくなってしまうのはとても寂しいことです。彼らのスキルと豊富な人生経験は大変貴重です。私も50代半ばを迎え、ようやく彼らに近い経験と専門スキルを持つ立場となりました。この業界には、あらゆる世代が共存できる余地があると思います」と述べます。
メンタリングを通じて時間と共に忘れがちになる基本に立ち返れるのは、大きなメリットです。
—Mark Olson
彼女はMDRTのメンターたちに次のように助言します。「謙虚であること、そしてコーチを持つこと。これは自己成長への投資です。ただやみくもに仕事をするのではなく、一歩引いて全体を見ることが大切。それは一人でできることではありません」
32年間MDRT会員のGregory Pogonowski, Dip PFS, Cert CIIMPは、MDRT元会長で36年間MDRT会員のCaroline A. Banks, FPFSからメンタリングを受けました。「彼女は自分が学んだことを人に伝えたいという想いを持っていました。Carolineは私に正しい道を示してくださり、その翌年には収入が3倍になりました。そして私も同じように指導にあたってきました」と語ります。
彼はMDRTの公式メンタリング・プログラムに参加し、これまでの30年間で6〜8名のメンティーを指導してきました。
「メンティーの多くは年齢的にも若く、経験も少ないため、彼らと関わることで私自身もブラッシュアップされます。新たな状況に対応できるように規制や業界の変化について常に最新情報を把握しておく必要があります。AIの登場はファイナンシャル・プランニング業界に大きな変革をもたらし、新たな洞察を与えてくれています」と述べます。
彼はMDRTの体系的なメンタリング・プログラムに基づいて指導を行いながらも必要に応じて柔軟に内容を調整しています。「メンティーそれぞれの課題に向き合いたいので、関係のないことは扱いません」
Pogonowskiは定期的にメンティーと連絡を取り新たなアイディアや課題について話し合います。「世代間の違いというよりも、メンティーがビジネス・サイクルのどの段階にいるかを見極めることが大切です。彼らのビジネスの内容や目標を理解してください。事業承継計画や合併に関する課題を抱えているかもしれません」
またファイナンシャル・アドバイザーは孤独になりやすいとも指摘します。「もし相談できる仲間がいないのであれば、アイディアや経験を共有できる地元の勉強会に参加するよう勧めています」
セルフ・リーダーシップ・スキルを磨く
8年間MDRT会員のNick Longo, MFP, APFPは後輩をメンタリングすることで、自身がかつて指導されて得た学びが自然と引き出されると言います。中でも特にセルフ・リーダーシップが養われると感じています。「月に一度の振り返りミーティングがセルフ・リーダーシップを磨く時間となっています。これは最も重要なリーダーシップ・スキルであり継続的な改善と成長に直結します」と述べます。
さらに、規律とコミットメントもメンタリングを通して養われる重要なスキルです。「これらは日々の小さな成功を積み重ねることで育まれます。そして、ビジョンと結びついていなければなりません。メンティーと話をすることは、私自身のビジョンを見直す機会にもなります」と彼は述べます。
Longoはこれまで世界各地の5人のメンティーを指導してきました。若手からベテランまで年代はさまざまです。
「指導することで、かつてビジネスで成功した方法を思い出し、それを今は実行していないことに気付かされます」と述べます。
Pogonowskiは、全てのMDRT会員にメンタリングを強く推奨しています。「もっと大きな視点を持ってください。メンタリングは自然なステップであり、未来のリーダーたちの価値観と倫理観を育成することです」と言います。
「メンタリングはメンターにとっても非常に有益です。自分の努力が複利的に報われ、結果的にビジネスの成長にも繋がります。そして何より精神が活性化されます」とLongoは述べます。