Marinaというとても優秀なアシスタントがいます。研修中にどんな事務処理にも取り組み、マーケティング資料を作成し、驚くべき文章力を発揮し、多くのことをこなしました。しかし、最初から今のようにうまく調和できたわけではありません。9年間MDRT会員のCecilia Tsang, CFP, B Comが各スタッフにコーチをつけたことで変化が起きました。
「彼女は人との交流で元気が出るタイプなのですが、当時はその機会があまりありませんでした」と振り返ります。コーチはテストで人の根底にある性格や特性を特定し、今の仕事がどの程度本人に合っているのかを解明します。「彼女は私と一緒に面談に参加するようになり、その仕事をとても気に入ってくれて実力を発揮するようになったので小型案件のクライアントとの商談を彼女にやってもらうことにしました」
「好きなことをやっている人は顔に表れ、輝いています。チームの全員が輝いて全力を尽くしているとき、彼らは心から満足し、仕事に来ることに喜びを感じています。そのときチームに本当の成長が訪れます」
ほとんどのアドバイザーにとって、コーチングの利点は目新しいものではありません。しかし、MDRTの仲間が外部の意見や教育を取り入れ、ビジネスとそれをバックオフィスで支えるスタッフをより高いレベルに引き上げた実例を知ることは、実用的な知恵となるでしょう。
団結と成長
13年間MDRT会員のGeorge T. Morris, CFP, MBAも同様の視点を持っています。昨年、チーム全員を投資会議に連れて行き、全員がさまざまなセッションに出席して収穫を得ました。また15のニュースレターを定期購読して、自分を含むチームの全員が定期的に情報を得る機会を設けています。
それだけではありません。トレーニングによってビジネス全体に一貫性が生まれることを実感しました。時には見過ごされがちな分野も含めてです。例えば、Morrisはチーム全員(マーケティング、ファイナンシャル・プランニング、投資、保険を担当する4人の正規社員と、「ユーティリティー外野手」と呼ぶほど万能な事務担当のフルタイム・スタッフと数人のインターン)を連れて、Sandlerのセールス・トレーニングに参加し、役割に関係なく全員が同じ言葉を使えるようにしました。
「たとえ営業サイクルに関わっていなくても、チームの誰かが『Stay behind the pendulum(先走るな)』と言えば、全員にその意味が通じます」と言います。彼は現在、勇退を控えた約140人の顧客にサービスを提供し、合計3,500人の顧客を担当していますが、その数を減らそうとしています。
好きなことをやっている人は顔に表れ、輝いています。 チームの全員が輝いて全力を尽くしているとき、 彼らは心から満足し、仕事に来ることに喜びを感じています。 そのときチームに本当の成長が訪れます。
—Cecilia Tsang
Morrisのトレーニングに対する哲学は社内の言葉のみならず顧客とのやり取りにも及び、ビジネスに短期的にも長期的にも影響を与えています。3〜6カ月間を区切りとしてフィーベースのファイナンシャル・プランニングを行うという契約サイクルを確立していますが、全員に同じトレーニングを受けてもらうことでその継続性が確保されています。
「クロージング意識の高いアドバイザーがいたとして、全8回の面談のうち3回目でクロージングをしようとしたら、お客さまの目線に立つと問題になるでしょう」と指摘し、セールス・トレーニングは問題解決のためではなく一貫性確保のために行うことを強調しました。
また、事務スタッフにもセールス・トレーニングを受けてもらうことでメリットが生じると言います。セールスは摩擦をなくすことが大事ですが、時として管理業務はストレスの火種になります。あるスタッフが最近、長年お付き合いのある顧客にメールを送り、大量の情報への回答を求めたのですが、それは「お客さまが押しやすいボタンであるべき」という社是と矛盾する行為でした。
「情報は必要ですが、私たちはすでに多くの情報を持っていました。進行中のセールス・サイクルに摩擦を加えたいのか、あるいは潤滑油となるのかという問題です」と前置きした後で、お客さまが加入・購入する商品に関して想定される課題を詳しく説明しようとするチームの堅実なアプローチを誇りに思うと付け加えました。その結果、7年間も失効契約はありません。「セールス・トレーニングを受けていなければ、しっかりと理解されなかったでしょう」と述べました。
コーチング能力
Tsangは「楽で前向き」を求める願望に共感します。彼女は2人目のコーチを雇い、チーム全員の教育に専念してもらいました。コーチに求めたのはフルタイムのファイナンシャル・プランニング担当者と事務スタッフ、勇退目前の350世帯を担当するパートタイマー数名に対してTsangが提供したい顧客体験のビジョンと感情を体現できるようにすることでした。
担当者はマルチタスクにかけては非常に有能でしたが、Tsangが求める温かみのあるコミュニケーションに苦労していました。コーチは9カ月間チームメンバー一人ひとりに向き合い、その担当者のプロセスや言葉遣いがTsangが目指す顧客体験のビジョンともっとマッチするにはどうすべきかを理解してもらう手助けをしてくれました。
「チームは微調整に取り組んでくれました。顧客がくつろいだ気持ちになれるようにアイコンタクトやほほ笑み、温かみの示し方などを研究しました。あるスタッフはとても内向的で自信がなかったのですが、挨拶の練習をすることで自信がつき、コンフォート・ゾーンから抜け出せました」
常に向上し続ける環境を 整えることがすべてです。
—George Morris
2020年にコーチが「チーム・コーチングをやってみる価値があるかもしれない」と提案してきたとき、そのコーチとの付き合いは7年目を迎えていました。その提案を受け入れるのにためらう理由はありませんでした。Tsangはできることなら常に向上したいと望んでおり、チームは自分の仕事の延長線上にあると考えています。
「私たちはチームです。本当に良い結果を得るには協力し合わなければなりません。だからこそチームがコーチングを受けるための投資は積極的に行いました」
Tsangの会社ではアドバイザーにコーチをつけることを奨励しており、別予算を組んでインセンティブを設け「コーチングがより早い成長に繋がる」という信念を確立しています。Tsangはこの14年間で合計4人のコーチを雇いました。最も際立った教えは、週5日顧客と面談していたのをやめて週2日は他の仕事をする時間に充てることです。その成果はチームの継続的な進歩に表れています。
Tsangは長い間、人を雇うことに消極的で、チームを「順調に動く機械」になぞらえ、その活力と効率性を維持したいと考えてきました。多くのアシスタントやチームメンバーと同様に、適任でない新入社員を雇い入れてしまった場合の煩雑な人事業務を嫌っています。しかし、自分の仕事の処理能力には限界があり、顧客の数を減らすこともできないので(今は紹介をお断りすることがあります)、自分もチームも燃え尽き症候群に向かっていると感じていました。
「今の段階では、さらに2人雇って成長を続ける余力があります。私はずっとチームを大きくすることに反対していましたが、コーチングによって感情をコントロールでき、チームも強化されました」と言います。
継続的な教育
人間は学ぶことへの衝動が止まらないのは明らかです。
Morrisのオフィスで行われているアプローチを見てみましょう。毎週行われるミーティングでは、各スタッフがビジネスに関連する学びを5分間で共有し、1人が1時間かけてさらに深く掘り下げて他のメンバーと共有します。例えば、新人社員が他の社員がすでに知っていることを学んで共有したとしても(保険引受人のプロセスに関するプレゼンテーションで実際にあったように)、その新入社員が得た学びとサポートは、チームの発展と成長という目標に合致しています。
そのような環境はスタッフの定着と安定にとって理想的です。スタッフに学びと刺激を与えるだけでなく、Morrisが勧める教育を受けられないときでも発言する力を与えます。バージン・グループの共同創設者であるリチャード・ブランソンの言葉「社員がいつ辞めてもいいように十分に教育し待遇をよくすれば、辞めたくなくなる」と見事に合致します。
「壮大な教育も比較的単純な教育も、常に向上し続ける環境を整えることがすべてです」とMorrisは強調します。