優秀な事務アシスタントを採用したいと思っても有能な人材は既に確保されており、求人サイトでは条件に合わない応募者ばかり、という経験はありませんか。もしそうなら、探す場所を変えるべきかもしれません。
20年間MDRT会員のJoshua John McWilliam, CFP, FMAはゴルフ場で飲み物のカートを運ぶ仕事をしていた女性をアシスタントとして採用しました。今から13年前のことでした。
「私の採用方針は経験をほとんど重視しません。大切にしているのは人柄、勤勉さ、信頼できることと責任感です。彼女に惹かれた理由はゴルフ・クラブのメンバーが皆、彼女のサービスに満足していたことです。メンバーの飲み物の好みを把握し名前で呼びかけるなど、顧客サービスが一流でした」と語ります。
彼女は金融サービスの経験はありませんでしたが、自主性と責任を持って仕事に取り組む姿勢が見られ、一から十までこと細かく指示をする必要がないと判断しました。
「思い切って顧客対応にしぼり、彼女をトレーニングしました。接客に優れていることは既に分かっていたので、そのスキルを他の業務にも応用できると考えました。結果的に非常に優秀な人材となりました」と述べます。
その数年後、地元のコーヒー・ショップでバリスタとして働いていた女性もアシスタントとして雇いました。
「彼女も同様でした。自立した仕事ぶりで、私の注文を把握していました。気さくでとても好感が持てました」と語ります。彼女もオフィス勤務になって数年になります。「2人とも非常に素晴らしい人材に成長しました。保険、投資、ファイナンシャル・プランニング、オフィス業務の経験はありませんでしたが、人柄を重視して採用し、必要な業務に合わせて育成する方針で、大きな成果がありました」
求人の工夫
5年間MDRT会員のAmy R. Fullenkampはオンライン・コミュニティーの掲示板に求人情報を掲載する際、あえて仕事内容の詳細な説明を控えるようにしています。一般的な業務について「事務処理とオフィス作業の補助」「顧客対応」など5〜6項目の箇条書きのみにします。
「女性は自分に該当しない業務内容があると応募をためらう傾向があります。そうなると候補者を逃してしまうことになります」と言います。
LinkedInやHarvard Business Schoolによる複数の調査で、女性はほぼ全ての条件を満たしていないと応募を控える傾向があることが明らかになっています。男性は対照的で、条件を全て満たしていなくても応募するケースが多いとされています。
「常に変化が伴う業界です。新しい書類、プロセス、コンプライアンスに適応し、私と共に柔軟に対応してくれる人が必要です。職務自体が変わる可能性があるため、特定の職務に対しての求人はしません」と述べます。
彼女は学歴条件も設けません。
「アシスタントに求められるのは粘り強さや自主性なので、特に学位を重視する理由はないと考えます。自ら調査し積極的に行動する姿勢が大切です。学位の取得過程でこうした力が身に付く場合もありますが、持って生まれた資質が大きいと思います」と言います。
学歴の代わりに彼女が重視するのは「奉仕の心」が必要な職業の経験です。教員や保育士、マッサージ・セラピスト、飲食店のホールスタッフや調理補助など、人を思いやる姿勢が求められる仕事の経験を評価します。
面接時に候補者の受け答えが優秀でなくても問題としません。完璧な受け答えをする人は暗記しているだけかもしれないからです。
「私が求める人材は面接で良い結果を出せません。人のために働くことが使命のような人に、自分の自慢話をしてほしいと頼むようなもので、本来の性質からしてうまくできないのです」と述べます。
面接
採用担当者の中には性格診断テストを使う人もいます。Fullenkampは米国陸軍州兵として26年間勤務した経験をもとに応募者を選考します。15分間の面接でサポートしてくれる人材を見極めるためにユニークな質問を編み出しました。
- 最近新しく学んだことは何ですか?
「先日面接をした女性にこの質問をしたところ、『かぎ針編みを覚えました。祖母がしていてずっと学びたかったのです』と答えました。かぎ針編みは根気が要り、数字を扱う作業でもあるので適任だと思いました。また別の人は、『職場でやったことのない作業を頼まれました。戸惑いましたがGoogleで調べて解決しました』と答えました。この質問から、学ぶ姿勢が見えてきます」と述べます。 - 上司から厳しいフィードバックを受けた経験はありますか。またそれにどう対応したか教えてください。
「この経験がないという人は要注意です。誰もが一度は厳しい指摘を受けたことがあるはずです」 - あなたは「計画的な人」「深く考える人」「まず行動する人」のどれだと思いますか?
「この答えに正解はありません。問題解決へのアプローチ方法を探るための質問です」 - 前職の同僚や上司はあなたをどのように評価していたと思いますか?
「直接強みを聞くのではなく、他人がどう評価していたかを聞きます。この質問により、どうチームに貢献していたかが分かります。また、苦手な顧客や同僚についても尋ねます。この質問の答えは興味深いです。ある人は常に指示ばかりしてくる女性が苦手だと言いました。この返答から、指示を受けることが多いこの職場には向いていないと判断できます」
他にも「電話対応は得意ですか?」「弊社について知っていることを教えてください」といった質問もします。後者の回答から、事前準備をしてきたかが分かります。『投資を扱っていることは知っていますが、詳細は理解していません』と答える人は、前向きな姿勢があると見なします。入社したら、来社されるお客さまが要求することについて、事前に調査をすることが不可欠です」と言います。
レファレンス・チェック
Fullenkampは面接で得た候補者の印象を推薦者からも確認します。過去の職場の3人から推薦状(アメリカでは一般的)を提示してもらい、少なくとも2人に連絡を取ります。最初の2人の評価が分かれた場合には3人目にも確認します。推薦者との面談は相手の時間を尊重して5分程度にとどめます。元マネージャーや経営者には必ず、この人を再雇用するかと尋ねます。答えが曖昧な場合は「再雇用するとしたら同じ職務ですか、異なる職務ですか?」と答えやすい質問に変えます。過去には「彼女が転職活動をしているなんて知らなかった。もし採用しないのであれば、ぜひ知らせてほしい」と申し出たマネージャーもいました。「元雇用主が再雇用を望むのであれば、逸材だという証明です」と述べます。
「この方について教えてください」と推薦者に尋ね、最初に出てくる表現に注目します。
「候補者がチームに在籍していた間、職務内容の変化や昇給がありましたか?」
「この問いかけで候補者が成長した、あるいは職務を増やすだけの価値があると判断されたことが分かります。また学習能力があり、内面から成長できることを示しています」と述べます。それでも候補者について十分な確信が持てない場合は「職場でプレッシャーのかかる状況があった時、どのように対応しましたか? コントロールを失ってしまったのか、それとも価値を提供できたのか」と質問します。
研修
Fullenkampが採用にこの方法を取り入れた2016年以降の退職者は定年退職者のみとなっています。採用の成功は研修にどれだけ意欲的に臨むかが基盤になると言います。一般的に業務をマスターするには、少なくとも3回の反復が必要です。新入社員が金融サービス業務に携わるのは四半期に1回、あるいは年に数回程度の場合もあるので、研修に数カ月かかることがあります。
「癖のない素直な人材が欲しいので自ら積極的に研修を行います。そうすることでもっと多くの原石を見つけ出せます」と言います。彼女の事務所には5人のアドバイザーと9人のアシスタントがおり、その中には、4年前に未経験で採用された元保育士もいます。彼女は現在オフィス・マネージャーとして活躍しています。
McWilliamもまた、強固なチームを築く上で研修の重要性を強調します。
「習得までに時間がかかるかもしれませんが、長期的な雇用を見据え、その人材が将来的に一定の役割を担えると感じたら、時間をかける価値は十分にあります」と語ります。