見込客探し、顧客との面談、そしてクロージング。ファイナンシャル・アドバイザーはこれらに多くの時間を割くため、長期目標の設定やビジネスへの取り組みが後回しになりがちです。しかし、事業計画の先延ばしを克服したMDRT会員によると、スタディー・グループ、1対1のビジネス・コーチ、ピア・グループなどを利用することによって集中力が高まり、説明責任が発生するため、大局的視点に立つことを怠らなくなると言います。
マインドセットの調整
アドバイザーは顧客とのやり取りが収益アップの原動力となるため対面時間を減らすとビジネスに支障が出ると思い込んでしまうことがあります。しかし、収益性と効率性はプロセスがうまく機能しているかにも左右されるので、アドバイザーだけの問題ではありません。
「アドバイザーは顧客に大きな影響を与えられる魅力的な仕事です。顧客と築く関係性やそこから得られる報酬にやりがいを感じます。それに目を背けて事業計画に取り組むことは手をつけるべき場所やアイディアが多すぎて、空回りしているような気分になるかもしれません。また、成功が罠になることもあります。もはや改善の必要はない、と思い込むほうが簡単です」と20年間MDRT会員のJohn J. Demboski, CFPは指摘します。
Demboskiはあるスタディー・グループに招かれたことで戦略を練るのに重要な分野に注目するようになりました。それをきっかけに人事マニュアルの作成、従業員の人事査定の実施、節税のための会社の組織改革、テクノロジーへの対応、AIツールの精査といった仕事に取り組むようになりました。
「事業計画に取り組む場合、第三者の視点が必要です」と強調します。事業計画に対する考え方を改めるために「外部の力」が必要だったと言います。「ほとんどの金融専門家は事業経営に関する用語や概念を詳しく知りません。その結果、自分のビジネスに戦略的に取り組もうとしても、最初の一歩をどこに踏み出すのか決めるのにとても苦労します」
また、顧客との関係から得られる刺激は、ビジネスの改善に取り組むよりもやりがいがあります。特に雇用慣行の見直しや新規顧客の受け入れプロセスの文書化に取り組んだとしても、その投資効果に即効性はありません。だからこそ、同じようにやりがいを感じられる方法を模索することが事業改革への意欲を高める鍵となるのです。
「戦略的プランニングにやりがいを感じられるようにするには、自分の性格に合った方法を選ぶことです。グループでの対話よりも1対1のコーチングを好む人はその方法を選んでください。また、一度に1つの業務改善に集中してください。最も重要なことは、自分が楽しめる戦略から着手し、最後までやり遂げることです」とDemboskiは言います。
説明責任の重要性
コーチであれ、ピア・グループであれ、スタディー・グループであれ、外部のサポートを活用することでより明確な目的意識を持って事業計画の変革に取り組めます。
「自分にプレッシャーをかけるのです」と、9年間 MDRT会員のSarah Helen Hogan, ACIIは言います。「もしあなたが経営者なら、人に任せることが得意であってほしいものですが、あなたに責任を負わせるのは誰でしょう」
Hoganはプランニング・コーチと共に体系的な3カ年プログラムに取り組んでいます。3カ月ごとにミーティングを行い、マーケティングや顧客セグメントなどのトピックに焦点を当てます。事業経営は孤独なもので、「事業計画についてチームで話し合うのは必ずしも適切ではない」と主張します。
「会社の上層部であっても、経営のことで心配をかけたくないことはよくあります。だからアイディアを出し合ったり、自分のビジネスに起きていることを話し合ったりできるような外部からのサポートが必要です」と言います。
11年間MDRT会員のAaron Kane, B Bus, AFAは、所属するピア・グループでは説明責任が優先され「ここは安心して相談できる場だといつも感じています」と語りました。メンバー同士で欠けていると思われるアプローチを辛辣に指摘することもありますが、そのアドバイスが個人攻撃や批判と見なされることはありません。
「私たちはアイディアは常にバラバラに分析され、指摘を受けるものだと考えています。誰かがその週の活動を報告すると『相棒、これが年間目標か。ちょっとお粗末だな』と率直にコメントします。他意がないことはお互い分かっているので安心して発言できますし、いい意味でお互いを高め合っています」とKaneは言います。
ピアグループ、スタディー・グループ、コーチは組織を確立するためのものでもある、と20年間MDRT会員のJoel Phillip Campbellは指摘します。
「組織が必要でその一員でいるのが好きな人には効果的です。クライアントへの対応に終始するだけでなく事業として取り組めるようになります」と強調します。
良いことも悪いことも
事業戦略や改善のための計画を立てていると「3歩進んで2歩もどる」ような感覚に陥ることがあります。しかし、試行錯誤はチャレンジの一部に過ぎません。これに対してベテランMDRT会員も「諦めないで」とアドバイスをしています。また、ほとんどの場合、ゼロから始める必要はないとHoganは言います。
「二度手間は必要ありません。もしフォーカスしたい分野があるなら、MDRTにはすでに経験した人が必ずいるはずなので、その人を探せばいいだけです」と提案します。
彼女のチームが取り組んできたリーダーシップ・トレーニングには効果がありましたが、今後も順調に進めるためには継続的な努力が必要です。「メンバーがそのスキルを活用できているかを確認するために、常に注意を促す内部コーチングが必要だと考えています」
「成功は画一的な方程式ではなく、自分に合うものを見つけることが鍵です」10年間MDRT会員のMindy S. Helfrich, CDFA, CLTCは少人数のスタディー・グループを好みます。
「私はすぐに人と親しくなります。誰とでも話せて友達になれます。人と繋がるのが好きなんです」
Helfrichにとって、少人数のグループのほうが人間関係を深められるため、より大きな価値を感じます。またコーチの支援は断続的に受けています。
「コーチングから離れる時間も必要です。自分の計画を実行に移すためです。コーチングを受けるたびにビジネスは大きく変化するので、最終的にコーチングから離れてそのコーチと立てた目標に取り組む時間が必要です」と言います。
外部からのサポートがすべて有意義とは限りません。Campbellは前職で12名のアドバイザーのモチベーションを高めるために複数のコーチが雇われたときに、この教訓を得ました。
「コーチ陣は『顧客に対して収益目標を設定する』という課題を課しました。『もし、顧客がこれだけの報酬を支払っていないならば、別の顧客に対応する必要がある』という感じでした」と振り返ります。
しかし、この会社のニッチ市場は退職後の生活設計を考えている学校教師であったため、彼らに請求できる金額には限界がありました。そこでCampbellはもっとリーダーシップに特化した別のコーチング・チームに移りました。この経験からプランニングの段階で経営とアドバイザーの目標を理解し、その両方を調整できるコーチを探すことに尽力するようになりました。
「私たちはコーチを教育し、ビジネスを理解してもらいます。コーチが私たちのために何をしようとしているのかを知るために、より詳細な情報を得るようになりました」と言います。
Kaneもコーチを使った経験があります。その結果、顧客への過少請求をやめるようにアドバイスされました。この助言はKaneにとって決定的でした。オーストラリアで働くKaneは、当時アドバイザーの報酬をコミッション制からフィーに変更する規制改革に直面していました。新ガイドラインのもとでアドバイザーはすべての顧客から年間定額報酬への事前同意を取り付ける必要がありました。「そんなとき、コーチの最初の仕事は私が過少請求していると伝えることでした」と振り返ります。
フィーを大幅にアップすることをクライアントにどのように説明し、話し合うかについて指導を受けました。「それは多くの顧客との決別を意味していました。実際に100人ほどのクライアントを失いました。まだ契約を継続している方もいますが、フィーを支払ってアドバイスを求めるクライアントではありません」
その結果、Kaneの会社では顧客数を半分の150に減らし、売り上げを4倍に伸ばしました。この18カ月のプロセスによって顧客との接し方も勉強し直しました。また、仕事と私生活のために使える時間が増えました。
「チームを強化し、家族との時間も増やせました」とKaneは語ります。