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あなたの事業に役立つプロセス
あなたの事業に役立つプロセス

11 01 2022 / Round the Table Magazine

あなたの事業に役立つプロセス

プロセスを重視することでビジネスがどう変化したかシェアします。

対象のトピックス

Jason L. Smithは心臓の病気で手術が必要と診断されたとき、脳裏にさまざまな心配事が浮かびました。そして自分に万が一のことがあっても、会社によって家族が守られるようなシステムやプロセスを構築しておこうと考えました。

2006年当時、オハイオ州の17年間MDRT会員はパートのアシスタントを1人雇って1人で事業を行っていました。同年トップ・オブ・ザ・テーブル会議に初めて出席したとき、そのエリート集団の中で最も成功しているアドバイザー達はプロセスを重視していることに気付きました。そこで全ての業務を文書化し、ツール(クライアントや従業員と仕上げる書類やエクササイズ)とコンセプト(クライアントに商品や目的を説明する視覚映像やストーリーなど)に分類しました。さらにそのツールとコンセプトに番号を付け、アドバイザーがクライアントと行う表舞台のタスクと、最高の顧客体験を準備する舞台裏のタスクのチェックリストを作りました。両舞台は互いに混じり合い、どのチームメンバーがどの仕事を担当するのかが明確になりました。

「プロセスを作りそれをツールとコンセプトに分類したことで、アドバイザーやスタッフのトレーニングが非常に容易になりました」
—JASON SMITH

「プロセスを作り、ツールとコンセプトに分類したことでアドバイザーやスタッフのトレーニングが非常に容易になり、それを確実に実行するためのアカウンタビリティー・チェックリストもできました」とSmithは述べます。

これは経営戦略コーチに助けてもらいながら、ビジネス・プロセスで業績を改善した初の試みでした。その中でSmithはMichael E. Gerberによるビジネス・マネジメント・プランThe E-Mythを研究しました。このプランは同名の書籍に基づいており、中小企業が失敗する原因の多くはシステムではなく一個人の力に依存しているからだと主張します。システムの導入は予測、目標設定、キャッシュフローの追跡などビジネスの原則を確立する助けになりました。その後アドバイザーの離職率が高くなったときには、定着率と企業文化の向上を目指してPatrick Lencioniが提唱する組織を健全にするための原則を学びました。The Advantageの著者であるLencioniによれば企業が健全になるのは完全で一貫性があるとき、また経営・業務・文化が一体化しているときです。

今日Smithの会社(代理店)はアドバイザーを含めて12人の従業員を抱え、2021年度は8200万ドルの新規顧客資産を集めるまでになりました。最近はGino Wickmanの著書および経営プランTractionに基づく起業家オペレーティング・システム(EOS)を導入しています。このシステムは経営者が大きな目標の達成に向けて、課題に優先順位を付けてその解決にフォーカスするための原則を提供します。

プロセス、システム、経営プランと呼び名はさまざまですが、業務上のリソースを最適に利用するためのロードマップを持つことはアドバイザーがミスや遅れを回避し効率性や生産性、顧客満足度を向上させる助けになります。しかしプロセスを重視すると言っても、総合的なスキームやワークフローを業務の機能ごとに全て文書化する必要はありません。このような包括的なシステムを導入するには小規模な業務もあります。

任務ごとにプロセスを踏む

オレゴン州の12年間MDRT会員Timothy Daniel Clairmont, CFP, MSFSは気の合う人々とランチやディナーを楽しむだけでなく、COI(訳注:center of influence、直訳すると影響力の中心。見込客を紹介し合う弁護士や会計士などの後援者)との関係を次のレベルに引き上げることにもっと意図的になりたいと考えました。そこで彼は連絡先を職業別に分け、クライアントに紹介できる人が豊富にいる職種と不足している職種を確認しました。また映画ネバー・エンディング・ストーリーでバスチアンが第一の関門と第二の関門をくぐって第二の神託にたどりつく映像にヒントを得て、門を作りエクセルでCOIをランク付けしました。

最初の関門ではCOIの商品、価格、品質を0点から最高10点で評価しました。10点の人はクライアントに紹介する可能性があるCOIのリストに残します。第二の関門はサービスに関するもので迅速な対応ができるかどうか、こちらから追いかけないと何もしないかといった項目をこれも0点から10点で評価しました。第三の関門は報われるかという視点です。過去12ヶ月間に新しい人を紹介してくれただろうか?第4の最後の関門は心が通じ合うかどうかです。ビールやコーヒー、食事などで1時間共に過ごすくらいその人のことが好きだろうか?

「理想を言えば全てのカテゴリーで10点を取れる人がいると良いのですが、それは現実的ではありません。そこでエクセルを見ながらプロセスに従ってランク付けしました。10点が何人かいる場合、1位2位3位と順位付けします。各カテゴリーでNo.1の人を10名選び、紹介パートナーとしてそれぞれの方と四半期ごとにランチに行くようにしました。トップレベルの人達とつながりを持ち、四半期ごとに1時間ずつコーヒーやランチを共にすれば、膨大な量の紹介をいただけます。ソフトウエアも特効薬も使っていません。ただ明確に考え、それを少し整理してプロセスを意図的に進めただけです」とClairmontは語りました。

知識を外に漏らさない

意図的に知識を文書化して、他の従業員や新入社員に知識を伝達することもできます。

オーストラリアの10年間MDRT会員であるAmanda Cassar, MFP, AFPはフィリピンにいるバーチャル・アシスタントから退職することを聞かされたとき、手順マニュアルをビデオに残しておいてほしいと頼みました。アシスタントはマイクロソフトのオンスクリーン・ビデオ・ストリーミング・ソフトウエアを使ってデータ入力、顧客のリスク・プロファイル、手数料管理などの手順を他のチームメンバーに引き継ぐと同時に画面共有を記録するよう訓練しました。18ヶ月後の現在、Cassarの会社には20本以上のビデオから成るオンライン・マニュアルがあります。

「手順や方針のマニュアルは皆が必要としているものなので、ふつうは書くものです。しかし誰がその作業を行い、どのくらい時間が必要でしょうか。立派なマニュアルが出来上がったとしても、棚の隅でホコリをかぶっているかもしれません。それは生きた文書とは言えません。特にZ世代は仕事のやり方を本で調べようとはしませんが2分間のビデオを見ることはできます」とCassarは述べました。

「ソフトウエアも特効薬も使っていません。ただ明確に考え、それを少し整理してプロセスを意図的に進めただけです」
—TIMOTHY CLAIRMONT

テキサス州の23年間MDRT会員Mark D. Olson, CFP, MSFSはリタイアメント・プラン・セミナーの開催およびファイナンシャル・プランのために構築した2つのプロセスのおかげで10人のアドバイザーとアシスタントから成るチームの仕事が速く正確になったと考えています。プロセス主導になったきっかけの1つは、Atul GawandeのThe Checklist Manifestoを読んだことでした。チェックリストが単なる操作マニュアルではなく、お客さまやコンプライアンスにとって重要なステップを見逃さないためのツールであることを学びました。

これまでファイナンシャル・プランはエクセルで作成し、印刷したものをクライアントのファイルにホチキス留めしていました。アドバイザーやアシスタントが進行状況を確認するためにチェックリストが必要なときは、オンラインで物理的なファイルの保管者を調べなければなりませんでした。その後この面倒なプロセスはDropboxに移行しましたが、チームメンバーが同時にコンテンツにアクセスして作業できないため依然として非効率的でした。

ここ数年でチームはチェックリストに手を加え、現在セミナーやファイナンシャル・プランニングのプロセスは細部に至るまで顧客管理システム(CRM)のワークフロー・アプリに統合されています。年間約125件のプランを作成し、異なる場所で働く複数のチームメンバーは、無駄な作業をすることなく同じクライアントのファイルにアクセスできます。1つのタスクが完了するとワークフロー上の次の項目がプロセス・チェーンの次の担当者に送られます。

「ワークフローをCRMで行うことは、プロセスの観点から言って非常に効果的であり、以前よりも迅速かつ正確にファイナンシャル・プランを作成できるようになりました」とOlsonは言います。

プロセスと文化

Olsonはこのようなプロセスがオフィス文化を維持することにも役立っていると言います。1つのタスクが終わると次のタスクの期限が設定されます。Olsonの会社は最初の面談から3ヶ月以内にファイナンシャル・プランをお届けすることを目標にしています。ある手順が遅れた場合、犯人捜しをするのではなくプロセスを調べて遅れの理由を見つけ、修正する努力をしました。クライアントからの情報を待っていたというケースがほとんどです。

「共通の目的に向かい、共通の情報を持って仕事をすれば、誰が何をするべきか食い違いが生じにくくなります。多くの誤解は2人の人間が異なる情報を持っていることから生じると思います」とOlsonは語りました。

Chee Hong Gan (Vincent), ChFC, CLUの代理店では自発的な離職が問題になっていましたが、システムやプロセスを導入したところパンデミック以降は4人の直接雇用のスタッフが誰も退職しないまで定着率が高くなりました。シンガポールで活躍する13年間MDRT会員のGanと彼のチームには2つのシステムがあり、1つはアドバイザーが直接お客さまに対応するためのもの、もう1つは彼が代理店のリーダーとしてアドバイザーやスタッフと共に日常業務を管理するためのものです。

「共通の目的に向かってまた共通の情報を持って仕事をすれば、誰が何をするべきか食い違いが生じにくくなります」
—MARK OLSON

このシステムをメールチェーン、Slack、Microsoft Teams、テレグラム、WhatsAppなどのコミュニケーション・プラットフォームで試してみましたが、最終的にはSharePointのイントラネット・サイトに落ち着きました。毎月のミーティングではスタッフが自動化できる反復作業といった効率の悪さを指摘したり、これまでになかったお客さまの要求に対応するためのテンプレートを追加することを提案したりと意見を出し合い、それに対して継続的な改善策を講じています。

付加価値の高いクライアント・サービスには、高価なテクノロジーよりもシステムに手を加えるだけで済む場合があります。例えばパンデミックの行動制限が解除され人々が旅行を再開したとき、一部の旅行保険会社は内容を変更して、旅行から戻った後にCOVID-19の感染が分かった場合には関連費用を補償しないことにしました。つまり旅行中にウイルスに感染したと思われても症状が出るのが帰宅後であればその保険は無駄になってしまいます。そこでGanのチームは旅行保険に加入したお客さまが帰宅する日に「おかえりなさい」メッセージを自動的に配信し、体調に問題がないか保険金請求のお手伝いが必要かを尋ねるテンプレートを追加しました。

「スタッフとはレベニューシェア(訳注:利益をあらかじめ決めておいた配分率で分け合うこと)を行い、何かを変更するときは必ず参加してもらっています。日々の業務に関わる変更もあれば、プロジェクトに関わる変更もあります。試験的プロジェクトを導入するときも時間の節約あるいは相互作用や収益を増やすためにシステムを移行したいと説明すれば、スタッフは上司のためだけでなくチーム全体と全員の利益のために行っていることを理解してくれます」とGanは述べました。

プロセスを重視することでアドバイザーは全体像を見渡し、単にビジネスを扱っている(work in)だけでなくビジネスに取り組む(work on)ことができます。SmithはEOS(起業家オペレーティング・システム)を3年近く使っていますが、あまり時間をかけなくてもヘリコプターの高度から事業を俯瞰することができます。彼は毎週チームと90分間のミーティングを行い、その週に会社が直面した最も緊急な問題について議論し解決に取り組んでいます。また四半期ごとにロック(EOS用語で四半期の優先順位)を設定するミーティングや、年に1度2日かけて年間目標を決めるミーティングを行っています。

「このようなプロセスにより私はファイナンシャル・アドバイザーから経営者になることができました」とSmithは述べます。

Olsonはプロセス主導で継続的な改善を図ることにより、プライベートな時間を確保し優れた顧客体験を提供できると付け加えました。「お客さまを獲得することは大変なことなので、プロセスをできる限り優れたものにしなければなりません。プロセスを活用すればするほどお客さまを維持することができ、より良いビジネスを紹介していただけます」と語りました。

CONTACT

Amanda Cassar amanda@wealthplanningpartners.com.au

Timothy Clairmont amanda@wealthplanningpartners.com.au

Chee Hong Gan vincentgan@thevinceproject.com

Mark Olson mdolson67@gmail.com

Jason Smith jsmith@c2penterprises.com