4年間MDRT会員のLi Yangと3年間MDRT会員のSho Mori(森 翔)は前職で病院や診療所に勤務し、患者の診察や回復を助ける治療を行っていました。ふたりはそれぞれ医療従事者を辞めましたが、その経歴から新たな方向に進みました。Liは医師さながらに顧客に財務診断を提供するプロセスを開発し、森はニッチ市場を特定し、医療専門家に長期的なファイナンシャル・プランニングを提供するビジネスを構築しました。
プロセス
アドバイザーになる前、Liは臨床医学の学位取得を目指していました。しかし、妻も同様に医学の学位取得を目指していたため、ふたりが医師として働けば、家族と過ごす時間が限られてしまうことに気がつきました。金融サービスへの転身は柔軟な働き方をしたかったということもありますが、医師が身体的な病気を治すのに対し、保険は経済的な病気を治すと実感したためでした。
当初は損害保険に携わっていましたが、医学の専門知識を生かせる生命保険に成長の可能性を感じました。そこでLiは医師の方法論と同じアプローチを採用しました。
「保険プランニングには医療と同レベルの専門的な厳しさをもって取り組んでいます。お客さまとの面談では医療相談と同じように 『財務診断』と呼んでいるものを行います。お客さまのニーズ、家族構成、支出、経済状況、借入債務などについて総合的な情報を収集します。また、将来の希望についても伺います。このような徹底的な診断を経て、お客さま特有の状況に対応したオーダーメードの保険ソリューションを設計します」 と語ります。
医学の知識に加え、Liは保険金請求と引受プロセスに関する深い知識もあります。この組み合わせが差別化要因となっています。
「通常、お客さまの最大の不安は、引受査定に通るかと、保険金請求プロセスが効率的に進むかの2点に集約されます。私は保険金請求と引受の両方に携わってきたのでこれらの手続きを十分に理解しています。そのため自信を持ってお客さまにご案内できます」
歴史的に中国では、生命保険が提供するリスクに対する保障への意識が低いため、Liは保障があるメリットについて見込客に啓蒙することに尽力しています。
「パンデミックの影響で人々の意識が高まり、情報へのアクセスが良くなったことで保険が受け入れられるようになりました。一方で、保険の概念を理解し、適切な保障戦略を立てる手助けができる専門的なアドバイザーが足りていません」と語ります。
この知識格差を埋めるためにLiは商品の種類や役割、保険加入時の主な注意点など、保険の基礎知識を顧客に教えることに時間を割いています。「こうした基本的な知識を皆が共有することで、私たちの面談はより生産的で有意義になります」
ニッチ
Liが体系的な診断に基づくアプローチでビジネスを構築したのに対し、元作業療法士の森は医療業界でニッチを切り開くことに注力しました。彼の金融サービスへのジャーニーは2度の交通事故を経験した後で思いがけず始まりました。最初の事故の後、自分の古い保険からは給付金が払われないことを知り、もっと良い保険に加入しようと決めました。2回目の事故では、新しい保険で無事に給付金を受け取ることができ、自分の決断は正しかったと確信しました。この目からうろこの体験によって、彼は安定した病院の仕事を辞め、ファイナンシャル・アドバイザーに転身したのです。
見込客探しはかつての病院の同僚たちからスタートしました。看護師、理学療法士、薬剤師などの医療専門職は安定した収入を得られるのですが、収入は比較的固定され、時間が経っても急激に増えることはありません。森はこのようなニッチな人々の資産を守り、成長させるために必要な長期的プランニングを提供できるアドバイザーは自分だと考えたのです。
保険プランニングには医療と同レベルの専門的な厳しさをもって取り組んでいます。
—Li Yang
自らを 「マネー・スペシャリスト 」とブランディングしました。知人に紹介してくれるという顧客には自分を「保険募集人」と呼ばないでほしいと依頼しています。例えば、リタイアメント・プランや非課税貯蓄口座がファイナンシャル・プラン全体にどのように影響するかについて、会話の中で説明することができるマネー・スペシャリストであることにこだわったのです。このようなポジショニングは市場での差別化に役立ちましたが、保険会社の専属営業社員だったため提供できる商品が限られ、成長の可能性を妨げていました。そこでより幅広いソリューションを提供できる保険アドバイザーに転身しました。
「提供できる商品が限られているというフラストレーションから解放されました。今では市場のあらゆる商品の中から、お客さまに最適なものを選ぶことができます」と語ります。
この転身は極めて重要でした。業績は3倍に増え、コート・オブ・ザ・テーブルの資格を獲得しました。さらにテクノロジーを活用し、顧客を地元の医療関係者以外にも拡大しました。
森はセミナー販売に特化した会社に入社し、オンライン・コミュニケーションをマスターし、見込客向けにバーチャル・セミナーを開催するようになりました。これによってリモートで仕事をし、家庭生活との両立を図りながら、マーケットを全国に拡大することができました。やがて、彼の関心は医療関係者だけでなく、幼い子どもを持つ家族にも広がり、ビジネスはさらに強化されました。「この会社に入ったことで、さまざまな形でビジネスを拡大することができました。今後は同僚や若手社員を教育することで貢献し、私の感謝の気持ちを伝えたいと思います」と語りました。
Liと森はファイナンシャル・アドバイザーが前職の経験を活用して独自の価値提案を行い、顧客の信頼を醸成できることを示しました。構造化されたプロセス、ターゲットを絞ったニッチ・マーケティング、技術革新を駆使した彼らのサクセス・ストーリーは、集客に奮闘する金融プロフェッショナルにとって貴重なヒントを与えてくれます。