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2 23 2022

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重力の中心

影響力のある方、後援者との相互関係がネットワークを広げ、ビジネスの拡大につながります。

対象のトピックス

とても運が良いアドバイザーがいます。少なくとも外側からはそう見えますが、内側から見るとそれだけではありません。成功は運だけでは成し遂げられないことを成功者は自らの経験から学びました。ビジネスを維持するにはかなりの努力が必要です。豊かな未来を実現する土台を築くためには、幸運であると同時に強靱な筋肉を持たなくてはなりません。

しかし筋肉には厄介な点があります。使わないと衰えてしまうのです。新型コロナの期間中、最強だった筋肉が落ちてしまうアドバイザーが出てきました。

2021年に発表されたエール大学の研究によると、特に人脈作りのための筋肉が弱くなっていることが分かりました。パンデミックの間に平均的な人の仕事上および個人的なネットワークは16%も縮小しました。

理由は簡単です。アドバイザーはエレベーター、バーやビュッフェなどで見込客と出会う機会が減り、代わりに同僚ともクライアントとも2次元のオンライン会議の中でしか会えずリーチできる人が大幅に減ったからです。

当初は一時的なマイナス要素と考えられていた制限は、リモートワークの普及により次第に恒久的なものとして認識されつつあります。人脈を広げる方法は以前とは全く異なり、もう元に戻ることがないかもしれません。

それでも仕事上の人間関係を構築する能力は依然として重要である、とオーストラリアのシドニーを拠点とする19年間MDRT会員のGuy Munro Mankeyは述べます。人間関係の強さは紹介を通して明らかになると主張し「長期的に見ると成功するための最大のカギだと思います。この業界の新人は何より見込客探しに時間を費やす必要があります。それには費用がかかるしストレスもたまります。潜在的なクライアントを紹介してくれる知り合いがいれば、ストレスはかなり軽減されます」と語りました。

紹介者の中でも特に利益をもたらすのは、影響力の中心(centers of influence=COI)である会計士や弁護士の後援者です。士業の方々はその立場やビジネスによりターゲット・マーケットの見込客に大きな影響力を持っています。

「COIは顧客から高く評価されているので、彼らの紹介から得られるものは非常に大きいです。日頃から多くのクライアントと会っていて財務に関して絶大な信頼を得ています。彼らの言葉に従って保険営業の電話をかけると、話がとてもスムーズに進みます。COIから紹介されたクライアントは話を聞きたがっています」とMankeyは述べます。

だからといってCOIがいつも積極的に私たちの話を聞いてくれるわけではありません。カリフォルニア州の20年間MDRT会員David M. Ethell, LUTCFは「より良いクライアントを獲得し、クライアント・ベースを構築するための一番良い方法は顧客を担当している士業の方々と協力することです。門戸はしばしば閉ざされています。一般的にはあまり友好的ではないでしょう。私たちが提供するものはさまざまな問題の解決策になるのですが、必要ありませんと断られることがよくあります」と述べました。

幸いにも閉ざされたドアを開けることができます。必要なのは扉を開けるためのカギです。アドバイザーに必要な5つの戦略(カギ)をシェアします。

1) 知識をシェアする

一般的に人脈作りは相互関係によって実現します。皆さんがビジネスを紹介すれば相手もビジネスを紹介してくれるでしょう。しかし成功しているCOIは必ずしも紹介を必要としていません。一方これからビジネスを成長させる人は紹介できるクライアントが誰もいないかもしれません。そのため何か別のものを提供する必要があります。「成功者はすでに人脈を持っています。皆さんのネットワークを必要としていません。でもお客さまに提供できる価値を高めることを望んでいるので、そのための情報は重宝されます」とEthellは語りました。情報をお届けするために記事を書き、無料のウェビナーを開催しています。COIの同僚でリーダーシップに対して同じ考えを持つ弁護士や会計士などとコラボすることもよくあります。テーマは顧客サービスや従業員の囲い込みといったビジネス向けのものや、税制の変更といった業界特有のものなどです。

「今は情報が氾濫しています。私のメールには毎日新しい情報がたくさん入ってきます。いろいろな人が『あなたにはこれが必要だ』『それにはこう対処すればいい』と主張します。では誰を信用すればいいのでしょうか?私たちには信頼を獲得する機会があります」とEthellは述べました。

Bhupinder S. Anand, ACII, Dip PFSも同様のアプローチで士業の方々を教育しています。「ウェビナーのおかげで会計士や弁護士が関心を持つテーマでセミナーを主催することがとても簡単になりました。ソーシャル・メディアを使って該当する『COI』を集めトレーニングを実施することができます」と英国ロンドンの25年間MDRT会員は述べました。付加価値を高めるためにイベント終了後に修了証書を授与し、各業界の資格維持に必要な研修の対象に使っていただけるようにしています。

「最近ある弁護士をランチに誘い、私が行っている資産計画の戦略について説明しました。最後に『この会話から学ぶことがあったと感じましたか?継続的な教育のひとつになったのではないでしょうか?』と尋ね、彼女がそう思うと言ったので修了証書を郵送しました。彼女がそれを職場で見せてまわったので、今度は彼女の同僚全員がセミナーを開いて修了書を送ってほしいと言っています」とAnandは語りました。

記事やウェビナーで何を話せばいいのか分からなければ、MDRTのアニュアル・ミーティングがインスピレーションの源泉になります。私たちはすべてのアニュアル・ミーティングで共有できる事柄を何かしら学んでいます。

2) つながりを求める

Mankeyにとって人脈作りは数字が勝負です。「人脈作りで運をつかむにはどうしたらいいか?サンプル数を増やすことです。COIになりそうな人に会えば会うほど、よりラッキーになれます」と述べました。

できるだけ多くのCOIと会うため、Mankeyは新人だったころからお会いしたクライアントに会計士を紹介してほしいといつもお願いしていました。まずお客さまに「弊社の仕事に満足していらっしゃいますか?」と尋ねます。お客さまは皆「はい」と答えるので「そう言っていただいてうれしいです。お客さまの会計士に私たちがしてきたことを理解してもらいたいと思います。紹介していただけないでしょうか?」と依頼します。

次に紹介をできるだけ簡単にするため、会計士と連絡をとるためのメールのひな形をクライアントに送ります。クライアントがメールを送ったら、会計士から電話がかかってくるのを数日間待ちます。かかってこない場合はこちらから電話をしてコーヒーを飲みながら15分ほど会えないか、共通のお客さまの保険について説明するので税金控除の扱いについて確認したいとお誘いします。また質問があれば自分に連絡してほしいと伝えます。

クライアントが利用している他業種の専門家を紹介してもらう主な目的は人脈作りだけではありません。むしろ共通のお客さまに貢献するためです。人脈作りは副次的なものにすぎないと、同じ手法でCOIのネットワークを育ててきたメリーランド州のKathleen R. Benjamin, CFP, CPAは言います。

「私はフットボールのファンです。試合でクオータバックはオフェンシブ・コーディネーターが指示するのをきちんと聞いています。私はファイナンシャル・アドバイザーとしてそのような役割を担いたいと思います。お客さまと仕事をする他の専門家の意見を聞いて、自分のアドバイスが調整の行き届いた包括的なものになるようにしています」とMDRT歴18年のBenjaminは述べました。

Benjaminは税金対策や受取人管理などクライアントに焦点を当てた活動を行うために、公認会計士や資産計画弁護士に連絡することを許可するリリースレターにサインをしていただいています。そしてこれら専門家と打ち合わせをし、共通するクライアントのために戦略を練ります。そうすることで自分の専門性を実証する機会が生まれ、士業の方々が彼女の仕事ぶりを見て後に他のクライアントを紹介するようになりました。

「多くのアドバイザーは専門家同士が連係するための特別な努力をしません。しかしこれを行えばクライアントとの関係に付加価値が生まれ、お客さまも士業の方々も私たちを友人や家族に紹介しやすくなります」とBenjaminは語りました。

3) 不安の解消

COIの多くはクライアントを紹介することに懐疑的です。Anandは壁を取り除くために不安な気持ちに率直に注意を向けさせることを勧めました。

Anandは「過去にファイナンシャル・アドバイザーと仕事をしていかがでしたか?」という興味深い問いかけをします。答えを注意深く聞いてください。人は往々にしてうまく行かなかったことについて話してくれます。COIが本当に言いたいのは「同じ間違いは絶対にしない」ということです。

例えば大多数のCOIは自分の評判を気にします。クライアントとの関係に影響が出るかもしれないというリスクを負っていることを私たちは認識しておく必要があります。問題が生じてクライアントが離れてしまう可能性もあるからです。Anandは自分がいただいたお客さまの声や信頼できる専門家であるとメディアが報じた記事を示すことで、このような不安を解消しています。第三者からのお墨付きは自ら吹聴するよりはるかに効果的だと言います。

またCOIはサービスの質を心配することがよくあります。そこでAnandはクライアントのために作成した報告書や文書、マーケティング資料などのコピーを見せ、自分の仕事ぶりに好感触を持っていただけるようにしています。さらにチームの規模を明確に示し、お客さまにいつでもサービスを提供する体制が整っていることを強調します。

「自分をアピールするだけでは足りません。バックオフィス全体についても取り上げる必要があります」とAnandは述べました。

もう一つの懸念は権利の侵害です。協力し合うことでクライアントへの影響力が減少することはない、むしろ関係が良くなるということを強調しなければならないとAnandは言います。COIに「あなたは話し合いの輪の中に常に入っています。締め出すことは決してありません。私がお客さまに話すことをいつでも正確に知ることができますし、お客さまの許可が得られればすべてのメールをccで共有します」とはっきり伝える必要があります。

4) クライアントからCOIを創出する

紹介元になり得る専門家を皆さんの後援者に変える最も効果的な方法は、まずクライアントになっていただくことであるとMankeyは言います。新しいクライアントを求めてマーケティングや見込客探しをするときは、将来のCOIがいるかもしれない地元の公認会計士協会や法科大学などの専門家集団をターゲットにするのが有効です。

「私にはクライアントではないCOIはいません。なぜなら私がいかに優れているか一生懸命COIに話しても、実際の仕事ぶりを目にしないと信じてもらえないからです。私の仕事ぶりを見ていただければその方のクライアントに必要なサービスを提供する能力があることを実感できるはずです」とMankeyは述べました。

お客さまに会計士や弁護士があまりいなくても心配することはありません。定期的に気持ちよく熱心に紹介してくださる方は誰でもCOIであると、メキシコSeguros Monterrey New York Lifeの財務・保険アドバイザーでMDRT会員歴3年のPatricia Vaca Pedrozaは言います。

「私はとても身近な人を通して最初の後援者を得ました。それは私の親族です。考えてみれば私の仕事とその価値をよく知り、私を信頼している親族こそ最初のCOIだと思います」とVacaは語ります。

Vacaが特に記憶に残るCOIは妊娠保険をお預かりした子どもを希望する女性でした。後にその方は双子を早産で出産したので、双子の妊娠と早産というダブルの保障が適用されました。

「影響力のある重要な人物がこの女性を紹介してくださり、やがてこの女性も後援者になりました。保険に助けられる経験をした結果、私を知人に紹介し始めました」

お客さまは何かしらニッチなコミュニティに属しており、その可能性を認識すれば継続的なビジネスの源泉になり得ます。例えばVacaのCOIの中には次から次へとエンジニアを紹介する方、医療従事者を紹介する方、銀行員を紹介する方がいます。

17年来のMDRT会員であるシンガポールのLaura Xue -Fen Hoi, ChFC, AEPPも公認会計士や弁護士ではない少し変わったCOIを開拓しています。クライアントの多くは専門資格を持ち今後家族が増えると思われる若い方々です。このようなグループの中では全員がCOIの可能性を持っているわけではありません。そこで可能性のある人を識別するためにHoiはお客さまをA、B、CそしてVVIPというカテゴリーに分けました。Cのクライアントは仕事だけの関係で結び付きが強くありません。Bは将来性のある平均的なクライアントです。Aはとても熱心で多くのビジネスをもたらします。そしてVVIPは上位20名のお客さまです。VVIPとAクライアントはHOIの顧客リストの30%に過ぎませんがビジネスの70%を占めています。「この方たちは一般的に保険料が高額であるだけでなく、たくさんの人を紹介する可能性があります。常に多くの商品に加入してくださるわけではありませんが、私にとっては影響力の中心(COI)にいる方々です」とHoiは言います。優良顧客を特定して多くの時間とエネルギーを投資することで、より多くの紹介を見いだしています。

またクライアントを分類することは理想的な顧客像を特定し、ビジネスの目的に合ったCOIを育てる助けになります。VVIPとAクライアントの中には数人の医師と歯科医がいました。そこでHoiは面談を設定し、その方々にお仲間の医師や歯科医を紹介していただきたいと率直にお願いしました。その結果「限られた時間の中で、私が会いたいと思う人に集中することができました」とHoiは語りました。

5) 人間関係を重視する

EthellはCOIを味方にしたいなら紹介ではなく人間関係を追求するようアドバイスします。「私たちが差し出せる最善のものは友情です」と、かつてのメンターから受けたアドバイスを思い起こしながら語ります。そのメンターは「私はビジネスをする前に、相手の人柄を見るようにしています。相手がどれだけ知っているかは二の次です。むしろ相手がどれだけ誠実であるかに注目しています」と述べました。

Mankeyはそれを農業に例えます。「どんなビジネスにも鉱業従事者と農業従事者の2種類の人間がいます。鉱業従事者は欲しいものを求めて未開の地に入り引っかきまわす人々、農業従事者は育てる人々です。彼らは土地を十分に整え肥やしてから種をまきます。短期的には何も得られないことを知っていますが未来のために働きます」

芽が出るまで何年もかかることがあります。しかし水と肥料を与え続けていれば、いずれ成長します。

Hoiも種を育てるためにクライアントとCOIに関する詳細を個人的なデータベースに保存しています。配偶者やお子さんの名前、誕生日や趣味などあらゆる情報が入っていて、それに基づき結婚記念日のカードやお子さんの卒業祝いを贈ったりコーヒーを飲みながらご家族について語り合ったりします。このようにして自分が親しみやすく他の人に紹介したくなるパートナーであることを印象づけています。

Hoiは情報を集めるだけではありません。最高の人間関係は双方通行なので情報をシェアすることも怠りません。「人間的な実際の私を見てもらう方法の1つがソーシャル・メディアです」と述べるように、家族の近況を定期的に投稿しています。お客さまは普段見せることがない彼女の姿に共感を覚えます。仕事一辺倒ではないことが伝わり親近感がわきます。

与えれば返ってくるのがCOIの持つ素晴らしさです。

しかし与える行為は熟考した上で適切な人に対して行うべきです。Mankeyはファイナンシャル・サービスで運のように見えるものが、実際には骨の折れる仕事であることが多いと指摘します。運とは「一見自分自身の行動ではなく偶然によって起きた成功や失敗」と定義されています。ここで注意したいのが「一見」と書かれていることで、すべての運が偶然であるわけではありません。多くの運は管理することができるのです。

CONTACT

Bhupinder Anand bhupinder@anandassociates.com
Kathleen Benjamin kbenjamin1017@gmail.com
David Ethell david@deifs.com
Laura Hoi laurahoi.office@gmail.com
Guy Mankey guym@paxfin.com.au
Patricia Vaca patyvacap@gmail.com.