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パワフルなリスニングの秘訣
パワフルなリスニングの秘訣

11 01 2022 / Round the Table Magazine

パワフルなリスニングの秘訣

聞いているけれど本当に耳を傾けていますか?

対象のトピックス

リスニングの能力が高いと評価される組織はやる気があり、顧客ロイヤルティーやスタッフの定着率が高く、全従業員に十分な生産力があり、良い評判を得ています。一方リスニング能力が低いとされる組織はよく批判され、対処しなければならない問題を多く抱えています。よく聴くことは個人の成功と組織の成功の両方に影響を与えます。

私はリスニングを音から意味を見いだすことだと定義しています。これは聞こえることとは異なる精神的なプロセスです。まず聞こえるものの一部分を選択し、それを解釈して意味を持たせるのです。聴くことは指紋や声紋、虹彩と同じくらい唯一無二です。なぜなら人は人生の中で蓄積した一式のフィルターを通して聴いているからです。私達は他の誰とも異なります。1つの文化の中で生まれ、自分の聴き方に影響を与える言語を習得し、価値観・態度・信念を両親・友人・お手本になる人・教師などから受け継ぎ、好きなものを受け入れてそれ以外は無視するようになります。信念の中には他の人が自分のことをどのように受け止め、他の人が何を思い、世の中が一般的にどのように機能するのかといった思い込みが含まれます。最終的に私達は会話の中に期待や意図、さらには感情を入り込ませている可能性があります。

つまり各人の聴き方は独自のものであり、時間とともに変化します。例えばひどい知らせを聞いたばかりの人と、素晴らしい知らせを聞いてウキウキしている人とでは耳の傾け方が大きく異なるでしょう。皆さんのフィルターはそれぞれが固有に持つ世界に対する受け止めを形成しており、聴くことは皆さんにとっての現実を創り出しています。意図的に聴くことで、人生経験を豊かなものにすることができます。

次にリスニングを改善するエクササイズをいくつかご紹介します。

RASA

RASAは会話をするときに覚えておくと有益な頭文字です。

  • Receive 受け止める-全面的に注意を払い、話し手に視線を向け、気をそらさない。
  • Appreciate 正しく評価する-相づちやジェスチャーで注意を払っていることを示す。
  • Summarize 要約する-「つまりこういうことです。次にあの件に移りましょう」「つまりこういうことですね。これで間違いありませんか?」営業の会話では非常に重要な要素で、長い廊下を通ってドアを閉め自信を持って次に進むことができます。
  • Ask questions 質問をする-自由回答形式(Yes/Noで答えられない) の質問はつながりを生み出すのに非常に効果的です。

味わう

食べ物のように音を味わってください。ありふれた音にさえ非常に興味深いものがあるので、新しい発見があるかもしれません。日常的なやかんや乾燥機の音を含む多くの音には、生命力や動きがあります。それと同時に、自分では気付かなくても害になる音というものがあります。味わう練習をすれば自分がどのような音を聞くべきか意識的に判断できるようになり、それは健康にとっても素晴らしいことです。風や水、鳥のさえずりなど自然に近い音は体にとても良いという研究結果があります。それは老化防止、抗ストレス、抗病性があり、仕事をしているときに雑音を軽減するマスキング音としても効果的です。健康的なサウンドを求めるなら、大自然に囲まれることが一番です。

静寂

毎日数分でも静かな時間を持ち、耳を休ませましょう。世の中は騒々しいので私達は周りで起きていることに無感覚になりがちです。寝室やドアを閉めたオフィスなど音がしない環境、あるいは少なくともひっそりとした環境でリセットしてください。数分間静かに座れる場所を確保し、あらためて耳を傾けてみてください。

聴く姿勢

これはさまざまな聴き方やスタイルのメタファーです。例えば積極的なリスニングは振り返ることから始まります。「あなたのお話によると……」と相手が言ったことをそのまま繰り返します。次の段階は受け止めで「なぜそのようにお考えになるのか/おっしゃるのか分かります」と相手の視点を支持します。最後の段階は統合で、両者にとって有益な解決策を話し合います。

積極的に耳を傾けると相手は自分のことを聞いてくれる、理解してくれると感じるのでカウンセリングや交渉、あるいは手に負えない子どもに対してさえ非常に役に立ちます。10代のお子さんに「オマエなんか死ねばいい!」と言われたら、次のように答えてください。「私が死ねばいいって思うのね。あなたがとても怒っているのが分かる。もっと詳しく教えて」きっとお子さんは「ごめんなさい。そんなつもりじゃなかった」と言うでしょう。反射的に「よくも言ったな、自分の部屋で反省しなさい!」と答えていたら結果は全く違うものになったでしょう。

クリティカル・リスニング(訳注:批判的思考で大事な情報を取捨選択していく聞き方)は評価や判断を絶えず行い、価値を追求して見当違いな事柄を取り除いていく手法であるため教育やビジネスにおいて非常に役に立ちます。しかし家庭に持ち込むのに適した姿勢ではありません。家族に対しては共感的なリスニングに切り替え、相手の立場になって考え思いやりを持って相手の気持ちを本当に理解する方が良いかもしれません

Julian Treasureは音とコミュニケーションの専門家であり、ビジネスの有効性を教えるコーチです。著書にHow to be HeardとSound Businessがあります。連絡先はjt@juliantreasure.com

2019年アニュアル・ミーティングでのTreasureのプレゼンテーションはmdrt.orgでご覧になれます。