鈴江高年(Takatoshi Suzue)は新卒で大手ハウスメーカーに入社し、持ち前の社交性で購入者を安心させ、住宅販売で成功を収めました。10年間の営業職の後、昇進して人事部に異動となり同社が新しい手法を取り入れていく中で、鈴江はマイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター(MBTI)の認定ユーザー資格を取得しました。MBTIは質問に答えた個人を16の性格タイプに分類する認定ユーザーのみが行える心理検査です。
このトレーニングのおかげで、彼はその部署での業績を加速させ、ビジネスの中枢である本社に栄転しました。彼のキャリアは順調でしたが、人生の大きな転機が訪れます。第一子の太基くんが脳性まひを持って生まれたのです。鈴江は家族のサポートを得るため妻の実家近くに移住し、金融サービス業への転身を決意しました。
昔ながらの代理店を離れる
鈴江は義父が勤めていた保険代理店に入社しました。しかし、そこは以前勤めていた近代的でプロセス重視の組織とは違い、とても居心地が悪かったといいます。
「ファイナンシャル・アドバイザーとして、代理店内のコンプライアンス意識の低さを強く感じました。例えば自動車保険を更新する際、補償内容が昨年と同じであってもアドバイザーには補償内容を見直す責任がありますが、そうした基本的な部分が見落とされていました。代理店の経営者との関係もうまくいきませんでした」と振り返ります。
また、金融サービスのプロは慣習に頼らないことで差別化を図るべきだと考えていました。日本では多くの保険代理店が顧客との関係を維持するために季節のギフトを贈ります。しかし、鈴江には「贈り物では信頼は得られない。顧客に媚びるのではなく、顧客にとって最高のプランニングと商品を提供することこそ重要」という信念がありました。
私が今日ここにいるのは息子のおかげです。息子が私をファイナンシャル・アドバイザーの道へ導いてくれたのです。
個性のある人たちと繋がる
代理店を辞めて独立した鈴江はMBTIのノウハウを生かして顧客との関係を築き、より効果的なコミュニケーションを図ることでビジネスを成長させてきました。
「相手を分析して接し方を調整することで関係を深められます」と3年間MDRT会員の鈴江は語ります。「枠組みが明確な方が良い判断ができるタイプの顧客には選択肢を絞り、面談が90分間であることとアジェンダを事前にお伝えします。そうすることでよりリラックスした環境を作り出し、私に悩みを相談するよう促します。一方、枠にはまることを嫌うタイプの顧客には、オープンかつフレキシブルに対応するため議題の詳細は伏せて日時だけを伝えることにしています」
他のアドバイザーと繋がる
独立後10年で鈴江はビジネスを確立し、現在では8人の従業員を抱えるまでになりました。彼のMBTIの資格は他のファイナンシャル・アドバイザーとのネットワーク拡大にも役立っています。保険会社が主催するセミナーでアドバイザーがどのように性格タイプを理解してビジネスに役立てるかについて講演したほか、最近では全国の代理店との繋がりを深めるために「保険代理店100人カイギ 」を主催しました。
鈴江はまた、MDRTのリソースを活用して会員とのネットワークを広げ、若手アドバイザーの再入会を支援しています。
「所属分会で企画される勉強会や研修会の機会を通じ、全国の優秀な人材と意見交換できる場が増えました。新人が継続してMDRT入会基準を達成できるよう、メンター制度も整っています。そのような仕組みを通じ、ネットワーク拡充やスキルアップが実現できました」
現在、彼の息子は大学生になりました。太基さんは成人式の記事に取り上げられ、鈴江はその記事を声に出して読みました。車いすに乗った青年が「父のようなファイナンシャル・アドバイザーになりたい」と言った箇所も含めて。
「私が今日ここにいるのは息子のおかげです。息子が私をファイナンシャル・アドバイザーの道へ導いてくれました。息子とお客さまに感謝しています。私はこれからもこの仕事を続け、情熱を持って業界に貢献していきます」と鈴江は誇らしげに語りました。